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忍殺TRPG小説風リプレイ【アウト・オブ・バウンズ(その2)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPG公式サンプルシナリオのマップを利用した小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◆◆◆

 ザクロの店を出たセカンドチャンスたちは先程発生した事件の現場へとやってきた。事件発生時刻は午後0時15分。犠牲者は居住区に住むペケロッパ・カルティストの女性だ。遺体は見晴らしのいい通りの上に野ざらしにされ、冷たい重金属酸性雨と通行人たちの視線に晒されている。

「ホトケには悪いが俺が遺体の回収を後回しにするよう手配させてもらった。捜査のためにな」アーコは遺体の近くで屯していた野次馬たちを追い払い、地面に横たわる犠牲者の傍にかがみ込んだ。「まあ、むしろ面倒だったのはサイバネ漁り共を追い払うことだったがよ」

 ペケロッパ・カルトの構成員は生体LAN端子をインプラントしている者がほとんどだ。浮浪者たちの中には事故死した人間のサイバネを剥ぎ取り、ブラックマーケットで売り払う者もいる。まるで死肉を貪るハイエナめいて。サバンナのような自然界であろうと、ネオサイタマのような近代都市であろうと、弱肉強食の掟は変わらない。

「ナムアミダブツ……」「みんな自分が生きるために必死なのねー……ナムナムっと」軽口を叩こうとしたセカンドチャンスだったが、静かに犠牲者を悼むメイビーを見て、慌てて自分も手を合わせた。

 その後、彼女たちは手分けして調査を開始する。はたして有力な情報は得られるであろうか?

◇◇◇

SCワザマエ目撃情報を集める
MBワザマエ遺体や周囲を調べる
AKニューロン過去の事件を調べる: 

5d6>=5 = (5,1,2,4,4 :成功数:1) +
2d6>=5 = (2,1 :成功数:0) +
4d6>=5 = (3,4,5,5 :成功数:2)
『飛来物の分析』

5d6>=5 = (3,1,1,2,6 :成功数:1)+
2d6>=5 = (2,1 :成功数:0)+
4d6>=5 = (2,2,5,6 :成功数:2)
『統計データ』

2d6>=5 = (3,5 :成功数:1)
『アジサイ・チョット・ビル』

SCワザマエAKニューロン被害者の身元を調べる:
5d6>=5 = (4,2,2,4,1 :成功数:0)+
4d6>=5 = (6,1,6,2 :成功数:2)
『被害者のメモ』GET

※3周目で成功

 セカンドチャンスは通行人や付近の住民たちに聞き込みを行うことにした。この手の調査はセカンドチャンスの領分だ。サイバネによる優れた容姿、話術、ゼゲン・ジツを駆使して情報を聞き出そうとする。しかし。

「あのお嬢ちゃんが歩いてたら、突然「ぺけろっぱ!」って叫んで倒れたんだよ。怪しい人間?さあ、見かけなかったねえ……」「俺はずっとここに座ってたけどよ。あのネエチャンはいきなり倒れたように見えたぜ。それよりも、教えてやったからカネくれよ」「知らねえ。見てねえ。分からねえ」「マッポー近し!」「ヴォイド」

「おっかしいわね……誰も犯人見てないの?」事件は遮蔽物の無い見晴らしの良いストリートで発生した。通行人もそれなりにいるため目撃者は簡単に見つかると思ったが、ここまで有力な情報は得られていない。つまり、犯人は誰にも見られずに犯行を行ったということになる。だが、一体どのような手段を用いたというのか?完全なステルス?目にも止まらぬほどのスピード?それとも……

「遠くから石ころでも投げた……?ダメだ。分からね」セカンドチャンスは天を仰ぎ、ハンズアップのポーズを取った。考える作業は彼女の領分ではないからだ。と、その時。「ん?あれは……」上を見たセカンドチャンスの視界に映ったのはあるビルの入り口に設置された監視カメラであった。

 カメラはちょうど遺体のある場所に向けられている。何か事件の手掛かりになるかもしれない。「スイマセーン、そこのカメラの映像見させていただいても?」セカンドチャンスはビルの管理者にジツを使い、事件発生時刻の映像を確認する。すると。

