【シノビガミ】綻び再び【シナリオ】

本作は、「著:河嶋陶一朗/冒険企画局」が権利を有する『忍術バトルRPG シノビガミ』の二次創作作品です。

シナリオスペック
レギュレーション:退魔編
タイプ:特殊型
リミット:4〜9
プレイヤー人数:2人
階級:上忍以上推奨


概要

 時は21世紀。予想よりもずっと早く宇宙は寿命を迎えようとしていた。妖魔の仕業であれば忍者が対抗することもできたであろう。だが物理法則(シノビの力も包括したより一般的な物理法則)に対して、その宇宙の住人に為す術はなかった……。

背景

 デミウルゴスの一種である上級妖魔が神として崇拝されるべく太陽系を偽りの宇宙で取り囲んだ。偽りの宇宙は不完全でありデミウルゴスの意に反して崩壊を始めた。この偽りの宇宙が第三幕の舞台である。シナリオ内ではこの宇宙を便宜的に「神の宇宙」と記載する。

 地球の人々は宇宙終焉の始まりを観測して大パニック。せめてもの人類延命措置として、斜歯忍軍(ハード担当)と比良坂機関(ソフトもとい精神担当)が中心となって集合的無意識を利用した仮想空間を作り上げ、そこを精神の安住の地とした。シミュレーション速度を極限まで加速すれば、仮想空間の寿命は実質的に永遠となり、現実世界の崩壊の影響を受けないのだ。この仮想空間が第二幕の舞台であり、仮想空間の管理者たちがデミウルゴスである。シナリオ内ではこの仮想空間を便宜的に「仮想空間(外殻)」と記載する。

 巨大仮想空間は多数の知的存在の意識がベースとなっている都合上、大域的には常に矛盾を孕んでいた。そこで類まれなる想像力を持つPC1を人柱として一貫性のある世界観で仮想空間の定義を強制的に上書きした。しかし、PC1が定義した空間も安定しているとは言えなかった。常に多数の知的生命体の無意識から攻撃を受けていたからである。この攻撃は世界の裂け目として現出した。PC1が定義した空間が第一幕の舞台であり、PC1がデミウルゴスである。シナリオ内ではこの仮想空間を便宜的に「仮想空間(内殻)」と記載する。

 PC2はPC1を救い出すべく、警備の目を掻い潜って(あるいは強行突破して)仮想空間(外殻)におけるPC1の居場所まで到達したが、助け出す寸前にオペレーションRNN(Redefinition by Ninja Neuron)が実行されてしまった。そして、全てがPC1の定義した仮想空間(内殻)に取り込まれ、導入フェイズの「定常業務」へと繋がる。

 導入フェイズの「事件発生」は上述のあらましを意味深長なセリフのみで表現したものである。

導入フェイズ

事件発生

 GMは「海外ドラマの前回までのあらすじのフラッシュバックめいた忙しない感じ」を意識して以下の文章を読み上げること。シナリオの重大なヒントが含まれるため、プレイヤーにはテキストをみせないようにすること。テキストセッションの場合はチャットログを流すなどの措置を取ると良いかもしれない(筆者はボイスセッションだったので未試行)。

「異常な重力波を検出!」「バカな! 理論よりも崩壊が早すぎる!」「もう世界は終わりだ!」「全ての精神を統合せよ。比良坂の手を借りるのだ」「極限まで演算速度を上げろ!」「ここを安住の地とする」

♫場面転換の効果音

「世界各地で異常現象が!」「なんてこった! 新築一戸建ての庭がアマゾンになってるぞ!」「おい見てみろ! ウニだかワニだかわからん! お互い自分の存在を主張して激しく入れ替わり続けているんだ」「多数の意思により各所で矛盾が生じているということだ」「強靭な人柱による再定義が必要だ。柱の確保を急げ」

