次世代の露出管理ツールまとめ
EL Zone は何が便利なのか? False Color との違いから ETTR、Exposure Index の活用法まで。CMOS イメージセンサーの性能を最大化して、上質なルックを得るために覚えておきたい、次世代の露出管理ツール(Exposure Tool)に関する情報をまとめていきます。
1. EL Zone System とは?
CMOS イメージセンサーの性能が向上する中で、カメラの “適正露出” に対する考え方もだんだん変化してきています。露出計、波形モニターなど、昔ながらの露出管理メソッドがある中で、最近では ETTR 、Cine EI など、CMOS イメージセンサーが得られる情報量を重視したメソッドも普及しています。そんな中、次世代の露出管理ツールとして注目を集めているのが、EL Zone System です。
EL Zone は、撮影監督エド・ラッハマン氏が提唱する、18% Gray を基準とした False Color の派生版となる露出管理ツールで、Panasonic VariCam、SIGMA fp、SmallHD などの製品に搭載されています。EL は開発者 Ed Lachman 氏のイニシャルを意味します。
一般的な False Color では、映像の輝度(IRE)の範囲ごとに色分けされたイメージを表示しますが、EL Zone はその単位が IRE ではなく、露出の中間値である 18% Gray よりどれぐらい明るいか?暗いか?を STOP 単位で色分けしている点に特徴があります。
昔からビデオ撮影をベースしている放送業界では、反射光を測定する波形モニターを利用して、白を 100%、黒を 0% とした 映像の輝度(IRE)をもとに露出を管理しますが、そのメソッドを発展させたのが False Color になります。
一方、フィルム撮影の考え方がベースにある写真・映画業界では、露出計とスポットメーターを利用して、18% Gray を基準とした 光の強さ(STOP)により露出を管理するのが一般的ですが、EL Zone はそうしたメソッドをもとに開発されています。
ライトの光量を調整する上では、電気信号の強さをあらわす IRE よりも、光の強さをあらわす STOP の方が、光量(Light Density)がどれだけ変化したのか? 露出計に合わせた尺度で計算できるため、EL Zone にはライティング作業を効率化できるというメリットがあります。
ただ EL Zone にはデメリットもあり、測定範囲が 18% Gray を基準に± 6 STOP の合計 12 STOP 分しかないので、Sony a7SIII をはじめ、ダイナミックレンジが 13 STOP を超える最近のデジタルシネマカメラでは、露出管理をする上で重要な指標となるハイライトの白飛び、シャドウの黒潰れなどの情報が得られないという問題を抱えています。
2. False Color
EL Zone の元となる False Color は、波形モニターと同じように反射光を測定して、映像を明るさの領域(zone)ごとに、およそ 10 種類 の色にペイントして表示する露出管理ツールになります。
最近では、ARRI、RED、Sony など数多くのカメラ製品、Atomos、SmallHD などのディスプレイ製品に搭載されており、その配色のルールも統一された感じになっていますが、色分けの基準となる明るさの領域に関しては、メーカーごとに様々となっています。False Color で使用される 10 色の典型的な配色は、以下のような感じになります。
一方、その色数が 10 種類もあると、重要なポイントの明るさが見づらくなるという点を問題視する見方もあり、ARRI、Blackmagic Design をはじめ多くのカメラでは、特に重要度の高い 6 つの領域(zone)のみが表示される仕様となっています。
こうした明るさの領域は、S-Log、Log C などガンマカーブの特性、ダイナミックレンジの性能などにより変わってくるので、False Color の情報を正しく把握するには、カメラ毎にその数値を マッピング する必要があります。カメラ自体に False Color が内蔵されている場合は、すでにそのマッピングが行われているはずです。
またもしカメラに False Color が搭載されてない場合は、SmallHD のディスプレイ製品を使用すれば、そのマッピング作業を手動でおこなうこともできます。初期設定で ARRI の False Color の数値も用意されていますが、基本的には、それぞれの明るさの領域(zone)ごとに IRE 値と色を設定して、カメラ毎のプロファイルを自作していきます。
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