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TOYO RENTAL Lab. 3 速報!<第3刷>

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遅延は?伝送距離は? Teradek Bolt、Vaxis ATOM と何が違う?遠隔操作は問題ない?そのメリット、デメリットを含めて DJI のワイヤレス通信システム Transmission の基本性能を検証していきます。

当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。限定公開を目的に有料化しています。公開日:2022.12.30
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

TOYO RENTAL

1. はじめに

TOYO RENTAL Lab. 第 3 弾では、2022年6月に RS3、RS3 Pro とともに発表された DJI のワイヤレス伝送システム Transmission(トランスミッション)の基本性能を検証してみました。

Transmission の伝送システムは、❶ 映像トランスミッター、❷ 高輝度遠隔モニター の 2 種類のデバイスで構成されています。映像伝送には DJI のドローン製品で使われる O3 Pro 技術が利用されており、DJI によると伝送距離は日本国内では最大 4km、遅延は 68〜100ms(ミリ秒)とされています。

DJI Transmission

映像業界で使われる映像トランスミッターには、ほかにも業界 No.1 の性能を誇る Teradek の人気シリーズ Bolt をはじめ、Hollyland、Vaxis、Accsoon などのさまざまな製品がありますが、今回のテストでは、業界標準モデルとなる Teradek Bolt 500 XT、コスパのよい低価格モデルである Vaxis ATOM 500 SDI の 2 種類のモデルと比較をしながら、Transmission の性能を確認していきます。

Teradek の映像トランスミッターには、最大伝送距離が 3,000ft(914m)の Bolt 3000 XT など上位モデルもありますが、今回のテストでは標準的なスペックの Bolt 500 XT を使用しています。公称値では Bolt 500 XT の最大伝送距離は 500ft(152m)、遅延は 1ms 以下となっています。

一方、Vaxis の映像トランスミッターにも、最大伝送距離 3,000ft(914m)の Storm 3000 という高性能モデルがありますが、今回のテストでは標準的なスペックとなる ATOM 500 SDI を使用しています。公称値では ATOM 500 SDI の最大伝送距離は 500ft(152m)、遅延は 80ms となっています。

それぞれの価格を比べてみると、TOYO RENTAL のレンタル価格(1日)では、DJI Transmission & Handgrip Combo12,100 円であるのに対して、SmallHD/Teradek 703 Bolt の価格が 24,200 円Vaxis ATOM 500 SDISmallHD 702 Bright の組み合わせが 11,550 円 になります。

業界スタンダードの Teradek 製品と、DJI、Vaxis 製品とではおよそ 2 倍以上の価格の差がありますが、実際に性能はどれだけ違うのか?以降、さまざまな角度から検証をしていきます。


2. 電波は何m飛ぶのか?

DJI Transmission のワイヤレス伝送距離は、日本国内では最大 4km とされていますが、実際にはどれぐらい飛ぶのか? まず最初の検証では、その映像の伝送距離を Teradek Bolt 500 XT、Vaxis ATOM 500 SDI と比較してみました。カメラは RED KOMODO 6K、映像出力には SDI 端子を使用しています。

まずはじめに、原宿の住宅地にある TOYO RENTAL 本社の入口から、車通りのある幹線道路に向かって曲がり道を進んでいくと、Transmission のシステムではおよそ 160m の地点で信号が途切れました。ちなみに周囲に 強力な電波干渉(strong transmitter signal interference)があると、画面左上に ⚠️ 警告表示が出てきます。

次に、映像トランスミッターと高輝度遠隔モニターとの間に大きな障害物のない、見通しのよい直線道路で同じことを試してみると、伝送距離はおよそ 300m となりました。当然ながら、障害物がすくない方が伝送距離は伸びるようです。

また Transmission では最大 HD 1920×1080 での映像伝送ができますが、設定するフレームレート(周波数)により、その通信品質が変わるとされています。最初の 2 回のテストでは、23.98 Hz の設定で伝送をしましたが、試しに 3 回目は周波数を 59.94 Hz に変えて同じルートを歩いてみました。

RED Digital Cinema

周波数が 59.94 Hz の設定では、伝送距離はおよそ 270m という結果となりました。距離は 23.98 Hz よりも 30m 短くなりましたが、このあたりは誤差の範囲とも考えられます。伝送距離に対しては、フレームレートの設定による影響はそこまで大きくなさそうです。

また DJI 公式サイトによると、Transmission のワイヤレス通信による最大データ転送速度は 40 Mbps とされていますが、高輝度遠隔モニターの画面上にある電波状況のステータス表示により、距離が離れるにつれその通信量が落ちていく様子を確認することができます。

続いて、Bolt 500 XT で同じ直線道路のルートを歩いてみると、映像はおよそ 80m の地点で途切れました。周波数は同じく 23.98 Hz の状態です。環境としては、車通りのある 5 車線の幹線道路で、両脇にはビルや店舗などが並んでいましたが、伝送距離は公称値である 500ft(152m)よりもかなり低い数値となっています。

続いて、Vaxis ATOM 500 SDI でまた同じルートを歩いてみると、映像はおよそ 300m 地点で途切れました。周波数は同じく 23.98 Hz の状態です。以上の結果により、ATOM 500 SDI、Transmission の伝送距離はほぼ同じ、Bolt 500 XT の伝送距離は公称値よりかなり低いことが確認できました。

また今回のテストでは、高輝度遠隔モニターには付属のアンテナを取り付けて使用しましたが、これをオプション品である High-Gain Antenna に交換をすると、その性能が 40% 向上するとされています。ただこの High-Gain Antenna は、現時点では日本国内では販売されておらず、電波法などの都合により今後も発売されない可能性があります。

DJI Transmission High-Gain Antena

3. 遅延はどれだけある?

次に Transmission のワイヤレス映像伝送の 遅延 に関して、Bolt 500 XT、ATOM 500 と比較をしてみます。

テスト内容としては、RED KOMODO 6K の SDI 端子より HD1080 23.98P の信号を出力、SDI 分配器を通して各トランスミッターの SDI 端子に入力した上で、ワイヤレス伝送された映像とライブ映像の比較をしていきます。SDI 分配器は Blackmagic Design Mini Converter SDI Distribution 4K を使用しています。

公称値を見ると、Transmission の遅延は 1080p24 時は 100ms、1080p60 時は 68ms、それに対して Bolt 500 XT の遅延は 1ms 以下、ATOM 500 SDI の遅延は 80ms となっています。公称値では、Bolt 500 XT の遅延が圧倒的に少なく、Transmission、ATOM 500 SDI はほぼ同じ数値となっていますが、実際のところはどうなのか?

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