♫場面転換の効果音

「最終セキュリティを突破されました! 忍者です!」「柱に近づけるな!」「だめです! 増援が間に合いません!」「やむを得ん、オペレーションRNNを強制実行せよ!」

♫場面転換の大袈裟な効果音

定常業務

 PC1とPC2が登場するシーンである。二人は「修繕士」であり、バディとなって数ヶ月経つ。修繕士とは世界中で発生する時空間異常「次元の綻び」を正常化する任務を負った特殊な忍者なのである。PC二人は普段は神奈川県を担当している。
 二人は神奈川県の北東部に多数の次元の綻びが生じているとの通報を受け、町田市までやってきた。ここで、PC1とPC2に自己紹介と【使命】の公開を行ってもらう。
 GMは次の特別ルールを説明する。また、ハンドアウト「数多の声」「エニグマ:次元の綻びA」「エニグマ:次元の綻びB」を公開する。一通りの説明が終わったらメインフェイズを開始する。

特別ルール
 戦闘シーンではプロット1〜3が「思考速度」となる。即ち、プロット1と2のコストとファンブル値が3となる。他のプロットは通常通り。

GMへ補足
 一番遅い速度が「思考速度」となるのは、第一幕(及び第二幕)の舞台が仮想空間であることの伏線である。仮想空間であることが明らかになるのは第二幕であるため、ここでは特別ルールの背景を説明してはならない。

マスターシーン(第一幕)

決闘

このマスターシーンは2サイクル目終了後に開始する。

 PC2がPC1に戦闘を仕掛ける。数多の声のデザインが決まっている場合、デザインが最も近いと思われる中級妖魔をGMが選定して登場させる。数多の声は全キャラクターに敵対し、攻撃対象をランダムに選ぶ。
 この戦闘のルールはクライマックスフェイズの戦闘に準ずる。プロット1と2のコストとファンブル値が3となる。他のプロットは通常通り。
 この戦闘は4ラウンドで終了する。残りの生命力が多いPCの勝利となる。

PC1の勝利
 PC2は自分が持っている【秘密】(自分自身の【秘密】を含む)をPC1に渡しながら自身の思いなどを伝えることができる。それを受けて、PCは「この世界を存続させる」と「この世界を終了する」のどちらか一方を選べる。
 「この世界を存続させる」を選んだ場合は、数多の声が次元の綻びの中に戻っていき、全ての綻びが修繕されていく。全て解決したかと思った次の瞬間、PC1は激烈な頭痛に襲われ、次元の綻びが世界全体に発生し、世界は急速に崩壊していく。
 「この世界を終了させる」を選んだ場合は、PC1を基点に次元の綻びが生じて世界が急速に崩壊していく。

PC2の勝利
PC1を基点に次元の綻びが広がり世界が急速に崩壊していく。

数多の声の生命力が0になった場合
 通常は想定されていないが、PC1とPC2が互いに敵対しないパーソナリティだった場合に発生しうるルート。数多の声を起点に次元の綻びが拡大し、世界が急速に崩壊していく。この場合、PC1とPC2の両者を勝者とする。

マスターシーン(第二幕)

研究施設

このマスターシーンはマスターシーン「決闘」の終了後に開始する。

 PCたちは気が付くと多数の機械が設置された部屋にいる。PC1は全身を拘束されており、無数のケーブルが伸びる物々しいヘルメットが被せられている。PC1が忍者の筋力を持ってすれば簡単に拘束を脱することができるだろう。室内は激しく赤く点滅し、けたたましいアラームが鳴り響く。無機質なアナウンス音声はシステムエラーとセキュリティ警告を告げている。ここに長居するのは得策ではなさそうだ。

 全てのPCと従者は生命力が3点回復し、変調が全て回復し、忍具の消費がリセットされる。肉体的な消耗は殆どなく、ニューロンのみが疲労しているのだ。PC1は、マスターシーン「決闘」において「世界を存続させる」を選択していた場合、前述の回復の処理が終わった後に、頭痛の後遺症として「麻痺(1個)」と「催眠」の変調を受ける。

 GMは次の特別ルールを説明する。また、PCに第二幕用のハンドアウトを配布し、ハンドアウト「施設」「研究員たち」「エニグマ:機動部隊」を公開する。また、PC2にだけ「違和感」のハンドアウトを配布する。一通りの説明が終わったらメインフェイズを開始する。

特別ルール(第二幕)
・戦闘シーンではプロット1〜3が「思考速度」となる。即ち、プロット1と2のコストとファンブル値が3となる。他のプロットは通常通り。
・【感情】と【情報】の獲得状況は第一幕から引き継ぐ。
・未解除のエニグマは第一幕から引き継ぐ。
・プライズは第一幕から引き継ぐ。

