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話題の Creative LUT まとめ <第4刷>

ARRI、RED、Color Grading Central が提供する無料 LUT パックから、Monet for DaVinci Resolve など、話題のクリエイターが制作する有料 LUT まで、日本の映像業界に出回る Creative LUT をまとめて試していきます。Log to Log の形式の LUT が必要なのはなぜ?

当記事は、動画制作のオンラインサロン UMU TOKYO で公開されたものです。限定公開を目的に有料化をしています。公開日:2023.6.30
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393


1. LUT の使い方が変わってきた

RAW 撮影、Log 撮影された色の浅い撮影クリップを理想的なルックに変換してくれる LUT(Look Up Table)は、これまでカラーグレーディングの作業で大きな役割を果たしてきましたが、TV 画面から iPhone などモバイル端末へと動画の視聴環境が移行していく中で、その使い方にも変化が起きはじめています。

LUT は、入力信号 A を出力信号 B として変換(マッピング)するためのデータとして機能しますが、映像業界で使用される LUT には、大きく 2 種類のタイプがあります。

・Technical LUT
・Creative LUT

Technical LUT は、ある特定の色空間を異なる色空間に変換するための LUT で、おもに Log 映像を Rec.709 Gamma 2.4 などディスプレイに最適な色空間に変換する際に使われます。DaVinci Resolve では、あらかじめプリセットとして収録されている、メーカー別にフォルダ分けされた LUT がそれにあたります。

一方、Creative LUT は、そこに制作者の意図によるルック(Look)の情報を加えたもので、Instagram のフィルターのようなはたらきをします。映画など映像作品のルックとして使用される場合は、Show LUT とも表現されます。DaVinci Resolve では、LUT リストの Film Looks フォルダに収録されているものなどが、それにあたります。

また LUT は、ARRI Log C、Sony S-Log3 など、ある特定の色空間で最適な結果が得られるよう作られているので、LUT を使用する際には 色空間 の設定が重要となります。Technical LUT は、そうした色空間の変換に使用されるわけですが、処理が整数(Integer)型でおこなわれるので、100% を超える白、0% 以下の黒などの領域で、明るさの クリッピング が発生するという課題を抱えています。

一方、DaVinci Resolve には、Color Space Transform という便利なエフェクト(Resolve FX)が用意されています。この Color Space Transform は、32-bit 浮動小数点での処理により 100% を超える白、0% 以下の黒の情報を扱えるので、明るさのクリッピングを気にすることなく色空間を変換することができます。

さらに Log から Rec.709 だけでなく、ARRI Log C から Sony S-Log3 のように、あらゆる色空間同士の変換ができるので、Color Space Transform を使用することで Technical LUT は不要となり、色空間に制約されることなく、自由に Creative LUT を活用できるようになります。

以降、この記事では Color Space Transform を活用しながら、日本の映像業界に出回るさまざまな Creative LUT を試していきたいと思います。


2. KOTETSU LUT

まずはじめに、日本のデジタルシネマ業界で指折りの DIT として活躍中のタキユウスケさんが制作する、KOTETSU LUT を試してみます。KOTETSU LUT PACK は、ARRI LogC3 / AWG3 用に設計された 11 種類の LUT の詰め合わせで、その他にも RED、SONY、Panasonic 用のものが展開されています。

KOTETSU LUT SHOP

特に注釈もないので、一般的な Rec.709 Gamma 2.4 のディスプレイに最適な仕様になっていると推測されますが、KOTETSU LUT は各カメラの Log カーブごとに展開されており、撮影現場で Display LUT としても使用できるという点が、DIT が制作する LUT ならではの特徴といえます。また全ての LUT に対して、コントラストが異なる 3 種類のバージョンが用意されており、ライティング環境に応じて最適なものを選べる仕様となっています。


3. Monet for DaVinci Resolve

続いて、元 bird and insect の林佑介さんが制作する DaVinci Resolve のプリセット Monet for DaVinci Resolve を試してみます。Monet は一般的な LUT パックとは異なり、12 種類の LUT が配置された理想的なノードツリーの情報を DPX ファイルとして提供する、DaVinci Resolve の プリセット というコンセプトとなっています。

Monet for DaVinci Resolve

Monet の LUT には、Rec.709 Gamma 2.4 など出力する色空間やコントラストの情報(ODT)が含まれていないので、そのままの状態では撮影現場で Display LUT として使用することはできませんが、Log to Log ライクな低コントラストの仕様になっているため、逆に bird and insect ならではの上質さが感じられるようなルックになっている印象です。

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