見出し画像

忍殺TRPGソロシナリオ【ニンジャとヨタモノ】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事は私がニンジャスレイヤー本編を元に二次創作したニンジャスレイヤーTRPGの非公式シナリオとなります。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 なお本記事はニンジャスレイヤーの話を元に作成した二次創作物であり、ニンジャスレイヤー本編、実在の人物・団体とは関係ございません。至らぬ点が多々あると思いますがご容赦くださいませ。

◆シナリオ難易度

 本シナリオについては作成直後のモータルPCによるプレイを想定しています。そのため「ニンジャスレイヤーTRPG」に不慣れな人には少し難易度が高いかもしれません。
 シナリオの傾向としましてはPCはアウトロー側の存在であり、カルマ的には善性ではなく邪悪よりのロールプレイが主軸となっております。ただし難易度調整及びキャラデータの変更については常識の範囲内で自由に改変してプレイしてください!

◆こちらの記事について(利用規約)

 こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGで遊ぶ際に使用するソロシナリオであり、非公式の二次創作物となります。

 仮にプレイした記事をネット上などで公開する際には非公式のものであるということを明らかにする目的も含めてこちらの記事へのリンクを添付する、引用元として明記するなどしてください。また、「ダイハードテイルズ」公式以外による無断の商用利用は法的に認められた例外を除いて原則不可とさせていただきます。

 当記事の内容は予告なしに変更される場合があります。

 また、当記事の内容に改変を加えたシナリオなどを作成することは自由に行ってください。ただし、その場合も非公式のデータであるということ、ニンジャスレイヤーTRPGの二次創作物であるということは明記をお願いします。

 以上の利用規約を守っていただければ、この記事が公開されている限りはニンジャスレイヤーTRPGを遊ぶ時に当記事のシナリオをご自由に使用していただけます。

◆シチュエーション

 犯罪都市ネオサイタマの中でも取り分け治安の悪いツチノコ・ストリート。裏社会の住人である君はとあるビズのためにこの暗黒街の一角に訪れていた。指定された時間と場所に車で向かい、ハック&スラッシュを終えたチームを回収し、安全地帯まで送り届けていくらかのカネを貰う。それだけの簡単なビズだ。

 だが、約束の時間に現れ、車に乗り込んできたのは、返り血を浴びたニンジャであった。

◆キャラクター作成

 まずはあなたが動かすキャラクターを作成しましょう。下記の記事を参考にダイスを振ってください。

 注意点として今回の主人公はモータルであり、ジツは持てませんし『連続側転』『アドレナリン・ブースト』『カウンターカラテ』のスキルは自前で所持していませんし、スリケンも投げられないので装備が無いと射撃も出来ません。ですがキャラクターの特徴づけとして連続側転が出来たり最初から銃を持っていたりするのはご自由にどうぞ。

 あなただけのネオサイタマ民が出来ましたか?それでは本編へどうぞ。

◆本編

◇シーン1:裏路地での出会い

 犯罪都市ネオサイタマの中でも取り分け治安の悪いツチノコ・ストリート。裏社会の住人である君はとあるビズのためにこの暗黒街の一角に訪れていた。指定された時間と場所に車で向かい、ハック&スラッシュを終えたチームを回収し、安全地帯まで送り届けていくらかのカネを貰う。それだけの簡単なビズだ。

 約束の時間3分前、君は車が1台どうにか通れるほどの狭い路地裏に車を停めた。バンパーが接触して倒れたゴミバケツから腐ったマグロの頭が転がり落ち、錆びたシャッターで閉じられた店舗に掲げられたネオン看板の上で埃を被ったフクスケが空虚な瞳で地面を見下ろしている。君は運転席で暇を潰しながら顔も名前も知らないスラッシャーたちの到着を待つ。

 3分後、後部座席のドアをノックする音が聞こえた。……はて、路地裏は暗いとはいえ、誰かが近付いてきてもすぐに分かる程度の注意は払っていたはずなのだが。とにかく君は頭を切り替え、油断無きアウトローの顔付きとなる。こういう仕事はナメられたら面倒だからだ。

 君は後部座席のドアのロックを解除し、相手に入ってくるよう促した。もしもケチな車上荒らしや強盗だった場合は返り討ちにして、逆に有り金を全部奪ってやろうと考えながら。しかし、いつまでたってもドアが開く様子は無い。浮浪者か何かの悪戯だったのだろうか?