GMへ補足
・一番遅い速度が「思考速度」である理由はまだプレイヤーに伝えない。PCが「違和感」の【秘密】を入手するか、マスターシーン「管理者たち」が開始したら理由を伝えて良い。
・仮想空間(内殻)を脱出したにも関わらずエニグマが引き継がれているのは、エニグマの発生原因が仮想空間(外殻)の崩壊によるものだからである。仮想空間(外殻)は多数の意識による相互矛盾で崩壊し始めており、その崩壊を仮想空間(内殻)が無理やり食い止めていたのである。この背景事実はマスターシーン「管理者たち」に登場する斜歯忍軍の忍者の口から説明すると良いだろう。

管理者たち

 このマスターシーンは以下のいずれかの条件を満たすと開始する。

開始条件
・PCが「この世界が未だに仮想空間であること」と「仮想空間が多数の意識の集合から構成されていること」に言及した後にサイクルが終了する。
・PCが「施設」「研究員たち」「違和感」の全ての【秘密】を入手した状態でサイクルが終了する。
・5サイクル目が終了する。

 PCが世界の正体を理解した。そこへ3名の研究者が現れる。研究者たちは自分達が世界の管理者であると説明する。

研究者のセリフ(長いので一度に読み切らず、PCとコミュニケーションしながら説明する)

 気づいてしまわれましたか。この世界は所謂仮想空間です。それも知的存在の集合的無意識を演算資源として利用した特別なものです。地球丸ごとシミュレーションできる計算資源を確保するにはこうするしかなったのです。しかし問題がありました。本来特定の形を持たない集合的無意識に無理やり形を与えることになる訳ですから、各所で致命的な矛盾が生じたのです。この矛盾はやがて仮想空間の存続すら脅かすものとなっていきました。今だって崩壊し続けているのです。そこの水槽のウニがワニになったり戻ったりしているでしょう。

 そこで、PC1、あなたの力を借りることにしたのです。あなたの類稀なる強靭なニューロンを利用し、あなたの豊かな想像力を以て一貫性のある世界観で仮想空間を再定義したのです。修繕士……なかなか良い設定でしたが、PC2の介入でお釈迦になってしまいました。

 我々は人類の存続のためにこの世界を維持しなければならない。あなたたちは、この世界も破壊するのですか。それともまた安定装置に戻って、世界の安定化に協力してくださるのでしょうか。いえ、答えなくて結構。いずれにせよ強硬手段を取るつもりでしたからね!

 狂的科学者×2、巫女×1、戦闘員×(経過サイクル数-3)との戦闘を開始する。なお、狂的科学者×2、巫女×1のうち1体を対応する流派のGMの手持ち中忍PCまたは中忍頭PCに差し替えても良い。この戦闘のルールはクライマックスフェイズの戦闘に準ずる。プロット1と2のコストとファンブル値が3となる。他のプロットは通常通り。
 この戦闘は4ラウンドで終了する。残りの生命力が最も多いキャラクターが所属する陣営の勝利となる。なお、PC陣営対NPC陣営を想定している。

PC陣営の勝利
 世界が構造的矛盾に耐えきれなくなり形を失い崩壊していく。人々の絶望の声がPCたちの脳に直接響く。

NPC陣営の勝利
 管理者たちはPC1を急いで次元安定化装置まで連行し、無数のケーブルが伸びた物々しいヘルメットを被せる。管理者のリーダー格の指示によりオペレーターたちが装置を起動する。たちまちPC1を中心として世界が正常化していく。しかし正常性の拡大は途中で止まり、逆に異常性に飲み込まれていく。後一歩遅かったのだ。世界が構造的矛盾に耐えきれなくなり形を失い崩壊していく。人々の絶望の声がPCたちの脳に直接響く。

マスターシーン(第三幕)

大破局

 このマスターシーンはマスターシーン「管理者たち」の終了後に開始する。

 気付くとそこは神奈川県の町田市であった。あなた達は何らかの用事で町田市に来ていたのだ。あなた達は頭部の違和感に気づくだろう。自分の頭部にケーブルが無造作に突き刺さっているのである。ケーブルはあちこちの行政機関や八咫重工の施設やトラックから伸びて来ている。あなたたたち以外の多数の人間の頭部にもケーブルが刺さっており、昏睡状態である。

