RED 画像処理のしくみとバグ情報
RED のカメラはなぜ “高解像度” なのか? RED Digital Cinema 社が開発する圧縮 RAW、IPP2、OLPF をはじめ、覚えておきたい RED の画像処理のしくみとバグ(Digital Artifact)に関する情報を紹介していきます。
1. RED が高解像度なのはなぜ?
RED の技術開発の核となる DSMC という設計思想は、“動画と写真を撮影する” ことをコンセプトにしたカメラ・システムですが、これは単純にカメラをデジタル一眼のようなフォルムにするだけではなく、❶ 高解像度、❷ 高度なイメージ処理、❸ RAW 記録 など、写真のデジタル撮影に求められる基本性能を実現するもの、となっています。
そして、4K を超える高解像度動画の RAW 記録を実現するために RED が開発したのが、圧縮 RAW(compressed RAW)の技術です。
2. REDCODE RAW
RED のデジタルシネマ・カメラの最大の特徴は、REDCODE RAW(r3d)という独自開発の 圧縮 RAW を採用している点にあります。この REDCODE RAW は、ウェーブレット変換を用いたロスレス圧縮(可逆圧縮)で “データの圧縮率を自由に変えられる” という特徴があります。
では REDCODE の圧縮率は、何を基準に選べばよいのか? RED はその点をこう説明しています。
RED 公式掲示板サイトによると、標準的な圧縮率となる REDCODE 5:1 ~ 8:1 の範囲は、その画質の差を人間の視覚が認識できない「視覚的ロスレス(Visually Lossless)」となり、最も圧縮率の低い REDCODE 2:1 は、数値的に圧縮前のデータを完全再現できる、数学的ロスレス圧縮(Mathmatically Lossless)としています。
たとえば、クロマキー合成など編集上で高度な画像処理をするような場面では、より低い圧縮率が望ましく、通常時は 8:1 以上の圧縮率であれば問題ないという話です。
収録時間を ARRIRAW、Apple ProRes と比較してみると、この REDCODE RAW がいかに効率的な圧縮であるかが分かります。
また画質に関しては、BSC EXPO 2018 のワークショップの中で、その具体的なしくみが語られています。要点としては、REDCODE RAW が採用するウェーブレット変換は、JPEG と同じ情報量でより高解像度なイメージを記録できる、という話です。
こうしたロスレス圧縮の技術は、Adobe 開発する Cinema DNG などにも使われています。Cinema DNG は、誰もが利用できる オープンソース形式 で SIGMA fp などに採用されていますが、REDCODE RAW に用いられる圧縮 RAW に関する技術は 特許 で保護されているため、使用にあたりライセンス料が発生します。
3. 圧縮 RAW の特許をめぐる争い
2018 年、Apple は業界標準のコーデック ProRes の圧縮 RAW 版となる、新型コーデック ProRes RAW を発表しますが、圧縮 RAW 記録に関する特許を侵害するとして、RED は Apple に対して特許裁判を起こします。
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