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未来のために編む

私というちっぽけな一人の人間が何かを変えたところで、地球の未来が変わるはずもない。

そう思っていた。

「どうせ私には何もできない」という目で世界を見れば、どうにもならない事ばかりが目に付く。

「私にできることは何だろう」という目で世界を見れば、ほんの些細なことでもできる事に気が付く。

私は、私にできるとても些細なことを今日も続ける。

天然素材の糸で食器洗いを編むことだ。


世界の海で繰り広げられる、汚染。

目にするほどに心が痛み、もうどうすることもできない絶望感に襲われる。

それでも、私の見る海は今日も綺麗だ。

海辺で健気に生きる小さな生き物たちを見るたびに、私に何ができるだろうかと考えていた。


綺麗に見える海も、小さなプラスチックの欠片「マイクロプラスチック」による汚染が進んでいる。

マイクロプラスチックとは、海に流れ出たプラスチックごみが波に削られて、小さな小さな欠片となったもの。

プラスチックは自然に分解されることはないから、この先何百年も海を漂い続けることになる。

小さな魚達がそのプラスチックを食べてしまい、やがて大きな魚がそれを食べ、そして人間がその魚を食べる。


驚いたことに、マイクロプラスチックは化学繊維の衣類を洗濯するだけで発生しているのだという。

ということは、食器を洗うスポンジや、お風呂で身体を洗うボティタオルも同じはず。


私にできることは何だろう。

そんな視点で世界を見てみると、エコたわしが目についた。


20年前、カナダで暮らしていた頃、ホストファミリーのおばあちゃんは食器洗いの編み方を教えてくれた。

見つけた、と思った。

私にできること。


正直に言えば、世界の海を漂うマイクロプラスチックの膨大な量を考えると、私が食器洗いの素材を変えたところで、減らせる量は微々たるものだろう。

だけど、私は何かをしたかった。

どうせ何もできないと考える自分を、変えたかった。


カナダのおばあちゃんが教えてくれた食器洗いはコットンの糸で編む。

欠片が海へ流れ出たとしても、自然に還る素材だ。

少量の洗剤で綺麗に洗えて、汚れが気になる時は煮沸洗いをしてお日様の下で乾かす。


ボロボロになるまで使った食器洗いを見るたびに、私はほんの少し自分のことが好きになる。

私は地球の一部なのだ。

地球を大切にすることは、自分を大切にすることでもある。


100年後の未来に綺麗な海を残したいから、私はこれからも編み続ける。



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