「オイ、はやく車を出せよ」助手席から声がした。君は心臓が破裂するほどに驚愕し、バネ仕掛けめいた勢いをつけて首を向ける。そこにはいつの間にか一人の男がくつろぐように座っており、君に空虚な瞳を向けていた。

「ドーモ、俺は……アー……マッドゴーストです」男は今適当に思い付いたような名を名乗った。その服は明らかに致死量と思われる量の血で濡れているが、男は平然としている。つまり返り血だ。顔の下半分には何かの布の切れ端が巻かれており、口元が見えない。男はニンジャだった。

 ここでPCは【精神力】の値を用いた【難易度:NORMAL】の判定を行う。

判定成功時:ニンジャ!ニンジャナンデ!君はNRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を発症しそうになりながらも、辛うじてこみ上げてくる吐き気や失禁をこらえた。「なんだ、平気なのか?」マッドゴーストは懐から取り出したZBRアドレナリン注射器を眺め、「じゃあこれ、やるよ」震える君に手渡してきた。
 PCは『ZBRアドレナリン注射器』を入手し、次へ向かう。

判定失敗時:ニンジャ!ニンジャナンデ!君はNRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を発症し、嘔吐失禁した。「……」マッドゴーストは懐から取り出したZBRアドレナリン注射器を取り出し、君の首筋に乱暴に注射した。「はやく車を出せよ」マッドゴーストは繰り返す。
 次へ向かう。

 どうにか正気を取り戻した君は慌てて車を路地裏から発進させた。重金属酸性雨で出来た水溜まりを跳ね上げ、道の真ん中でラリっていた薬物中毒者を轢殺し、車はネオンの海を進んでいく。

 隣に座るマッドゴーストは一体何が楽しいのか、窓の外を眺めながら調子外れな鼻歌を歌っている。一方の君は気が気ではない。簡単なビズのはずが、どうしてこんなことに?

「簡単なビズのはずだった」君はぎくりとしてマッドゴーストにぎこちない動作で視線を向ける。「チンケな中小企業のビルにスラッシャー2人、スモトリ1人、オイランハッカー1人。まあ失敗するわけがない戦力だった」彼は窓の外の流れる景色を見ながら語り始めた。どうやら怪しげな力で君の心を読んだわけではないようだ。

「俺とは別のスラッシャーは電子戦争から使っているとかいうパルスダガーを獲物にしていて、スモトリの奴は昔リキシ・リーグ直前まで行ったなんて吹いてやがった。俺は任務の成否より、取り分が増えるように誰か死んでくれないかなんて思ってたよ。だが……まあ色々あって俺たちは全滅した」

 君は運転しながらマッドゴーストの言葉の合間合間に相槌を入れる。不興を買えば、何をされるか分からない。「俺も死んだと思ったが……気付けばニンジャになって生き返っていた。それから……まあ色々あって今に至る」
マッドゴーストは会話に飽きたのか、そこまで言って口を閉じた。車内に痛々しい沈黙が流れる。

 ……やがて君たちを乗せた車は事前に指定されたポイントである廃倉庫に到着した。「ご苦労だった」車を降りると恰幅のいいサラリマン風の男が君たちを出迎え、ねぎらいの言葉をかけた。その後ろにはマシンガンを持ったクローンヤクザが2人。後は報酬をもらって帰るだけだ。「イヤーッ!」「「「アバーッ!?」」」

 ニンジャ動体視力を持たない君にはサラリマンたちの首が独りでに吹き飛んだかのように見えた。実際には、マッドゴーストの放ったボトルネックカットチョップがサラリマンたちの首を刎ね飛ばしたのだ。カタナに付いた血を払うかのように腕を振るうマッドゴーストを見て君は腰を抜かし、尻餅を突いた。殺される!

 しかし、命乞いをしようとした君が眼中に無いかのようにマッドゴーストはサラリマンたちの死体の懐を漁り始めた。「……約束のカネも、振り込み用の携帯UNIXも持ってない。やはり嵌められたのか……」マッドゴーストはぶつぶつと呟きながらサラリマンの持っていた財布から万札を抜き取り、その一部を君に投げた。

「じゃあな」その言葉を最後にマッドゴーストは闇の中に溶けるように消えていった。君は彼に渡されたカネを手にしばらく呆然としていたが、やがてふらふらと立ち上がり、家路についた。

 次のシーンへ向かう。

◇シーン2:宴の余興

 カネモチ・ディストリクト八番街。カチグミ・ワナビーが集うこの繁華街の一角にある暗黒クラブにて、非合法のドラッグが扱われるカクテルパーティーが開かれているらしい。その情報を掴んだ君は裏の伝手で招待状を入手し、パーティー会場へと潜り込んだ。カネの臭いを嗅ぎ取ったのだ。

