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TOYO RENTAL Lab Vol.4 速報!

RED の最新モデル KOMODO-X の画質は、どこまで進化したのか?その基本性能を KOMODO 6K、V-RAPTOR 8K VV と比較したテスト撮影の速報をお届けします。KOMODO 特有のグローバルシャッターの効果、赤外線汚染の影響などもあわせて検証していきます。

当記事は、動画制作のオンラインサロン UMU TOKYO で公開されたものです。限定公開を目的に有料化をしています。公開日:2023.7.29
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

1. RED KOMODO-X の特徴

RED のシネマカメラには数多くのモデルがありますが、その最新シリーズは DSMC3 と呼ばれており、2023 年時点では、V-RAPTOR 8K VV、V-RAPTOR 8K S35、V-RAPTOR XL 8K VV、V-RAPTOR XL S35 の 4 機種が展開されています。

一方、同時期に発売された KOMODO シリーズは、V-RAPTOR シリーズとは異なる、グローバルシャッター方式の CMOS イメージセンサーを採用しているため、DSMC3 とは別ラインという位置付けになっています。

RED Digital Cinema

KOMODO-X は、2020 年に発売された KOMODO 6K の後継機となるモデルで、KOMODO 6K とは異なる新型の CMOS イメージセンサーが搭載されています。従来の KOMODO 6K は、最大フレームレートが 6K 40fps 止まりでしたが、その性能が 6K 80fps にまで向上したという点が、KOMODO-X を使用する上での最大のメリットとなります。

KOMODO-X


その他、KOMODO 6K と異なる点としては、レンズマウントに Locking RF Mout が採用され、バッテリーマウントが micro V-Mout となり、記録メディアが CFast 2.0 から CFexpress Type B に変更されるなど、カメラの仕様が全体的に V-RAPTOR と似たような構成となっています。

また V-RAPTOR シリーズと同じく、KOMODO-X では USB-C ケーブル 1 本で映像+電源を供給できる DSMC3 RED Touch 7.0" モニターが使えるようになり、ジンバル使用時などに、よりスマートなセットアップが可能となっています。

DSMC3 RED TOUCH 7.0"

各モデルの CMOS イメージセンサーを比較してみると、まず KOMODO-X には、KOMODO 6K と同サイズとなる、Super 35 規格 の 6K CMOS イメージセンサー(19.9MP)が搭載されています。

What Makes The RED KOMODO-X So Fantastic? - CVP

一方、DSMC3 の 4 機種に関しては、V-RAPTOR 8K VV、V-RAPTOR XL は同じ 35mm フルサイズ規格 の 8K CMOS イメージセンサー(35.4MP)を搭載しており、V-RAPTOR 8K S35、V-RAPTOR XL S35 には、その Super 35 版となる 8K CMOS イメージセンサー(35.4MP)が搭載されています。Super 35 版はセンサーサイズが異なるものの、画素ピッチをより細かくすることで、V-RAPTOR 8K VV と同じ解像度が維持されています。

V-RAPTOR 8K

また KOMODO-X のルック面に関しては、RED 公式サイトに、KOMODO-X は CMOS イメージセンサーを再設計したことで、シャドウ部のディテールと色再現が向上した(improvements in both detail and color in shadows)という記述があります。

KOMODO-X Features a completely overhauled sensor architecture, with updated pixel design and improvements in both detail and color in shadows.

参照:KOMODO-X

では KOMODO-X の画質は、具体的にどれだけ向上したのか? 今回のテストでは、KOMODO 6K、KOMODO-X、V-RAPTOR 8K VV の 3 機種を比較しながら、おもにシャドウの階調とノイズ性能という観点で、その性能を検証していきます。


2. ダイナミックレンジ

まずは、3 機種の CMOS イメージセンサーの基本性能として、ダイナミックレンジの差を見ていきたいと思います。RED 界隈のインフルエンサーとして有名な撮影監督 Phil Holland 氏が、RED の最新モデル 4 機種で XYLA-21 チャート を撮影した映像を公開しているので、まずはそれを DaVinci Resolve に取り込んで比較をしてみます。

はじめに、ダイナミックレンジの公称値 16+ STOP の KOMODO 6K のチャートは、以下の通りです。感度は ISO 800 の条件で、標準的な Rec.709 ガンマを適応したイメージになります。

RED KOMODO 6K S35

続いて、KOMODO-X のチャートは、以下の通りです。KOMODO-X のダイナミックレンジの公称値は、KOMODO 6K よりも 0.5 STOP 高い 16.5+ STOP となります。

RED KOMODO-X

続いて、V-RAPTOR 8K S35 のチャートは、以下の通りです。V-RAPTOR 8K S35 のダイナミックレンジの公称値は、KOMODO-X と同じく 16.5+ STOP とされています。

RED V-RAPTOR 8K S35

続いて、ダイナミックレンジの公称値が(業界最高となる)17+ STOP の V-RAPTOR 8K VV のチャートです。参考までに、ARRI ALEXA 35 の公称値は 17 STOP、Sony VENICE 2 の公称値は 16 STOP とされています。

RED V-RAPTOR 8K VV

視聴環境にもよると思いますが、チャートを肉眼で見るかぎりは、その差はかなりの微差という印象です。続いて、波形モニター の信号を確認していきます。各カメラのチャートの波形は、以下の通りになります。

KOMODO 6K S35
KOMODO-X
V-RAPTOR 8K S35
V-RAPTOR 8K VV

イメージ全体を見た感じでは、各カメラの差はあまり分かりませんが、波形モニターの最下部に表示される ノイズフロア の部分を拡大すると、若干の差を確認することができます。このノイズフロアは、ジラジラとした線の幅が狭くなるほど、低ノイズであることを意味しています。

結果としては、KOMODO 6K、KOMODO-X の差はかなりの微差に見えますが、V-RAPTOR S35 ではややノイズ成分が減り、V-RAPTOR 8K VV はさらにクリアな状態になっていることが分かります。

続いて、実際のイメージで比較をしてみたいと思います。テスト撮影時の設定は、以下の通りになります。

RED KOMODO-X
Zeiss CP3.XD 50mm T2.1
6K 16:9 24fps
ISO 800
Lens Apature:T4.0
Shutter Speed:1/500
Codec:HQ・MQ
※ KOMODO は Canon EF to EOS-R 0.71× を使用

パッと見ではあまり差がないように見えますが、シャドウ部に関しては、V-RAPTOR 8K VV の粒状性がややよい印象があります。続いて、この同じイメージを RED の露出管理ツール Gio Scope 上で見てみたいと思います。

Gio Scope は、露出を 16 段階の STOP 表示できる False Color のような機能ですが、KOMODO 6K、KOMODO-X のダイナミックレンジは約 16 STOP なので、Gio Scope 上でダイナミックレンジ全体を確認することができます。16 STOP を超える白飛び寸前のハイライトは 赤色、さらに光量の高い部分は 黒色 となります。

まずは、V-RAPTOR 8K VV の信号を見ていきます。

V-RAPTOR 8K VV

続いて、KOMODO-X の信号は以下になります。

KOMODO-X

続いて、KOMODO-X の信号は以下になります。

KOMODO 6K

Gio Scope の情報を見るかぎりは、各カメラとも印象はそこまで大きく変わりませんが、KOMODO シリーズよりも V-RAPTOR 8K VV の方が、赤色(白飛びする寸前のハイライト)が表示される頻度は少なくなっています。


3. ノイズ性能

続いて、KOMODO-X で性能が向上したとされるシャドウ部のディテール、色再現に関して検証をしていきたいと思います。まずは、RED の初期設定となる ISO 800 の状態で比べてみます。

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