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忍殺TRPG小説風リプレイ【アウト・オブ・バウンズ(その3)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPG公式サンプルシナリオのマップを利用した小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

「このボールさあ……嫌~なニオイがすんのよねえ……」「エッ?臭かったですか?そういえばゴミ捨て場の近くに落ちていたような……」「そうじゃないっつの!」「ンアーッ!」セカンドチャンスはボールを放り投げた。壁や天井を反射したボールがメイビーの額にぶつかる。

「ソウカイヤで死ぬほど嗅いだニオイよ。まあ、私たちのニオイでもあるんだけど」「ってことは、やっぱり?」アーコが身を乗り出す。「そう、ニンジャの野郎が関わってるってことね」「エエエッ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」額をさすっていたメイビーは驚きのあまり、椅子から転げ落ちた。

「ま、気付いてみればそりゃそっか、ってカンジだわ」セカンドチャンスはコップをひっくり返し、中の氷をがりがり齧る。「ビルからゴルフボール飛ばして人の頭にブチ当てるなんて真似、ニンジャでなきゃ出来ないしニンジャでなきゃやらないわ」「フン、道理だ」アーコが頷き同意した。

「ど、どどどどうしましょう。まさかニンジャが相手なんて……」落ち着いた2人とは対照的に、メイビーは頭を抱えて慌てふためいた。彼女はニンジャでありながらニンジャとの実戦経験が皆無なのだ。

「そこなのよねえ……私もカラテ弱いからなあ……どうしよ」セカンドチャンスはニンジャ相手のイクサを経験しているが、それも別のニンジャたちと協力してのことであり、単独でニンジャを撃破したことは無い。

「そのボールに残ったニオイで敵ニンジャの強さまで分からねえのか?」「そこまではムリ。ニンジャだなあってことが分かるだけ」「ファック」アーコが悪態を吐き、タバコを咥えて火を点けた。彼女もオイランドロイドとしてモータルを凌駕する頑丈さと腕力を有しているが、手練れのニンジャが相手となれば分が悪い。

「……もし本気でヤバそうだったらザクロ=サンに頼みましょっか」セカンドチャンスの提案に他の2人も賛成の意を示した。ザクロとて命の危険を冒してまで事件を解決しろとは言うまい。いざとなれば助けを借りることも視野に入れて行動すべきだろう。

「それじゃ、私はアジサイ・チョット・ビルの人に聞き込みをしてみるわ。ゴルフをやってる人について調べればなんか分かるでしょ」「じゃ、じゃあ私はビルの中の資料を集めます……それくらいしか出来そうにないですし」「俺は裏の情報網でニンジャについて調べる。深入りは難しいが、名前と容姿くらいは掴めるかもしれねえ」

 三人はそれぞれの担当を割り振ると、意を決したように立ち上がる。その表情は硬い。単なる連続通り魔ならばともかく、敵はニンジャなのだ。彼女たちは誰が始めたわけでもなく、お互いの肩や背中を支えるように手を回し合い出口へ向かう。まるで、三人一緒ならば前に進んでいけると言うかのように。

「お客様、料金は」「ツケといて」「アッハイ」店員をゼゲン・ジツの効果で黙らせ、セカンドチャンスたちは次の調査へと向かう。ここから先はより深く、暗い闇の中……ニンジャの世界に足を踏み入れることになる。はたして、そこで何が待ち受けているのであろうか。それは現時点ではブッダのみぞ知る……。

◇◇◇

SCワザマエハズマという人物の情報を集める
MBワザマエアジサイ・チョット・ビルを調べる
AKニューロンニンジャについて調べる: 
5d6>=5 = (3,5,4,4,6 :成功数:2) +
2d6>=5 = (5,6 :成功数:2) +
4d6>=5 = (5,6,5,6 :成功数:4)

……!?全成功!

『カイカ・ソリューションのチギノ本部長』『真犯人はチギノ本部長』GET
『ハズマの権限と人となり』『ハズマのセッタイ・ゴルフ』GET
『アマクダリとの関係性』『スパロードライヴというニンジャ』GET

ゴウランガ!