 いくつかあるテーブルの上には色とりどりのアルコール飲料の入ったグラスの他に、クラッカー・スシやフルーツの盛り合わせといった軽食と共に怪しげな液体の入った注射器が並んでいる。そしてカチグミ企業の子息やその友人と思われる若者たちがカクテルやスシに舌鼓を打ちながら注射器を使い回してトリップする。これもマッポーの世の一側面だろうか。

 君はスシを摘まみながらカモになりそうな相手を物色する。頭の悪いボンボンに3級品のドラッグを売りつけてやってもいいし、カチグミの親からカネを引っ張ってくるパイプにしてやってもいい。頭の中で算盤を弾きながらパーティー会場を歩いていると、部屋の最奥にあるソファに座る男の姿が目に入る。君は手に持ったグラスを取り落としそうになる。

「エー?主催者=サン、ナンデメンポしてるのー?ヤバーイ」「スゴイニンジャじゃん。ヤバーイ」「ニンジャヤバーイ。主催者=サン、ヤバーイ」目の焦点と呂律が怪しいカチグミ子女たちに取り囲まれながら、その男は頬杖を突いて退屈そうにカクテルを飲んでいた。

 鉄紺色の生地に紅色をドリッピングしたようなニンジャ装束にメンポ。間違いない。かつて君が出会ったニンジャ、マッドゴーストだ。この男が主催者だと?このパーティーの?そんな偶然があるのだろうか?

 何も見なかったことにして逃げるべきか、それともあえて話しかけるべきか、君がどうしたらいいか分からず足踏みをしていると「イェー!ヤッテッカー!」アルコールとドラッグの力で気を大きくした無軌道学生が輪の中に飛び込み、グラスに入ったカクテルをマッドゴーストの顔面にぶちまけた。

「アハハー!ヤンバーイ!」「ダイジョブー?ヤバーイ!」周囲の女たちは何がそんなに楽しいのか、けらけらと笑っている。「……」カクテルを浴びせられたマッドゴーストは──何故かその身体には一滴の水分すら付着していなかったが──見ていて寒気がするほどの無表情だ。

 数分か、あるいは君が長く感じただけで実際には数秒かの沈黙を経て、マッドゴーストはゆっくりと口を開く。「おい、誰かコイツを殺せ」彼は酩酊して前後不覚となった無軌道学生を指差し、言った。「エー?殺せ?ナンデー?」無軌道学生はへらへらと笑っている。

「武器ならあるぞ。どうだ、誰かやってみないか」「エー!?ヤンバーイ!」「主催者=サン、刺激的でカッコイイー!」「私やっちゃおっかなー!」マッドゴーストは騒ぐ女たちを視界から外すように顔を横に向けた。そして、その先に立っていた君と目線が合う。

「そこのお前、やるか?」マッドゴーストは君のことを覚えていたのか、それとも覚えていないのか、君に年季の入ったパルスダガーを差し出しながら尋ねてきた。「殺されちゃうよー。ヘヘェー」無軌道学生はへらへらと笑っている。今なら簡単に殺せるだろう。君はマッドゴーストからダガーを受け取る。

 ここでPCは【カラテ】か【ワザマエ】の値を用いた【難易度:NORMAL】の判定を行う。

判定成功時:君は無軌道学生の口を押え、喉を裂いた。無軌道学生は夥しい量の血を首の傷から流しながらあっけなく絶命した。女たちが面白そうに騒ぎ立てる。「ハハハ……」マッドゴーストは義務的に笑う。「そのダガーはお前にやるよ。プレゼントだ」君はその言葉に有難く甘えることにして、パルスダガーを懐にしまう。
 PCは『パルスダガー』を入手し、次へ向かう。

判定失敗時:マッドゴーストはまごつく君を見て溜息を吐き、君の手からダガーを奪うと無軌道学生の脳天に突き刺した。無軌道学生は夥しい量の血を頭部から流しながらあっけなく絶命した。女たちが面白そうに騒ぎ立てる。「ハハハ……」マッドゴーストは義務的に笑い、ソファに座り直すと、退屈そうにカクテルを飲む作業へと戻る。
 次へ向かう。

