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CP+2021 出演!bird and insect 林裕介氏との特別セッションが絶賛公開中

2021年2月27日、CP+2021 ニコンオンラインステージにて配信された bird and insect 林裕介さんとの特別セッション『CMのプロに聞くフォトグラファーが映像業界で活躍する方法』の無料公開がはじまりました。

📸  Nikon CP+2021オンラインイベント
https://www.nikon-image.com/event/cpplus2021/

以降、当日のスライド資料と台本を紹介していきたいと思います。

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このセッションでは、フォトグラファーの方々が映像の世界で、自信を持って活躍するためのエッセンシャルな情報をお伝えできればと思います。

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映像の業界には、大きく2つの派閥があります。

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映像を記録するメディアには ❶ビデオ(磁気テープ)と ❷フィルムの2種類がありましたが、そのどちらをバックグラウンドにした業界か?という視点で見ていくと、撮影スタイルだったり、使用機材のポイントが理解しやすくなります。

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ビデオの方では、一般家庭で使われる記録メディアとして VHS が、テレビ業界で使われる業務用の記録メディアとして BETACAM がありました。

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一方、フィルムの方には、米国の KODAK と日本の FUJIFILM の2大ブランドの製品が世界中で使われていました。

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ここで重要なポイントとなるのが フィルムは写真・映像の両方で使われていた” という点です。

なので、フィルム撮影をバックグラウンドに持つデジタルシネマ(映画・CM・MV)の世界と写真の世界は、イメージに対する価値観、撮影スタイルが似ている。という歴史的な背景をまずは覚えておくといいかなと思います。

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映像の世界で撮影監督のことを “Director of Photography” と呼びます。そんな言葉の端々からも映像と写真の関わりが感じらるかなと思います。

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とりわけ CM 撮影の世界には、1970 年代より数々の写真家が活躍してきた土壌があって、その流れは 2021 年現在まで脈々と続いています。繰上和美、藤井保、上田義彦、内田将二、田島一成、瀧本幹也、市橋織江、正田真弘、奥山由之(敬称略)

じゃあ、実際どれぐらいの写真家が CM 撮影の仕事をしているのか?

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自分が所属するクリエイター事務所(dep Management)には、所属カメラマンが 8 名いますが、その内の 5 名が写真家としてのバックグラウンドを持っています。

比率にすると 60% になりますが、おそらくこれは CM 業界のスタッフであれば、感覚値としてうなずける数字になっていると思います。

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そんな写真家の優位性はどこにあるのか?

一枚絵としてのビジュアルの強さであったり、被写体とのコミュニケーション能力だったり、写真家の優位性はたくさん挙げられます。

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こんな感じで、50 年以上に渡り数々の写真家が活躍してきたフィルム撮影をバックグラウンドに持つ、映画・CM・MV などのジャンルの総称を「デジタルシネマ」と呼びます。

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たとえば 5G など、通信技術の世界では 10 年周期のサイクルで技術革新がくり返されることが有名ですが、写真や映像の世界でも似たような現象は起きています。

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これは「カラーフィルムの需要の変化」を表したグラフですが、2000 年をピークに 10 年間でその需要が 10% 以下に落ち込んでいることがわかります。

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これに反比例するように、デジタルの需要が増えていくわけですが、ご存知の通り、写真の世界では 1990 年代後半、映像の世界では 2008 年あたりから「デジタル化」が加速していきます。

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デジタル化するということは、これまでのアナログなものが「半導体」に置き換わることを意味します。イメージセンサー、モニター、ライト、記録メディア、現像装置(PC)。デジタル化により、気が付けば、撮影で使われるありとあらゆるツールが半導体に置き換えられるようになりました。

このあたりの流れは、1980 年代には予測されていて、日本のカメラメーカー各社はみなその対応策を用意していた、という点もおもしろいポイントかなと思います。

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たとえば Canon はコピー機、Olympas は医療分野の内視鏡、レンズと精密機器に強い Nikon は「半導体露光装置」の開発に取り組むなど、カメラ開発の裏側でメーカー各社がその活動の幅を横に展開していた、という歴史がそこにはあります。

そして、動画の世界では 2008 年からデジタル化の波が起きはじめます。

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2008 年に RED Digital Cinema 社が開発した 4K RAW 撮影ができる『RED ONE』が発表されると、フィルムの質感を再現する「シネスタイル」のカメラが続々と開発されていきます。

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デジタルシネマ・カメラの主要なメーカーとしては、ドイツの ARRI 社、米国の RED Digital Cinema 社などが有名ですが、日本のカメラの強みは小型機にあります。DSLR を含めたミドルクラス以下のモデルでは、日本のカメラが世界的なシェアを誇っています。

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最近では 8K 撮影や XR など新たな表現も生まれ、映像の世界では「高解像度化」がどんどん進んでいますが、はたしてこの流れは映像クリエイターにどんな影響を及ぼしているのか?

