ハベックの発言について

昨日のハベック大臣の発言がニュースで取り上げられています。ここでは、臨時招集国会と話題になっているインタビューの内容を抄訳ですが紹介します。(急いでいるので内容について誤訳が入っている可能性はあります。またエネルギー以外のところは省略してあります)

報道が正しいともハベック大臣の方向性が正しいとも言いません。私の考えも示しません。これを読まれる方にはドイツの経済大臣が何を言ったかから、ご自身で判断してください。


臨時招集国会での発言

我々は自らの原則を維持しなければならないが、そのコストを他者が支払っている。我々は良いパートナーシップを築き交渉による転換に取り組んできた。

しかしガス、石炭、石油といったエネルギー資源についてどれだけロシアからの輸入に依存しているかについて我々の注意は十分ではなかった。
我々の政策はこの問題に対して不十分であり明確な回答をしてこなかった。

連邦政府が武器を供与することは正しい。

我々は自由と民主主義のためにすべてを行う必要がある。まさにすべてだ。政府はそのための損害から市民を守る必要がある。制裁によってドイツが受けるであろう被害に対してはコロナ対策のような対策を取る必要がある。

すでに長い間取り組んでいるがガス、石炭、石油の備蓄を高い水準に保つ必要がある。 同時に化石燃料からの脱却を大幅に加速化させる必要がある。 これは今後数十年かけて行うといった話ではない。
ドイツは脱化石燃料計画を策定し、大きな力でそれを進めなければならない。

そのため資源備蓄法に関しては早急に政権に持ち帰り、立法化することによって時間を浪費することがないようにする。

水素と再生可能エネルギーの大幅な成長も必要だ。

軍事的安全保障に対する大幅な支出も重要だが、エネルギーの安定供給、自律的な安定供給も国家の安全保障となった。その実現に投資しなければならない。


インタビュー


インタビュアー:金曜日に外務大臣がロシアをSWIFTから除外することはドイツのロシアからのエネルギー輸入に深刻な影響が出ると警告していた。今は危機的状況か。

ハベック: SWIFTは金融のコミュニケーションシステムであり、これが停止すると請求書を買いたり 送金ができなくなる。つまり、石油、ガス、石炭を輸入できなくなる。
そのため、先日からこの対策(SWIFT除外)を可能にする方法を見つける必要があった。

イ:つまり金曜日に外務大臣がロシアがガスの輸出を止めることの脅威を示したが、今はその脅威を感じていないということか?

ハ:それには二つの事象がある。我々が制裁を発動し、ロシアも制裁として、石油、石炭、ガスの輸出を止める。プレスカンファレンスで述べたように、それがエネルギー供給に影響を与える。 これは何も新しい事実ではない。 私が入閣してから望まざるシナリオとして、紛争の影響を抑制することに取り組んできた。ガス貯蔵タンクの残量は何も対策しなかった場合よりも多くなっており、石炭の備蓄も進める。しかしこれが大きな課題であることに疑問はない。

イ:私が勇気ある発言だと思ったのは、我々はロシアからのガスの輸入を止めなければならないがそれはコストがかかると言ったものだ。 どれぐらいのコストがかかるのか経済省はすでに試算しているのか。

ハ:我々はこの冬と次の夏に関してはロシアからのガスがなくてもやっていける。 次の冬に対しては我々のガス調達戦略を明らかに拡大する必要がある。
中長期に関しても警告が必要だ。我々は対策を策定し、実行する必要がある。それによってガス渇望(需要)を可能な限り減らすことだ。名付けるならガス需要削減対策と言えるものだ。

それによって、我々のコストをできる限り抑制する。

イ:ショルツ首相は今日軍事費の拡大を公表し、財務大臣のリントナーは再生可能エネルギーを自由へのエネルギーと呼んだ。
それが正しいのであれば、再エネのためにさらに公的支援を(軍事支出と)同じ規模で行うということか。

ハ:再エネ成長については、市場が確立しており、需要がすでにある。(支援はいらない)風車や太陽光を建てたい人はいる。設備投資は行われる。

我々にとって必要な対策で、そのために支援が必要な対策は、古い産業における燃料の消費の在り方を変えることだ。 鉄鋼用の高炉は、ロシアからの輸入もある石炭ではなく、水素に切り替える。そのためには財政支援が必要だ。石油を使う内燃機関から電気自動車に切り替えるには支援が必要だ。

イ:つまり今日公表された軍事費と同じ規模の支援をさらに今述べたような対策に費やすということか。

ハ:これらのプロセスも、安全保障のために必要なものだ。これらの対策はドイツのエネルギーの安定供給を確保する。 どちらも大事だ。私は軍事費拡大に疑問は呈しておらず、我々が今日決定したことは正しい。

しかし、エネルギー安全保障は同じくらい重要だ。もし産業が維持できなければ、熱や電力の消費を削減しなければならないのであれば、我々の生活の「ノーマル」が危機にさらされる。

イ:連立協定にはクリーンなエネルギーへの橋渡し技術としてガスが今後10-15年は必要だと書かれている。 この橋は崩壊してしまった。これはつまり、石炭の延長や原発の維持を意味するのか?