「退屈だ」喧騒の中、マッドゴーストの口から漏れた呟きが、君の鼓膜に妙に響いた。

「カネも、サケも、女も、クスリも、暴力も……何もかもが俺を通り過ぎていく……退屈だ」マッドゴーストは空虚な瞳で馬鹿騒ぎする若者たちを眺めている。その瞳は彼らを嘲笑しているようにも、羨んでいるようにも見える。いや、あるいは何も感じていないのかもしれない。

「俺はイカれちまったのか……それとも俺はとっくに死んでいて、生者のフリをしてるだけなのか……」マッドゴーストはそこで口を閉じ、ソファに座ったオブジェのように動かなくなった。もう会場の誰もがこのパーティーの主催者であり、ニンジャでもある彼のことを気にも留めていない。

 君はその様子に何を感じたか……その思いは胸の内に秘めることにした。君は何も言わずにその場から離れ、パーティー会場を後にした。

 次のシーンへ向かう。

◇シーン3:兵器の横流し

 仲介人の甘言など信じなければよかった。君は自分のウカツさと眠りこけているブッダに対する呪いの言葉を吐き捨て、身を隠している廃屋から僅かに顔を出す。BRATATATATA!途端に無数の弾丸が放たれ、そのうちの一発が君の眼前数センチ先を通り過ぎる。君は慌てて顔を引っ込めた。

 ネオサイタマ郊外にて行われる暗黒メガコーポが開発した試作兵器の実施テスト。そこに奇襲をかけ、兵器を奪い取るというシンプルな作戦。君のチームに与えられた役割は陽動だった。軽い挑発で敵の注意を引き付け、その間にメインの戦力が事を済ませる。そういう算段だった。

 だが実際には先に全滅したのは主戦力のチームであり、君のチームも君を除いて全滅させられた。どこからか情報が漏れていたとしか思えないが、その犯人が死んでいった他の傭兵たちの中にいるのかどうかも最早分からない。唯一確かなのは、このままでは君も死ぬ可能性が高いということだ。

 KRAAAASH!爆風によって君は身を隠していた廃屋から弾き飛ばされてしまった。君は地面をブザマに転がり、激痛のあまりその場で蹲る。君は慌てて身を起こそうとしたが「そこまでだ。コソ泥めが」銃を持った兵隊たちに取り囲まれ、ハンズアップした。

 君は手持ちのカネや雇い主の情報、プライドを捨ててのドゲザなど持ちうるすべてを手札に命乞いをする。しかし「薄汚い傭兵の命乞いなど聞く耳持たん。構え!」メガコーポ兵の隊長が無慈悲に切り捨て、一斉射撃命令のために片手を上げた。

 あの手が振り下ろされた瞬間、君は死ぬ。そしてそれはほんの数秒先に訪れる確実な未来だ。君の脳裏に過去の映像が時系列順に浮かんでは消えていく。人が死ぬ間際に見るというソーマト・リコール現象だ。君はあのニンジャが、マッドゴーストが言っていた言葉を思い出した。死んだと思ったら、ニンジャになって蘇っていたという言葉を。

 自分も運が良ければニンジャになれるのだろうか。そしてそれは本当に幸運なことなのだろうか?「撃……」隊長の手が振り下ろされる。君がすべてを諦めかけた……その時である!「イヤーッ!」「グワーッ!?」隊長の脳天に鉄製の十字武器……スリケンが突き刺さり、隊長は額から血を吹き出して転倒した!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」敵陣の間を色付きの風が通り過ぎる度にメガコーポ兵たちの悲鳴が上がり、鮮血が舞う。君はこの光景に覚えがあった。ニンジャだ。ニンジャの仕業だ。これはニンジャのカラテだ!

「アイエエエエ!」「撃て!撃てーッ!」BRATATATA!「イヤーッ!」ニンジャはメガコーポ兵たちの闇雲な射撃を連続側転で回避し、廃屋の屋根の上に飛び乗った。そして両手を合わせ、場の空間を支配するかのようなアイサツを繰り出した。「ドーモ、マッドゴーストです」

 アイサツからコンマ5秒後!「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」マッドゴーストは再び一方的な蹂躙を開始した!

「ウワーッ!」「アイエエエエ!」BRATATATA!兵隊たちも反撃するが、弾丸はまるでユーレイのようにマッドゴーストをすり抜ける!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」このままいけばメガコーポ兵たちの全滅は時間の問題……君がそう考えた、その時である!

