民具に感動した話

 去年のくれぐらいだったと思う。民具のデザイン展が学内の展示でやってた。見に行ったきっかけは履修していた授業の課題で、その展示に行って感想を書くレポートがあったからだったと思う。

 普段だったら行かないタイプの展示だったし、正直行かなくてもなんとなく感想をでっち上げればバレなかったと思う。でも同時期に助手展をやってて、学校行く用事あったからついでに寄った。

 結論からいうとやけに感動して図録まで買ってしまった。SDGsから逃げられない僕たちへの解答が、暮らしに近いデザインから見えた気がしたからだ。なんとなく言語かしたくて普段だと提出ギリギリにするレポートを帰宅後すぐに書いたのを覚えてる。

 今のデザインと民具の関係性について考えるきっかけはそれまでにもいくつかあった。ヴィッレ・コッコネンの講義で民具の話してたのもあったし、ジャスパー・モリソンの「The Hard Life」からインスピレーションを得たこともあった。最初はそういった古いものをリバイバルしようとすることに対して言語化された理由が自分の中に馴染んでなかったから、考えてはいたけど腑には落ちてなかった。

 民具のデザイン展を一通り見て、一目見ただけで作り方がなんとなくわかるってことに気がついた。民具ってそんなもんだったはずなのかも?
 一番印象残ってたのは、シュロの葉を使ったハエ叩き。これは多分図録にだけ載ってたやつだと思う。シュロの葉を結っただけ。作り方から使い方まで一貫して役割を全うしてる。身近な素材を使って、単純な用途のために単純なものを作ってる。一方今はというと、100均で買えるハエ叩きはプラスチック製。

 現代社会で、一番手軽に消費されてる素材ってビニールとかプラスチックとかだと思う。百均見たらそれで埋め尽くされてる。某環境大臣の作戦でSDGsの旗印の元マックとかからは消えつつあるけどやっぱりそれは変わってない気がする。そういう素材ってどうやってできてんの?デザイン科学生の僕もあんまし深く知らないし、みんなそんなこと興味ないと思う。

 そういう知らないとこで知らない奴が知らない素材で作った製品に囲まれた生活が当たり前な僕らだけど、なんとなくSDGsってそれを明瞭にしていくことを目指してるような気がするし、デザイナーがやろうとしてることってそれで説明できそうな気がする。

 ゴミからモノづくりとか、廃材でなんかしようとか。まさにそういう典型な気がするっしょ?

 プラスチックに覆い尽くされた説明ぶそ不足のデザイン時代から、詳しく説明できるデザインの時代へって感じなんだろうな。

こういう流れの理由の一つに、SDGs的な流れももちろんあると思うけど、誰でもわかる言語化された魅力が欲しくなってるってのもある気がする。情報社会で生き抜くデザインって多分そういうこと。

そう考えるとアナログでローカルな伝承がベースになってる民具のデザインが、新しい時代の「民具」のデザインのもとになって、情報の一部を担うっていう構造自体がすごく歪で面白い。

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