「……なにこれ?マジで石ころか何かがぶつかってんじゃん」映像に映っていたのは何もないところで急に倒れる被害者の姿だ。少なくとも、モータルの目にはそう見えるだろう。だが、仮にもニンジャであるセカンドチャンスの視力は捉えた。ペケロッパ・カルトの女性が倒れる寸前、彼女の後頭部に何か球状の物体がぶつかる瞬間を。

「エット、被害者があっち向いてるときに後頭部にぶつかったわけで……ってことはボールが飛んできたのは……あっちか」セカンドチャンスはカメラの記憶媒体を抜き取り(許可は取った。ゼゲン・ジツで)、集合場所へと向かう。

 犯人は投石によって被害者を殺したのであろうか?だが何のために?そしてそんなことが本当に可能なのであろうか?謎が新たな謎を呼び、セカンドチャンスを迷宮の奥へと誘っていく……。

◇◇◇

 メイビーは遺体と遺体周辺の調査を行うことにした。他に出来そうなことが無かったのもあるが、死者を悼む気持ちを持つメイビーが担当した方が良いだろうというセカンドチャンスの意見もあってそのようになった。

「シ、シツレイしまーす……」メイビーは遺体を起こし、調べ始める。目立った傷はやはり後頭部の打撲痕だろう。犯人はハンマーかなにかを彼女の頭に叩きつけたのだろうか? だが、なにか違和感がある気がする。「ウウ……ここを殴られて死んじゃったってことしか分からない……」

 仕方なくメイビーは周辺に何か手掛かりが無いか探し始める。「犯人の落とし物でも見つかればいいけど……ン?」地面に這いつくばって辺りを見回していたその時、視界の端に映る白と赤の球体。

「なんだこれ……うわっ!」手に持ってみると、それはべっとりと赤い血が付いたゴルフボールであった。「は、犯人はゴルフボールで被害者の人を殴ったのかな?変わった凶器だなあ……」兎にも角にもメイビーはゴルフボールを回収し、集合場所へと向かう。

 犯人は何故ゴルフボールなどという殺害に不向きな道具を凶器に用いたのか?そして証拠となるボールを回収せずに現場を去ったのか?謎が新たな謎を呼び、メイビーを迷宮の奥へと誘っていく……。

◇◇◇

 現場の調査を先に終えていたアーコは付近の個室UNIX喫茶を利用し、警察のデータベースをハッキングして過去の事件を調べることにした。ザクロの話では事件は数週間前から発生しているという話であるが……。

「ざっとこんなもんか」ハッキングを無事に終えたアーコはプリントアウトされる資料を見ながら紫煙を吐いた。薄い仕切りの向こうからわざとらしい咳払いが聞こえてくる。何事かと思って視線を巡らせると、『全室禁煙な』のプレート。アーコはタバコの火を自分の手で揉み消し、資料を閲覧する。

「◯月△日(火)午後0時38分 建設作業員ミコタ=サン 食事中に右側頭部に打撃を受け、即死な」
「◯月●日(金)午後0時22分 喫茶店店主バンバ=サン 来客を見送っている最中に後頭部に打撃を受け、意識不明の重体な」
「▼月□日(月)午後0時50分 無職タライケ=サン ジョギング中に胸部に打撃を受け、心肺停止。病院で死亡確認な」

 ひとまずはこのような形だ。被害者のつながりや事件の共通点を見つけることはできるだろうか……。

「ファッキンガイシャ共に共通点は見当たらねえ……それにファッキン無職ヤロウまで襲ってるってことは金目当てでもねえ……じゃあナンデだ?」アーコは指先でこめかみをとんとんと叩きながら思考を巡らせ、新しいタバコに火を点ける。薄い仕切りの向こうからわざとらしい咳払いが聞こえてくる。アーコはタバコの火を自分の手で揉み消し、もう一度資料を確認する。

(時間……事件の起きた時間はどうだ?)アーコは資料に記された事件発生時刻の違和感に気が付いた。被害者の情報には何の共通点も無いと思われたが、事件はすべて平日の午後0時過ぎに発生しているのだ!そして今回の事件も発生したのは平日、かつ午後0時15分と一致する!犯人はこの時間帯に犯行を行っているものとして間違いない!