「クオオオー!」「グワーッ!?」奇怪な咆哮を放つ黒い獣のアンブッシュがマッドゴーストを捉え、地面に叩きつけた!「データベース照合完了。共有完了。ドーモ、マッドゴースト=サン。ドラグーンです。シリアルナンバーは非公開です」

「……ドーモ、マッドゴーストです。試作兵器とやらのお出ましか」体勢を立て直したマッドゴーストは黒い獣……宇宙的シルエットを持つロボットとアイサツを交わし、戦闘を開始した。

 ニンジャとロボット、人外同士が繰り広げるイクサの戦況は……君が見る限り、マッドゴーストがやや優勢だ。最初のアンブッシュで受けた負傷が響いているのか、マッドゴーストの動きが先程と比べて精彩を欠いているが、それでも機械相手に遅れは取っていない。

 ……だが、君は気付いてしまった。「ア……アバッ……おのれ……」額にスリケンを生やした隊長が手に持ったマシンガンの銃口をマッドゴーストの背中に向けていることに!頭蓋骨にサイバネをインプラントしているのか、あるいは卓越した愛社精神故か、隊長はまだ生きていたのだ!しかもそのことにマッドゴーストは気付いていない!君は……

 ここでPCは【カラテ】か【ニューロン】か【ワザマエ】の値を用いた【難易度:HARD】の判定を行う。

判定成功時:「アバーッ!」君はほとんど反射的に隊長を攻撃し、銃撃を阻止した。「イヤーッ!」「アバーッ!」マッドゴーストはドラグーンとの戦闘に勝利し、ザンシンを行う。「……どうやら、お互い助けられたようだな」マッドゴーストは隊長の死体と君を交互に見てそう言った。 
 PCは『◉突撃』『◉アドレナリン・ブースト』『◉シャープシューター』のうちいずれか1つを入手し、(どの判定で成功しても自由に習得するスキルを選択してよい)次へ向かう。

判定失敗時:「グワーッ!」君はほとんど反射的に隊長を攻撃し、銃撃を妨害した。「イヤーッ!」「アバーッ!」マッドゴーストはドラグーンとの戦闘に勝利し、「イヤーッ!」「アバーッ!」隊長にスリケンを投擲してカイシャクした。「……どうやら、お互い助けられたようだな」マッドゴーストは隊長の死体と君を交互に見てそう言った。 
 次へ向かう。

「他の奴らは……全員死んだようだな。生きているのはお前だけか」君とマッドゴーストは見晴らしのいい平野の上、1対1で対峙する。「どんな気分だ?絶体絶命の状況で、1人生き残るというのは?ソーマト・リコールは見たか?サンズ・リバーは?」

 君は胸の内の感情を素直に吐露する。「そうか」マッドゴーストは端的にそう返した。君の言葉に共感が出来なかったのだろうか。あるいは、どうでもいいと思っているのだろうか。それは分からない。

「……傭兵派遣用の違法IRCチャンネルを見て回って、目に付いたいくつかの任務に首を突っ込んでみたんだ。ツジギリだとか、拉致だとか、密輸だとか、兵器の奪取だとか……まあ、色々とな」マッドゴーストはおそらくここに来た理由を語っているのだろう。君は黙って耳を傾ける。

「頼まれてもいないのに仕事を勝手に済ませたり、妨害したり、撹乱したり……おかげで俺もめでたく賞金首になった。そのうち殺されるだろう。暗黒メガコーポかどこかがデリバリーしたニンジャの手で」暗黒メガコーポのニンジャ?ニンジャとは何人もいるのか?君はその事実に戦慄を覚える。

「そこでなんだがな……ここで会ったのも何かの縁だ。ひとつ、頼まれてくれるか」マッドゴーストはじっと君の目を見る。あの日、彼と初めて出会ったときに見た空虚な瞳に、君の姿が映っている。

「ネオサイタマの死神と呼ばれるニンジャ。そいつに会いたい。協力してくれ」

 次のシーンへ向かう。

◇シーン4:死神の調査

 マッドゴーストの語るところによると、このネオサイタマにはニンジャが大勢潜んでおり、しかも組織として活動しているらしい。一般人……君のようなモータルたちはその事実を知らずにいるだけなのだと。俄かには信じ難いが、おそらくは真実なのだろう。君は眩暈を覚えた。NRSの初期症状だ。

 とはいえ、すべてのニンジャが何らかの組織に属しているという訳ではないらしい。中にはフリーランスとして活動するニンジャもいれば、根無し草の野良ニンジャもいる。そして、組織に疎まれるような狂ったニンジャも。
「それがネオサイタマの死神と呼ばれるニンジャだ。お前はそいつとどうにかコンタクトを取ってもらいたい。無論、報酬は渡そう。どうだ」