ハ:石炭は国内の炭鉱は既に閉鎖しており、同じく輸入資源となっており外国(ロシア)に依存している。 そのためガスから石炭への転換は代替手段とはならない。
ガスについてはLNGへの転換を進め、調達先の転換という代替手段を進めており、石炭の貯蔵容量も。。。

イ:しかし、稼働延長をするということか?

ハ:石炭の稼働の延長はロシアの石炭への依存を長びかせることになる。 または調達先を変えることは依存の形態や相手を変えることだ。しかしこの手段が必要であることは除外しない。

すべての(石炭)予備力を確認・精査している。
「思考にタブー(Denktabu)」はない。ただし、化石エネルギーの依存脱却への本当の道は再エネだ。太陽光と風は誰かに属するものではない。

イ:思考にタブーはないことは重要だ。原発の稼働延長も想像できるか?

ハ:その質問に対して答えることは、私の省の業務だ。すでに昨日原発を運営する3大電力会社が公表したとおり、22/23年の冬は力にならない。なぜなら停止に向けた準備はすでにかなり進められており、安全性に深刻な問題を抱え、安全が確立していない燃料供給によってのみ延長が可能だからだ。我々はそれはしない。その質問が重要であれば、イデオロギーから否定することはないが、暫定的な調査結果は次の冬は原発は助けにならないということだ。化石燃料と大量の再エネが。。。

イ:この週末は大きな転換となる。最後ですが、

ハ:原発は次の冬は使えない。

イ:最後ですが、化石燃料、石油、ガス、石炭でロシアの懐を暖めてきたわけですが、それがウクライナの危機につながるわけです。私たちの方からロシアからのパイプラインを切ることは可能ですか?

ハ:今の問題を解決させ、将来的には、我々はロシアともいつか普通の貿易関係に戻りたいと思っている。この危機からの脱出の目標だ。

そのために(この危機を脱するために)、新しい調達パートナーを探し、構築することも考える。

最終的にロシアの石油、ガス、石炭から手を引くこともありうる。ロシア側が供給を完全にとめれば、これが復活することは二度とない。これはクレムリンもプーチンも知っている。これは避けたい最終的な結末だ。

イ:私たち市民が支払うコストはどれくらいか?欧州の安全のために支払えるコストはどの程度か?

ハ:経済的影響は大きい。ロシアに輸出している企業は打撃を受ける。新しい市場を探さなければならず、政府はその手伝いをする。それも頭に入っている。
エネルギー卸市場では価格が高騰し、高止まりすることになる。その対策資金が必要だ。それは大きなコストだが手当てする必要がある。


経済気候保全省のツイート

ニュースがセンセーショナルに取り上げられたので、経済気候保全省はツイッターで28日以下のようにコメントしています。

https://twitter.com/BMWK/status/1498262501401706496


ハベック大臣は、再生可能エネルギーは国家安全保障の問題であり、このプロセスを迅速に推進する必要があると明言しました。すでに再エネ法(EEG)の改正に向けた作業を開始しています。
ドイツのエネルギー供給をより強固な柱へと変える必要があるのです。
エネルギー主権の最も重要な鍵は再生可能エネルギーの拡大であり、それは国家と欧州の安全保障の問題です。ドイツ政府も強い意志を持ってこれを推進しています。脱石炭と脱ガスは、これと密接に関係しているのです。
ハベック大臣は、石炭や原子力発電所の稼働期間を延長することは、ロシアからの供給削減による供給障害を補うためには適切はないと考えていることを明らかにしました。しかし、経済気候保全省はエネルギー供給の安全保障の問題を総合的に検討しており、それが供給責任者としての我々の仕事です。
原子力発電所の運営者も土曜日に自ら発言し、原子力発電は2022年、23年の冬には役に立たないと明言しました。来るべき停止のための準備は整っており、(稼働延長時には)必要な安全確認さえも保証できないほど進んでいるのです。
ドイツは、今年の冬と夏はまだロシアのガスがなくても大丈夫ですが、来年の冬にむけて調達戦略を大幅に拡大しなければならないでしょう。
ここで最も重要なのは、ガス飢餓(需要)を可能な限り減らし、再生可能エネルギーの拡大を断固として推し進めることです。



ドイツ国内には原発の稼働延長を強く望む人もたくさんいて、「思考のタブーはない」、「原発延長を精査した」というところにこれまでとの違いを感じ、原発延長の期待が高まったと声を上げています。

今後ドイツのエネルギー政策議論は少なくともSNS上では完全に思い込みどうしのぶつかり合いになっていくでしょう。


ありがとうございます!