 空は闇に包まれ有害な電磁波を撒き散らし、大地は裂け全てを劣化させ飲み込んでいく。海は常温にも関わらず超流動状態となって陸の構造物を這い上がっていく。頭部に電極が刺さっていない人間達は空を向き得体の知れない神への祈りを捧げている。

 全てのPCと従者は生命力が1d3+3点回復し、変調が全て回復し、忍具の消費がリセットされる。肉体的な消耗は殆どなく、ニューロンのみが疲労しているのだ。マスターシーン「管理者たち」においてNPC陣営が勝利していた場合、前述の回復の処理が終わった後に、PC1は管理者たちの悪あがきの後遺症として「麻痺(1個)」と「催眠」の変調を受ける。

 GMは次の特別ルールを説明する。また、PCに第三幕用のハンドアウトを配布し、ハンドアウト「新興宗教」「エニグマ:世界の終焉」「エニグマ:暴徒」を公開する。一通りの説明が終わったらメインフェイズを開始する。

特別ルール(第三幕)
・【感情】と【情報】の獲得状況は第一幕から引き継ぐ。
・第一幕と第二幕に登場したエニグマは全て消滅する。
・プライズは第二幕から引き継ぐ。

GMへ補足
・第三幕の舞台は偽りの宇宙といえども物質的な世界なので、プロットに関する特別ルールはもはや存在しない。
・第二幕までに登場したエニグマは集合的無意識そのものなので、仮想空間(外殻)を脱出した今では脅威にならない。
・PCたちが十分に強い場合は、「戦場は極地となる」という特別ルールを追加しても良い。

顕現

 このマスターシーンは以下のいずれかの条件を満たすと開始する。

開始条件
・PCが「この世界も偽りの世界であること」と「偽りの世界が人為的に作られている(黒幕が存在する)こと」に言及した後にサイクルが終了する。
・PCが「神」の【秘密】を入手した状態でサイクルが終了する。

 暗黒の空が裂け、光を纏ったアブストラクトな人型実体が姿を表す。以降、好きなタイミングでクライマックスフェイズに移行できる。

クライマックスフェイズ

 クライマックスフェイズは以下のいずれかの条件を満たすと開始する。

開始条件
・マスターシーン「顕現」が終了したあと、PCがクライマックスフェイズ開始を宣言する。
・9サイクル目が終了する。

 暗黒の空の裂け目から光を纏ったアブストラクトな人型実体がPCたちを見下ろす。人型実体はPCたちの精神に直接語りかける。

人型実体「我は神。より良い宇宙の創造主。崇拝されるべき存在。だが宇宙は崩壊し、人々は精神の檻に逃避する。何故だ」

 偽神×1との戦闘を開始する。偽神は宇宙の維持にリソースを割いているため、基本ルールブック通りのスペックを発揮できていない。クライマックスフェイズ開始時点の経過サイクル数に応じて以下のように能力が変わる。

◆偽神の能力の変化
4〜5サイクル経過:忍具なし、妖魔武器「毛針」なし、【範囲攻撃】は1つだけ、【完全成功】なし
6サイクル経過:妖魔武器「毛針」なし、【範囲攻撃】は1つだけ、【完全成功】なし
7サイクル経過:妖魔武器「毛針」なし、【範囲攻撃】は1つだけ
8サイクル経過:妖魔武器「毛針」なし
9サイクル経過:基本ルールブック通り

エピローグ

 偽神の生命力が0になると無念の雄叫びをPCたちの脳内に響かせながら光を放って消滅する。次の瞬間、PCたちは全てが元通りになった町田市に立っていることに気付く。空は晴れ渡り、大地は構造物を支え、水は常識的な挙動をする。町田市も無事に東京都に戻った。
 PCたちに自由にエンディングを演出してもらい、セッションは終了となる。

功績点

 使命の達成の功績点は下記に従う。

マスターシーン「決闘」の戦闘で勝利した:1点
マスターシーン「管理者たち」の戦闘で勝利した:1点
クライマックスフェイズの戦闘で勝利した:3点

ハンドアウト(第一幕)