 マッドゴーストの言葉に、君はいくつかの疑問を投げかける。何故、そんなことを依頼するのか?ネオサイタマの死神とはどんなニンジャか?君に危険は無いのか?死神に会ってどうするつもりなのか?自分でコンタクトを取ればいいのでは?君は思いつく限りの質問を並べ立てる。マッドゴーストは「まあ……色々だ」やる気なくそう答えた。君は肩を落とす。

「それで、どうなんだ?やるのか、やらないのか?」今までの説明でどうしてやると思うのか、君はそう言ってやりたかったが……熟考の結果、君はこの頼みを引き受けることにした。「そうか」マッドゴーストはどうでもよさそうに答える。

 冷静に考えてみれば、ニンジャであるマッドゴーストがわざわざ君を嵌めたりする意味が無いし、断ったりすればモンドムヨーで殺されてもおかしく無い。つまり引き受けるしか選択肢は無いのだ。君はマッドゴーストと連絡先を交換し、その場は別れることにした。さあ、死神の調査を開始しよう。

 ここでPCは【ニューロン】か【ワザマエ】の値を用いた【難易度:NORMAL】の調査判定を行う。

◆ネオサイタマの死神の調査に対する修正(上限+2まで):
最も適した知識スキル(+2):
ソウカイヤ
次に適した知識スキル(+1〜2):ザイバツ、アマクダリ、独立小組織(ニチョーム、シマナガシ、サヴァイヴァー・ドージョー、INW、ドラゴン・ドージョーなど)

判定成功時:調査の結果、君は『YCNAN』と名乗る謎のハッカーとIRC上で接触することに成功し、ニンジャスレイヤーが潜伏している場所の情報を掴んだ。そのことをマッドゴーストに伝えると「そうか」と、どうでもよさそうな返答。それと同時に君の口座管理UNIXからキャバァーン!と電子音が鳴る。君が確認すると、口座には【万札:10】が振り込まれていた。マッドゴーストは律義に約束を守ったらしい。君は安堵の息を吐いた。
 PCは【万札:10】を入手し、次のシーンへ向かう。

判定失敗時:残念ながら君の調査能力ではネオサイタマの死神の情報を手に入れることは出来なかった。そのことをマッドゴーストに伝えると「そうか」と、どうでもよさそうな返答と共に通信が切られる。その後、君はマッドゴーストと二度と出会うことは無かった。

 ……あれから数日後。君はビズの現場に向かうための車を運転しながらぼんやりと考える。マッドゴースト、彼は君が見た幻覚だったのだろうか。それとも、サンズ・リバーを渡り損ねて現世に戻ってきてしまったユーレイだったのであろうか。

 このまま裏社会でのビズを続けていれば、いつかまたニンジャと出会う時が来るのであろうか。あるいは、君自身がニンジャになることも……。君はルームミラーに映る自分の瞳を覗き込む。少なくとも、その目にはまだ光が宿っていた。
 シナリオ終了となります。お疲れさまでした。

◇シーン5:エンディング

「それで、死神は何処にいる?」マッドゴーストの質問に対し、君は……

 ここでRPを挟み、シナリオは終了となります。お疲れさまでした。与えらえる余暇は【4スロット】となります。

 マッドゴーストに対しPCが何と答えるか、どのように行動するか、その結果何が起きるかは自由に決めてください。

 素直にマルノウチ・スゴイタカイビルにマッドゴーストを送っても良し、暗黒メガコーポに賞金首であるマッドゴーストの情報を売っても良し、彼についていってその結末を見届けるも良し、好きなようにしてしまって構いません。

 マッドゴーストのデータはありませんが、おそらく原作における【デス・トラップ、スーサイド・ラップ】に出てきたソフトマインド=サンのような一種のマバタキ・ジツめいた回避行動のジツを使用するのだと思います。データ作成時の参考にしてください。


◆後書き

 以上でシナリオは終了となります。お疲れ様でした。

 ニンジャを傍目から見るモータル目線でのシナリオが作成してみたいと思い、今回の記事を作成しました。

 ユウジョウや恋愛感情で共に歩むのではなく、恐怖や忠誠心から従うのでもなく、あくまで一歩引いた立場からニンジャを眺めるモータル、そしてモータルに眺められるニンジャを書いてみたくなったのです。なのでそこから一歩踏み出すか、逆に遠のくかは皆様に委ねたいと思います。

 それではここまで読んで下さってありがとうございました!