「面白くなってきたぜ……!」アーコは新しいタバコに火を点け、UNIXのキーボードを叩く。仕切りの向こうから聞こえてくる咳払いは完全に無視だ。(0時過ぎごろに起きた事件……殺人や傷害だけじゃねえ。近辺で起きたあらゆる事件を調査するんだ……!)

 アーコの推理は当たっていた。平日の午後0時過ぎに、事件が集中して発生しているエリアで物が破壊されたり軽傷を負った被害届が出ていることがわかったのだ。(つまり、クソッタレ犯人の野郎は確実に人を殺すように動いているわけじゃねえ。このエリアでランダムに被害をもたらし、その結果で人を死なせてもどうでもいいと思ってやがり腐るわけだ!)無論、故意にやっているならば殺人と変わりはない!

「ファッキンイカレてやがるぜ……ファッキン犯人のファッキンファッククソッタレスカムシット野郎はよぉ……!」アーコは怒りのままにテーブルを拳で叩く!「ウルッセーゾコラー!さっきからタバコと騒音テメコラー…………アッハイ。何でもありません」抗議のために顔を出した隣接スペースの客はアーコの怒りの圧を前に顔を引っ込めた!

「もう少し調べてみるかよ」アーコはタバコの火を素手で揉み消し、今度は問題のエリア付近で発生したあらゆる事件について調査を始める。もしかしたら犯人は通り魔事件の他にも犯行を行っているかもしれないという考えからだ。これだけの被害者を出して平然としている犯人だ。他にも犯罪に手を染めている可能性は高い。

「コイツは……この事件について調べてるアカウントか」ネットの海の探索を続けたところ、アーコたちとは別に独自にこの事件について調査している人間のアカウントに辿り着いた。どうやら今回の連続通り魔事件は巷でもちょっとした評判になっているようだ。

 アーコはこれ幸いと調査結果のファイルを失敬する。すると、『飛来物を目撃』『オフィスビル方面』『ゴルフボールな?』『アジサイ・チョット・ビル』などのキーワードが浮かび上がった。「ファッキン・アジサイ・チョット・ビルか」アーコは自前のメモ帳に手に入れた情報を記すとハッキングを打ち切り、個室喫茶から外に出て集合場所へと向かう。

 アジサイ・チョット・ビル。そこに犯人の手掛かりがあるのだろうか?あるいは……この異常な事件の黒幕が待ち受けているのであろうか?謎が新たな謎を呼び、アーコを迷宮の奥へと誘っていく……。

◇◇◇

「つまりまとめるとォ」その後、集合場所として決めていたカラオケ店に集まった3人は、手に入れた情報を共有し事件についての推理を行った。セカンドチャンスはフリードリンクをストローで啜りつつ、メイビーの持ってきたゴルフボールを指先で弄んだ。

「アジサイ・チョット・ビルに居る犯人はそこからこのゴルフボールを投げて……いや、打って?目についた人や物をテキトーに殺して壊してる……ってことになるのね。マジひでえ」「サ、サイテーじゃないですか!」「ファッキン最低だな」導き出された犯人像にメイビーとアーコが怒りの声を上げた。セカンドチャンスのゴルフボールを握る指にも力が入る。

 アジサイ・チョット・ビルはシステム開発をメインに行っているカイシャだ。ネオサイタマではさして珍しくもない一般的な企業であり、殺人や通り魔など物騒な世界とは無縁のように思える。だがしかし。

「このボールさあ……嫌~なニオイがすんのよねえ……」「エッ?臭かったですか?そういえばゴミ捨て場の近くに落ちていたような……」「そうじゃないっつの!」「ンアーッ!」セカンドチャンスはボールを放り投げた。壁や天井を反射したボールがメイビーの額にぶつかる。

「ソウカイヤで死ぬほど嗅いだニオイよ。まあ、私たちのニオイでもあるんだけど」「ってことは、やっぱり?」アーコが身を乗り出す。「そう、ニンジャの野郎が関わってるってことね」「エエエッ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」額をさすっていたメイビーは驚きのあまり、椅子から転げ落ちた。

アウト・オブ・バウンズ(その3)へ続く