 三人がカラオケ店を後にしてから数十分後、アジサイ・チョット・ビル近隣のオフィス街にオーエルめいたスーツに身を包むセカンドチャンスの姿があった。彼女はチョット・ビルを出入りする人間を捕まえては話術とジツで情報を抜き取っていく。その中でいくつかの新事実が判明した。

「ビルの責任者はカイカ・ソリューションとかいうカイシャのチギノ本部長……ソイツが部長権限で屋上にゴルフが出来るティー・グラウンドを造らせたぁ?そんなのコイツがめちゃくちゃ怪しいじゃん。つか犯人じゃん」意外なことであったが、チギノ本部長のゴルフ趣味についてチョット・ビルの人間は特に口止めをされていなかったようであり、これらの情報は簡単に入手することが出来た。

「つーか屋上からゴルフボール打ってるの見て誰か止めなさいよ。やめさせなさいよ。……いや、駄目か。本部長だもんねえ」サラリマンという生き物は上司には逆らうことが出来ないものだ。おそらくチギノに口を出せる人間はアジサイ・チョット・ビルにはいないのだろう。つまりやりたい放題だ。

「もしこのチギノとかいう奴が犯人だったらニンジャで部長で人殺しってことね。こりゃ生かしておけないわ」セカンドチャンスは手に入れた情報を携帯UNIXに入力し他の2人と情報共有を行う。メイビーとアーコは上手くやっているだろうか?

◇◇◇

 三人がカラオケ店を後にしてから数十分後、アジサイ・チョット・ビルのビル外壁にへばりつくメイビーの姿があった。「ケンソン社……ドンロン社……ハズマ……セッタイゴルフ……」メイビーはニンジャ聴力を駆使し、壁の向こうから聞こえてくる情報を元に推理を組み立てていく。

「ええと……ハズマ=サンは屋上にあるティー・グラウンドで誰かをセッタイゴルフしていて……それじゃあハズマ=サンが犯人?ウーン?」セッタイされる側ならばともかく、セッタイする側が犯人というのもおかしいのではなかろうか?メイビーは頭を捻って考え込む。

「そういえばセッタイされてる人は誰なんだろう。きっとスゴイ偉い人なんだろうけど」メイビーは手に入れた情報を携帯UNIXに入力し他の2人と情報共有を行う。セカンドチャンスとアーコは上手くやっているだろうか?

◇◇◇

 三人がカラオケ店を後にしてから数十分後、ある裏路地の奥に佇む薄暗いパブにアーコの姿があった。ここは裏社会の情勢に詳しい情報屋などが仕事に使う隠れ家的な店舗であり、アーコはかつて己が所属していた……というよりも己を所有していたヨロイオニ・ヤクザクランを抜け出す際、こうした使えそうな施設の情報を持ち出していたのだ。

『スパロードライヴ?ソイツがニンジャの名前か』『ハイ、それは』パブの個室に設置された通信用UNIX。その画面をアーコと情報屋がタイプした文章が高速で流れていく。通信傍受や盗聴の危険性を排除するためのIRC談合だ。

『スパロードライヴするない属するにどれでも特定の組織、しかし表向き保持しますの位置の重役である会社。の時間いつの事件始めました出来事一致する完璧にとの時間いつある新しい幹部だった任命されたにの組織』『了解した。情報提供感謝する』『提出する詳細』「……チッ!」

 情報屋の回りくどい言葉遣いにアーコは辟易とする。典型的なIRC中毒による言語障害だ。アーコは送られてきたデータを携帯UNIXに入力し他の2人と情報共有を行う。セカンドチャンスとメイビーは上手くやっているだろうか?