PC1

PC1【使命】
 あなたはベテランの修繕士である。現在この世界は中級妖魔「数多の声」による執拗な攻撃を受けており、世界各地に次元の綻びが生じている。修繕士であるあなたは次元の綻びを修繕することが【使命】である。

PC1【秘密】
 中級妖魔の名前は「次元通り魔」にしたはずだったが、いつの間にか名前が変わったのだろうか。「中級妖魔」はどのような姿だったろうか。まだだったか? どう対処するのか考えておく必要がある。

PC1【秘密②】
 セッション開始時点でPC1はこの【秘密】の存在を知らない。PC1以外のキャラクターがPC1の【秘密】を獲得すると、PC1の【秘密②】も同時に獲得する。
 実はPC1は世界の安定化のために人柱となっている。本当のPC1は機械に繋がれニューロンを酷使させられ続けている。この世界の存続に必要なのだ。この【秘密】をPC2が獲得すると、PC2はPC2の【秘密②】を獲得する。

PC2

PC2【使命】
 あなたは新人の修繕士である。現在この世界はあちこちに異常が存在している。この異常は次元の綻びと呼ばれている。修繕士であるあなたは次元の綻びを修繕することが【使命】である。

PC2【秘密】
 次元の綻びの原因はPC1である。何故そう考えたのかわからない。あなたは2サイクル目の終了時にPC1に戦闘を仕掛けて仕留める予定である。それまでに情報収集をしておく必要があるだろう。あなたの【本当の使命】はPC1を救うことである。

PC2【秘密②】
 セッション開始時点でPC2はこの【秘密】の存在を知らない。
 現在の世界は偽りであるし最善でもないが、現実よりもずっと良い方だ。現実は今にも崩壊しようとしているのだから。だが、あなたはそれを良しとはしなかった。あなたは世界の存続よりも親友であるPC1を選んだのだ。あなたは極わずかな覚醒時間を利用してPC1の元までたどり着き、この世界におけるPC1の居所を掴んだのだ。あなたは2サイクル目終了後の戦闘でPC1に勝利することでPC1を救うことができる。

数多の声

数多の声【使命】
 人類の見立てでは、この妖魔の【使命】は世界に終焉をもたらすことである。この妖魔の攻撃で生じた「次元の綻び」は、実際に空間に穴が空いていることもあれば、周囲と異なる環境が生じていることもある。

数多の声【秘密】
 姿はまだ決まっていない。抽象的な存在であるが故にデザインに難儀したのであろう。偽りの世界に対する復元力であるが、この妖魔もまた真ではない。

数多の声【秘密(PC1用)】
 デザインに難儀したデザイナーはPC1だ。PC1がデザインを決めれば2サイクル目の終了時にこの妖魔の実体が出現し、決めなければ出現しない。当初の名前は「次元通り魔」だったが、より実態に近い名前になるよう復元力が働き「数多の声」に落ち着いた。

エニグマ:次元の綻びA

エニグマ:次元の綻びA【偽装】
 不規則な形で抉り取られた空間。

エニグマ:次元の綻びA【戦力】
 【防衛機構】(基本P149)。

エニグマ:次元の綻びB

エニグマ:次元の綻びB【偽装】
 異なる構造物が二重になり存在優先度を争っている。

エニグマ:次元の綻びB【戦力】
 【疑心暗鬼】(基本P149)

ハンドアウト(第二幕)

PC1

PC1【使命】
 現状を理解し対処することが【使命】である。

PC1【秘密】
 PC2に乗せられて世界崩壊を齎してしまった。PC2には流石にこの後のプランがあるのだろう。
 あなたは全て思い出した。この世界は崩壊の危機を迎えている。あなたは斜歯忍軍と比良坂機関の共同部隊に拉致されてこの研究所にやってきた。世界の存続にあなたの想像力が必要だったらしい。所謂人柱に選ばれてしまったというわけだ。

PC2

PC2【使命】
 現状を理解し対処することが【使命】である。

PC2【秘密】
 実はPC1救出後の作戦について全くのノープランである。
 あなたはある違和感に気づいた。偽りの世界を脱出した筈であるにも関わらず、現在の世界も偽りの世界と同じ気配がするのである。この【秘密】を知っているキャラクターは「違和感」に対して情報判定が可能である。