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デジタルシネマの世界では、近年この高解像度化のトレンドと逆行するように「オールドレンズの波Cine-Mod)」が起きています。毛穴までくっきり見えるリアリティより、抽象的な表現が好まれるデジタルシネマの作品では、高解像度であることが必ずしも上質な表現につながるわけではない、という話です。

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一瞬を切り取る写真ではストロボが定番だと思いますが、映像の世界では定常光のライトを使うのが一般的です。どんな種類があるのか?

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❶ 太陽光
太陽光はご存知の通り、あらゆる波長の光を含んだ、あらゆるライトの基準となる光としてある色温度 5600K の光です。

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❷ タングステン灯
発明王エジソンが発明した「白熱電球」の改良版であるタングステン灯は、まだ現役で使われている色温度 3200K の光。金属線であるフィラメントを熱することで発光します。

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❸ 蛍光灯
蛍光灯は、家庭やオフィスにある環境光として最も一般的なライトです。放電により発生する紫外線+蛍光体という塗料の組み合わせで発光するものですが、緑色の要素が強く、フリッカーが起きやすいという特徴があります。色温度は 3200K から 5600K まで幅広くあります。

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❹ HMI
写真撮影でも使われることがあると思いますが、HMI は ARRI 社が開発した太陽光(daylight)を再現した色温度 5600K のライトです。この HMI はデジタルシネマ撮影では最もよく使われるライトで、蛍光灯と同じく放電の原理で発光します。

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❺ LED
デジタル化の波の中で生まれた、半導体を利用したライトが LED です。最近ではデジタルシネマの現場でも使われるようになりましたが、色を自由に変えられる最も省電力なライトになります。撮影では 青色 LED を利用したモデルが一般的です。

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この LED ライトの登場と、カメラのデジタル化により、映像の世界ではライティングの考え方に大きな変化が起き始めていますが、その最も重要なポイントとなるのが「演色性」というものです。

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演色性はどれだけ忠実に色を表現できるか?を意味する用語ですが、その基準となる太陽光の「分光スペクトル」を見るとこんな感じになります。あらゆる波長の光がまんべんなく分布していて、なめらかな曲線を描いてることが分かります。

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各ライトの分光スペクトルを比較してみると、こんな感じになります。

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また最近、注目されているのが光の演色性を数値化した「演色評価指数」というものです。このライトなんとなく色が変だな・・・みたいなあいまいな感覚を数値で評価できる点がポイントになります。

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光の色を測定するメーターは、最近では「スペクトロ・メーター」という名前になっています。

このスペクトロメーターで測れる演色評価指数の代表的な規格が CRI というものですが、ほかにもテレビ放送業界が定める TLCI、デジタルシネマ業界が定める SSI、米国の照明業界が定める TM-30 など、さまざまな規格が濫立していてかなりカオスな状態になっています。

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Nikon Z シリーズで新採用の『Blackmagic RAW』は何がいいのか?そのポテンシャルを説明するには、DaVinci Resolve と ProRes RAW についての理解が必要になります。

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デジタルシネマ作品の色調整ソフトとして世界的に有名なのが、Blackmagic Design が開発する『DaVinci Resolve』です。直感的な UI で細やかな調整ができたり、カラーマネージメント面での優位性があります。

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Apple が開発する『ProRes RAW』は、BRAW と同じく外部レコーダーを利用して 12bit RAW の収録ができますが、いま最も大きな課題としてあるのが DaVinci Resolve が ProRes RAW に未対応という点です。

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ツールはどんどん進化するけど、人間の働き方はそう簡単には変わらない。それはカメラと撮り方に関しても、同じことが言えるかなと思います。

たとえば Nikon のレンズや精密機器の技術が “半導体” の分野で活かされてるように、これまで培ってきた何かはきっと新しい分野で役立つんじゃないかと信じています。デジタルシネマの世界には、写真で培った感覚をそのまま活かせる環境があります。まだ試してない方は、ぜひ動画を試してみてください。

※ 当記事は、必要に応じて加筆・修正を加えアップデートをおこないます。

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