◇◇◇

「つまりまとめるとォ」その後、集合場所として決めていた喫茶店に集まった3人は、新たに入手した情報で犯人についての推理を行った。セカンドチャンスはアイスコーヒーをストローで啜りつつ、携帯UNIXを指一本で操作する。

「……いやこれさ。まとめるまでもなくチギノ本部長がニンジャのスパロードライヴ=サンで、事件の犯人でしょ。分かりやすすぎ」「あ、やっぱりそうですよね」「想像してたよりはるかに手っ取り早く調べがついたなオイ」

 ミヤモト・マサシ曰く、非常に明るいボンボリの真ん前はかえって見にくいという。もともとチギノ本部長は己の犯行について特に隠し立てもしておらず、少し捜査すれば真相に辿り着くことはそれほど難しい事ではなかったのだ。

「で、こっからが本題だな。……どうする?」「???どうするって?」「アー……」アーコの謎めいた問い掛けにメイビーは首を捻り、セカンドチャンスは大儀そうに天を仰いだ。「情報屋から仕入れた情報によるとスパロードライヴ=サンはそこまで手練れのニンジャじゃねえ。」アーコはテーブルに身を乗り出し、声を潜める。「つまり、俺達でもヤれる相手だ」

 そこまで聞いて、鈍感なメイビーにも察しが付いた。つまり、アーコは自分たちの手でスパロードライヴを仕留めようと言っているのだ。メイビーはごくりと唾を飲み、セカンドチャンスの方を見た。2人の視線がセカンドチャンスひとりに集中する。「ハー……」セカンドチャンスは深い溜息を吐き、口を開いた。

「私たちがモタモタしてたらさあ、また誰かが殺されちゃったりするワケよね」「そうだな」とアーコ。「それはなんていうか……ダメよね」「そうですね」とメイビー。「それじゃあ、やっちゃいましょっか」「だな」「ですね」3人の腹は決まった。

「お客様がた、お会計は」「ツケといて」「アッハイ」店員をゼゲン・ジツの効果で黙らせ、セカンドチャンスたちはアジサイ・チョット・ビルへと向かう。ここから先は血と鉄とカラテに満ちた暴力の時間。ブッダですら目を背ける無慈悲な世界に、3人は足を踏み出したのだった。

◇◇◇

 そして翌日。午後零時30分前!

 セカンドチャンスたちはアジサイ・チョット・ビルのエントランスへエントリーした。エントランス内には警備ドロイドのフクスケ・ドローンが巡回し、天井の四隅には監視カメラが設置されている。どうやら警備は機械任せで受付は無人のようだ。「それじゃあパパっと屋上に行っちゃいましょ」3人はそのまま階段へ向かい……「止まれメス共」アーコが不意に発した声に足を止めた。

SCMBAKニューロン: 2d6>=5 = 
(6,4 :成功数:1) +
2d6>=5 = (4,4 :成功数:0) +
4d6>=5 = (5,6,1,6 :成功数:3)

メイビー=サンはさぁ……

SCワザマエ:
5d6>=5 = (3,6,5,2,2 :成功数:2)

「いや、あんたもメスじゃ……アッハイ。なんでもないです」「どうしたんです?アーコ=サン」「下だ」アーコはその場に膝を突き、床を指差した。「分かるか?ここんとこで床の色が微妙に変わってるのが……トラップだ」アーコは床板に指を突っ込み、そのまま強引に引き剥がした。

「アイエッ……」メイビーは悲鳴を漏らしかけた口を慌てて塞ぐ。床の下にあったものは、鋭利に尖った切っ先をこちらに向けるタケヤリの群れだ。残忍なるオフィス・トラップのひとつ、タケヤリ・ピットである。

「おお、コワイコワイ。このビルの持ち主はマジで性格悪いわね」セカンドチャンスは軽快なジャンプでピットを飛び越えると、アーコがそうしたように膝を突いて何かを探す。「あったあった。ポチっとな」そして隠されていたピットの作動スイッチを押し、トラップを無効化した。

 メイビーは慎重な動きでピットのあった位置に足を置く。だがそのすぐ横でアーコがお構いなしにずんずんとピットのあった位置を進んでいったため、慌ててその背中を追いかけた。「そんじゃ、拝みに行きましょうか。こんな陰湿なトラップ仕掛けやがる殺人ゴルフ野郎のツラを」セカンドチャンスはふてぶてしい笑みを浮かべ、屋上への階段に足をかけた。

アウト・オブ・バウンズ(その4)へ続く