施設

施設【概要】
 何らかの施設。PC1のニューロンを使って何かしようとしていたようだ。

施設【秘密】
 PC1の類い稀なる想像力を、PC1の強靭なニューロンで世界全体に増幅させることで、一貫性のある世界観で現実を上書きしようと試みていた。

研究員たち

研究員たち【使命】
 施設を正常に機能させることが【使命】。どの研究員も悲壮な顔をして「もうおしまいだ」などと言っている。

研究員たち【秘密】
 この世界は多数の知的存在の集合から成り立っている。それ故に法則に一貫性がなく矛盾を来たし崩壊し始めている。研究員たちが嘆いているのは、世界に一貫性を持たせるための唯一の希望が失われたからである。

違和感

違和感【概要】
 PC2の感じた違和感

違和感【秘密】
 ニューロンの速度で体が動く感じがするのだ。思考から行動までのラグがやけに短い。何かの精神世界に接続されているのだろうか。ここまで広大な世界を想像できるのは、強力な妖魔、あるいは、何かの集合体か?

エニグマ:機動部隊

エニグマ:機動部隊【偽装】
 PCたちを無力化しようとする特殊部隊。

エニグマ:機動部隊【偽装】
 【用心棒】(基本p150)

ハンドアウト(第三幕)

PC1

PC1【使命】
 世界の崩壊を防ぐことが【使命】である。

PC1【秘密】
 宇宙が終わろうとしている。初めから知っていたことだった。このケーブルの先に繋がる仮想空間も、仮想空間の中で更に定義を上書きして生成した空間も、来るべき終焉を先延ばしにしていただけだったのだ。どう対処するのか考えておく必要がある。

PC2

PC2【使命】
 世界の崩壊を防ぐことが【使命】である。

PC2【秘密】
 あなたは二段構えの偽りの空間から抜け出すことでようやく思い出した。この宇宙は終焉間近だったのだ。この事態について全くのノープランである。だがせっかく助けたPC1と共倒れするわけにもいかない。あなたの【本当の使命】はPC1を救うことである。

新興宗教

新興宗教【概要】
 世界崩壊を目前にして唐突に興った宗教。創造神に対する無制限の信頼を寄せる。神の名は不明。この崩壊しつつある宇宙を創造せし神であるという。

新興宗教【秘密】
 教祖はいない。信者は皆、直接神からのお告げを受けたのだという。お告げの直後に宇宙が崩壊し始めた。神は努力しておられる。我々は信仰し応援することしかできない。他の存在に縋ってはならない。神は酷く嫉妬するだろう。神は1人しかいないのだから。
 この【秘密】を知っているキャラクターは神について情報判定できる。

神【使命】
 信仰を得る。

神【秘密】
 地球の知的存在からの信仰を得るため、より良い宇宙を創造し、そこに太陽系を閉じ込めた。思惑とは裏腹に自身が創造した宇宙は崩壊を始めた。

エニグマ:世界の終焉

エニグマ:世界の終焉【偽装】
 空は闇に包まれ有害な電磁波を撒き散らし、大地は裂け全てを劣化させ飲み込んでいく。海は常温にも関わらず超流動状態となって陸の構造物を覆い、町田市は神奈川県になった。

エニグマ:世界の終焉【戦力】
 【時空の断層】(基本p153)。

エニグマ:暴徒

エニグマ:暴徒【偽装】
 仮想空間に逃避することができなかった人々が自暴自棄になり暴れ回っている。暴徒の中には忍者の姿も見られる。

エニグマ:暴徒【戦力】
 【暗黒の波動】(基本p153)。

あとがき

 最近胡乱な物語を生成できていなかったので、リハビリめいて執筆したシナリオです。一見複雑ですが実際は「ボスを倒すと世界が広がる」を3回やるだけの超王道シナリオです。
 グノーシス主義を意識しています。身内卓で回した時に私が「グノーシス主義はオタクの教養だと思ってたよ」と発言したところ、プレイヤーからは「そうでもない」「言われるまで忘れていた」などと言われてしまったため、シナリオ公開にあたって補足説明を拡充しました。

以上

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