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忍殺TRPG小説風リプレイ【アズ・ザ・クロウ・アンド・ドラゴン・フライズ(その10)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPG公式サンプルシナリオのマップを利用した小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

 デスドレインの身体が、アンコクトンの波が、見えない壁にぶつかったように空中で動きを止めた。「想像以上に……いや、想像以下に品性が下劣な男だったな。ヴァルナ=サンが真面目に動かん理由も頷ける」声はデスドレインのものでも、ドラゴンチックのものでもなかった。開かれた扉のマケグミクラス側から姿を現した、第三者のものだ。

 その新たな人物は右手をデスドレインにかざしたまま、被っていたフードを左手で上げてアイサツを行った。「ドーモ。ザイバツ・シャドーギルド、ロンダイジ・レツノスケです」

「アァ?またザイバツかよ!ドーモ、デスドレインです」デスドレインは暗黒物質の隆起に寝転がったまま面倒そうにアイサツを行う。彼は何らかのジツによって抑え込まれている己のアンコクトンを見て舌打ちし、レツノスケを睨み付けた。

「……ドラゴンチックです」ドラゴンチックは両手を合わせて丁寧にアイサツを返す。だがその瞳に籠められたレツノスケへの警戒心は強い。レツノスケはその視線に気付き、鼻を鳴らす。

「まさか、我々のターゲットと遊んでいたのが貴様とはなドラゴンチック=サン。妙なところで縁があるものだ」「ターゲット?」その言葉にドラゴンチックは横目でデスドレインを見た。話題に上げられた当の本人はどうでも良さそうに耳をほじっている。

「あまりこちらの事情について話すのもどうかと思うが……とにかく私が用があるのはそっちのデスドレイン=サンだ。こちらに引き渡してもらう」ドラゴンチックはレツノスケとデスドレインの顔を交互に見て「別にあたしの許可を求めなくっていいけど」カラテを構えたまま冷たく言った。

「ア?なに?お前ら知り合いか?だったらひでえじゃねえか!俺を仲間外れにしてイジメねえでくれよ!」「「イヤーッ!」」ドラゴンチックとレツノスケは足元に忍び寄っていた暗黒触手を跳躍回避し、デスドレインを挟み撃ちする形で陣取った。

「ドラゴンチック=サン。実際、お前に対する殺害指令のノーティスも受け取ってはいるが」レツノスケは腰に佩いていたカタナを鞘から引き抜く。刀身がエンハンスによって赤く輝き、スライムめいてわだかまるアンコクトンを僅かに退かせた。レツノスケはカタナの切っ先をデスドレインに突きつけ、宣言する。「私は今受けている任務を優先する。つまり、コイツの始末をな」

「……そんなこと言ってアブハチトラズを狙ってるんじゃ」「ツー・ラビッツ・ノー・ラビット。意味が分かるかネオサイタマ民。慎重になるのも分かるが、疑いだすとキリが無いとミヤモト・マサシも言っているぞ」「……」キョート貴族らしい教養と皮肉をふんだんに含んだ言葉で諭され、ドラゴンチックはメンポの下で口を尖らせた。

「へへへ……まったく、本当にひでえなあ……始末だのなんだのと、物騒なことをよ」2人の様子を見ていたデスドレインは暗く笑い、ゆらゆらと幽鬼めいて身体を揺らした。

「俺はよ……降りかかってきた火の粉を払っただけだぜ?言うこと聞かなきゃ殺すとか、闇の秩序がどうとか、最初にやってきたのはザイバツの方さ……今だってそこのお嬢ちゃんがいきなりカラテしてきやがったから、俺は正当防衛しただけだぜ……被害者は俺の方じゃねえか……へへへ」

「新聞……」「アー?」ドラゴンチックの呟きにデスドレインはおどけるように耳に手を当てた。「ちょっと前に見た新聞にあなたの顔写真が載ってた。ゴトー・ボリス被告。死刑判決。裁判所が血の海になった。そんな物騒なことばかり書かれた記事と一緒に」

 ドラゴンチックの装束と瞳に熱が走り、車両内の気温が上がる。「それも正当防衛?死刑判決も誤審?」「……へへへ」デスドレインは顔を俯かせ、ニヤニヤと笑う。列車の揺れでアンコクトンの表面に波が打ち、ゼリーめいて震えた。

「本当にひでえなあ……そうやって決めつけて……上から目線で……」デスドレインの肩が微かに上下し、鼻を啜る音が車両内に響く。「俺の両親もそうだったぜ……テストで一番を取らなきゃすぐ体罰でよお……俺はそんな環境が嫌で家出して……ヤクザに拾ってもらって……エート、その後はどうすっかな?」デスドレインは首を傾げた。「なあ、どんな設定がウケル?」

