「 」の話
一人暮らしを再開してから、落ち着かなくなったりどうしようもなくなったときは散歩へでかけるようになった。夜中に一人で出歩くのは良くないけれど、、
梅の花が綺麗だった。
桜より梅のほうが好きかもしれない。ぱらぱらって感じ。
職場の方が亡くなった。急だった。2日前に会った。
電話をとった職員がその場の全員に伝えたとき、数秒くらい時間が止まったみたいだった。みんな何が起きてるか、というか唐突すぎてよく分からなかった。嘘みたいだった。
泣き崩れる大人。まだ若かったのにと哀れむ大人。身の上話をし始める大人。
私は子供たちが帰ってくる準備をした。私は実質数日間しかまだ共に働いていなかったから。私が泣いてはいけないような気がした。
最初にに声をかけてくれた人だった。私に仕事を教えてくれた人だった。何事も中途半端にしかできない私を「でも何でもできるね」と笑ってくれた人だった。
ああ、どうしてこんなに良い人が死んでしまうんだろう、こんな私がまだ生きているのに。
一番初めに思ったこと。
今までの色んなことが頭から湧き出てきた。気管が狭まってきて、これはやばいと思って急いでポーチを開いたものの、こんな時に限って頓服薬を切らしていた。とりあえず水をがぶがぶ飲んだりした。
あの日から私の頭のネジはひとつやっぱりどこかにいってしまっていて、いまだに自分の死に対する恐怖がない。こんなこと言ったら怒られるけれど、今自分が死んだらと考えても怖くないし悲しくもない。
死ねなくてよかったと思える瞬間もある。でも死ぬことは怖くない。
これが治らないの、やだなあ。
正直いま自分の中にある感情がどんなものなのか分からない。
ただ頭に浮かんでくるのは陸橋からの地獄みたいな景色や意識が飛ぶほどたくさん飲んだ薬のゴミ、首を吊ったときの感覚、風呂場で死んでやろうと計画したあの日々だった。
ここまでしてまだ生きている私と、亡くなったあの人のことを考えると頭がおかしくなりそう。どうなってるんだよこの世界。
生きてるだけで、愛。という映画の寧子ちゃんが言ってたことを思い出した。
「いいなあ、津奈木は私と別れられて」
私以外の人間は、私がこの世で一番嫌いな私と別れることができる。
いいなあ、私もそう思う。私と別れたいとこの世で誰よりも思ってるのは私なのに。いいなあ。
今日、小学校に子供たちをお迎えに行って学童まで帰るとき、1年生の女の子が「私は鳥になって空を飛ぶのが夢なの!」と言った。
ばれないように泣いた。少しだけ。
ひどく頭が痛い。
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