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macOS Viewing LUT 試してみた<第2刷>

ガンマを 2.2 にする? テレビ画面の標準規格である Rec.709 Gamma 2.4 ではなく、P3 D65 Gamma 2.2 の色空間を利用して、Apple 製品のディスプレイの明るさや色の精度を高める、DaVinci Resolve 用の macOS Viewing Transform LUT の効果を検証していきます。

当記事は、動画制作のオンラインサロン UMU TOKYO で公開されたものです。限定公開を目的に有料化をしています。公開日:2023.10.19
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

1. Mac のガンマシフト問題とは?

一般的に Apple 製品のディスプレイでは、DaVinci Resolve、Premiere Pro など、動画編集ソフトで書き出した動画をデスクトップで再生すると、動画編集ソフト上で見ていた状態と明るさが変わってしまう、いわゆる ガンマシフト問題 が発生することが知られています。

ガンマシフトが起こる要因としては、動画編集ソフトから書き出される動画に埋めこまれた、NCLC タグ といわれる色空間に関するプロファイル(メタデータ)が、QuickTime Player などのソフトウェア、YouTube などのプラットフォームで正しく読み取られないことによるもの、と言われています。

またさらに根本的な要因とされているのが、Apple 製品のディスプレイが、TV 画面の標準規格である Rec.709 Gamma 2.4 とは異なる P3 D65 Gamma 2.2 の色空間を採用しており、macOS の色管理システムである Color Sync の機能により、その色空間の変換をおこなっているという点です。

こうしたガンマシフト問題を回避するには、DaVinci Resolve の場合、Output Color Space の設定で、macOS 向けに開発された Rec.709-A という色空間を選択するというのが、セオリーとされています。

ただ近年、動画の視聴環境は TV 画面から iPhone などモバイル端末への移行が進んでおり、Rec.709 Gamma 2.4 の規格は、時代遅れになりつつあるという現状もあります。


2. macOS Viewing Transform LUT とは?

そうした背景がある中で、Apple 製品のディスプレイの色や明るさの精度をより高めるために、カラリスト Cullen Kelly 氏が開発したのが、macOS Viewing Transform LUT です。

Kelly 氏は、純粋なカラリストとしての活動の他にも、カラリスト向けのコミュニティである Mixing Light で、DaVinci Resolve の講座を担当していたり、Blackmagic Design の公式 YouTube チャンネルで、カラーグレーディングの解説動画に出演していたりします。

DaVinci Resolve 17 Color Training - Color Management

今回の記事で紹介する Viewing LUT およびワークフローは、これまで Kelly 氏が iPhone、iPad をはじめ、MacBook Pro、Apple Studio Display など、さまざまな Apple 製品のディスプレイの特性を解析した上で開発したもので、macOS 環境で、DaVinci Resolve のビューワ画面の明るさや色をより忠実に再現するために機能する、補助的な LUT とされています。

Studio Display - Apple

実際、LUT そのものは無料配布されているので、誰でもすぐに試すことはできますが、LUT を使用する上で決められた手順があるので、そのあたりを含めて、以降、その運用方法を詳しく見ていきたいと思います。


3. Gamma 2.2 での特殊な運用方法

Kelly 氏が提唱するこのワークフローの最も重要な点は、DaVinci Resolve の色空間の設定で、TV 画面の標準規格である Rec.709 Gamma 2.4 ではなく、Gamma 2.2 を使用するという点にあります。この Gamma 2.2 という数値は、Apple 製品のディスプレイで利用されるガンマ値として知られています。

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