イニシアチブ
デスドレイン→ドラゴンチック→ロンダイジ・レツノスケ

「「イヤーッ!」」ドラゴンチックとレツノスケが同時に踏み込む!これはデスドレインにとって前門のタイガー、後門のバッファローの形だ!「アンコクトン・ジツ!」SPLAAAAASH!KRAAAAASH!地面の暗黒物質が火山めいて噴き上がり、荷物車両の屋根を吹き飛ばす!「アバヨ!ヘヘハハハハ!」デスドレインは暗黒物質に乗って天井に空いた穴から外へと逃げる!

「イヤーッ!イヤーッ!」ドラゴンチックはアンコクトンの壁を垂直に駆け上る!カラテとニーハイブーツの高熱が暗黒物質を凝固させ、足を取り込まれるのを防いでいるのだ!「めんどくせェ!イヤーッ!」デスドレインは指先から暗黒物質を放出!黒い雨がドラゴンチックの頭上に降り注ぐ!

「イヤーッ!」だがアンコクトンがドラゴンチックを濡らす直前、彼女の頭上に透明のドームめいた力場が発生し、暗黒雨を滑らせた!レツノスケのキネシス・ジツだ!「それ以上近付くんじゃねェー!」デスドレインは吐き出した暗黒物質を掌の中で凝縮!凝縮!爆発寸前のニュークめいた暗黒爆弾を形成し、バリアを破ろうとする!

「ドラゴンチック=サン!」「!」レツノスケはドラゴンチックに声掛けを行い、ジャンプ!「イイヤアーッ!」キネシスによって飛距離を伸ばしたその跳躍はアンコクトンの山脈を飛び越え、ドラゴンチックの元へ一足で到達した!

「イイィヤァーッ!」ドラゴンチックは……レツノスケに向かって空中サマーソルトキックを繰り出す!バカな!いくら味方ではないとはいえ、この局面でデスドレインではなくレツノスケを攻撃するなど!

「イイヤアーッ!」否、そうではない!レツノスケは足裏でドラゴンチックのキックを受け止めると、発条めいて折りたたんだ膝を一気に伸ばし、デスドレイン目掛けロケットめいて突撃したのだ!「やべ……!」デスドレインはほんの刹那の時間、手に持った暗黒爆弾を攻撃に使うか防御に回すかの判断に迷う。

「……イアイ!」「グ、グワーッ!」そしてその一瞬が命取りであった!赤いエンハンス光を纏ったカタナが流星めいた煌めきを空に残し、デスドレインの首に赤色の線が走る!「オゴーッ!」切断面からコールタールめいた黒色の血が溢れ出し、デスドレインの頭部が落下する!

「イヤーッ!」レツノスケはデスドレインの頭に手を伸ばし、キネシスで引き寄せた。そして片手で生首を持ったまま車両の屋根に三点着地を決める。「よく咄嗟に合わせてくれたな。助かったぞ」彼は既に屋根の上にいたドラゴンチックに感謝の言葉をかけた。

「まあ、状況判断かな」ドラゴンチックは何処か誇らしげに言った。その様子を見たレツノスケは思わず苦笑する。彼は視線を落とし、いまだ痺れの残る自分の足をちらりと見た。(私も実戦経験を積み、ワザマエを磨いてきたつもりだったが)視線を目の前の少女に移す。

(先程のサマーソルトキックは凄まじいものだった。この女、いったいどれだけのイクサを潜り抜けてきたのか……このまま生かしておけば、間違いなくギルドの脅威となる)レツノスケはそこまで考え、頭を冷やすように首を左右に振った。

(イクサの熱に当てられたか。私の任務はあくまでもデスドレインの討伐。それ以上のキンボシを上げようとするのは奥ゆかしさを欠いた強欲だと判断されかねん)ここは互いに見逃し合うべきであろう。レツノスケはそう結論付けた。

「あれ?なんだよ。おっ始めねえの?」ドラゴンチックが息を呑む。レツノスケが目を見開く。2人の視線がレツノスケの持っている生首に集まる。「つまんねえな!イイ子ちゃんぶっちまってよお!もっとアゲていけよ!」デスドレイン。平然と喋っている。首だけで。

「イヤーッ!」「ヌウーッ!?」デスドレインの口と首の切断面から暗黒触手が伸びる!レツノスケは咄嗟に生首を投げ捨てた!「ヘヘヘハハ!バーカ!ビビッてやがんの!」デスドレインは暗黒触手を器用に操り、離れた位置にあった自分の肉体を回収!首と胴体の切断面を繋ぎ合わせる!「ハイ元通りッと!ヘヘヘハハハ!じゃ、今度こそアバヨ!」

 ナムサン!なんたる不死身性!デスドレインは何事もなかったかのように立ち上がり、そのまま背を向けて逃走を開始した!「ヌウゥーッ!」レツノスケはデスドレインの爆発四散を確認しないまま悠長に構えていた己のウカツにセプクしたいほどの憤怒を覚え歯噛みする!

「ボサッとしない!追いかけるよ!」「!……言われずとも!」即座にデスドレインの後を追って駆けだしたドラゴンチックに檄を飛ばされ、レツノスケも間を置かず走り出した!

◇4ターン目
デスドレインアンコクトン触手→レツノスケ3ドラゴンチック3:
16d6>=4 = (6,6,3,3,1,5,3,4,1,3,5,4,4,5,3,6 :成功数:9)
デスドレイン精神力10
ドラゴンチック回避:
15d6>=5 = (4,4,4,6,3,5,1,1,3,2,2,6,4,2,5 :成功数:4)
レツノスケ回避:
10d6>=5 = (4,1,5,4,6,5,1,2,2,2 :成功数:3)

ドラゴンチック連続側転:
9d6>=4 = (1,6,1,5,5,5,6,3,3 :成功数:5)
ドラゴンチックトライアングルリープ:
5d6>=4 = (5,5,1,5,3 :成功数:3)
+5d6>=4 = (6,1,3,3,3 :成功数:1)
+4d6>=4 = (4,3,4,3 :成功数:2)
デスドレイン回避:
3d6>=5 = (1,2,2 :成功数:0)
+3d6>=5 = (6,5,1 :成功数:2)
+3d6>=5 = (2,5,1 :成功数:1)
デスドレイン体力3

レツノスケカラテ・エンハンスメント:
12d6>=3 = (5,6,6,5,5,4,4,2,1,5,2,3 :成功数:9)
レツノスケ精神力11
レツノスケ精密攻撃→デスドレイン:
7d6>=4 = (5,1,4,6,2,5,3 :成功数:4)
+7d6>=4 = (2,5,4,4,4,1,5 :成功数:5)
デスドレイン回避:
2d6>=5 = (6,6 :成功数:2)
+1d6>=5 = (1 :成功数:0)
デスドレイン体力1


◇5ターン目

ヴァルナ、ネクロマ:2d12 = (3+12)
ガンドー:1d5 = (5)+7 = (7)合計値:12
ガンスリンガー:1d5 = (5)+7 = (7)合計値:12

ガンドーがネクロマとガンスリンガーとマケグミ・クラスで遭遇
◇5ターン目
デスドレインは撤退

戦闘終了
※デスドレインは他の車両に逃げてモータルたちを殺し回ろうとする。
※ドラゴンチック、レツノスケはダイスを振らずに追跡が可能。

 その頃、マケグミ・クラス車両の一角に身を潜めていたガンドーはとうとう警備員に呼び止められ、厳しい尋問を受けていた。

「なあ、頼むぜ警備員=サン。隣にいる知人に薬を届けなくちゃいけねえんだ。もしも万が一のことがあったらあんたの責任問題に」「そうやって様々な手口で車両を移動し続ける白髪の大男がいるという連絡がありました。何か心当たりは?」「エートだな……」

 ガンドーは頭を掻きながらニューロンを高速回転させる。ZBRの助けが欲しいが、警備員が目の前にいてはそうもいかない。どうしたものかと考えを巡らせていた……その時であった。

「ヘェーヘェーヘェー……その知人っていうのは俺の事だよ、警備員=サン」「アイエッ!?」突如、警備員の背後から声が聞こえた。警備員は肩を跳ね上がらせ、小さくハンズアップした。ガンドーや周囲の乗客からは見えなかったが、彼の背中には拳銃の銃口が当てられていたのだ。

「そういう訳だから、通してやってくれよ。……行け」「ハ、ハイヨロコンデー!」警備員はギクシャクとした動きで足早にその場から去る。間に立っていた警備員が退いたことで、ガンドーからも声の主の姿が見えるようになった。「……テメエは!」ガンドーの心臓が跳ね上がった。

 ガンドーはその男を知っていた。当然、その男もガンドーを知っていた。男はガンドーの反応を楽しむように観察した後、もはや待ち切れないとばかりにアイサツした。「ヘェーヘェー……ドーモ、タカギ・ガンドー=サン。ガンスリンガー……いや……スズキ・キヨシです」

アズ・ザ・クロウ・アンド・ドラゴン・フライズ(その11)へ続く