地元民が見る、佐世保の“さい”ちゃんの魅力と課題の話
初めましての方は「初めまして」、そうでない方は「こんにちは」
夏らしく蒸し暑い日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。西国のオタク(恐らく?)のうみみちです。
熱中症には気をつけましょうね、本当に。冷房使え、水分取れ、塩分取れ、適度に休養取れ・・・画面の前の読者さんたちは、くれぐれも暑さに負けないように!かくいう私は、この間昼間に数時間写真を撮っていたら、2日分くらいの疲労感を感じました。熱中症ではないですが、暑いと本当すぐ疲れますよね。
とまあ、暑さ対策や熱中症対策を呼びかけたところで本編にいきましょう。
あまりそんな話していると、何だか心なしか暑くなってきそうで。
今回は、佐世保のある企業で頑張っている、とある公式イメージキャラクターに関するお話。個人的に気に入っているキャラクターなので、少々熱のこもった文章になるかもしれませんが、最後まで楽しんでいただけたら幸いです。
“さい”ちゃんって誰?
さて今回紹介するのは、佐世保に本社を構える運輸事業者『西肥自動車(西肥バス)』のイメージキャラクターである、“さい”ちゃんです。「さい」が名前なので、公式Facebookで自己紹介する時には『西肥バスの「さいちゃん」こと「さい」です』と名乗っていたりします。
名前は当然社名に因んだもの。変に弄らず複雑すぎずシンプルな名前になっているのが、親しみやすさを感じて個人的には好印象です。ただ「さい」って名前だけでは性別が分かりにくくはありますが、基本的に口語では「さい」よりも「さいちゃん」と呼ばれることの方が多い印象がありますし、“さい”ちゃん本人も先述のように自己紹介してる辺り、その点はあまり意識しなくて良いかと思います。
見た目からして分かるかと思いますが、性別は女の子です。所謂『男の娘』である可能性は?とか野暮な質問は受け付けません。良いですね?
この“さい”ちゃんの大きな特徴と言えば、着用している衣服でしょうか。
まず、シルバー基調のセーラーワンピース。ワンピースは袖口や裾に青と赤のアクセントが見られる他、襟は明るめのシルバーと青、襟に撒いているネクタイは大きな赤いS字が強いインパクトを与えます。
そして、履いている靴下もシルバー基調に青のアクセント。履いている靴はローファーのようなので、ワンピースと靴下と合わせて全体として見てみると、中高生辺りの女の子のような印象を受ける出で立ちですね。
・・・・・・と、ここまでかと思うほどに「シルバー」「ブルー」「レッド」の3色で彩られているのが印象的です。これは、キャラのモチーフになっている西肥バスの塗装を摸したことによるものです。
この2台の画像と“さい”ちゃんの服を見比べてみましょう。
ワンピースの色合いは、全体的には旧標準塗装の方に近いですね。ちょっぴり暗めのシルバーにアクセントの青と赤、この青も紺色に近いような色合いですしね。ただ、襟の部分やネクタイは現行の標準塗装がモチーフとなっているため、シルバーや青の色が明るめだったりします。靴下も現行の標準塗装モチーフで間違いないでしょうね。
学生服のようにまとめられた衣装デザイン、それもシルバー基調ですから、フォーマルな雰囲気も感じられると思うのですが、ネクタイの意匠もあってかカジュアルな親しみやすい印象もあると思います。引き締まって見えるけれど決して堅苦しくない、その程良いバランス感が好ましくて可愛らしい、女の子にぴったりな洒落た衣装デザインです。
衣装含め全体として“さい”ちゃんを見てみましょう。
お洒落な衣装に彼女の浮かべているお淑やかな笑みが、少し大人びていて淑女然とした雰囲気を出しています。『大人』に近づこうと、少しだけ背伸びした多感な10代後半の少女という感じで、微笑ましさを感じさせる親しみやすいキャラデザインだと思います。
それでいて、衣装の意匠には『西肥バスらしさ』が目に見えて明らか。
西肥バスの『看板娘』にふさわしい、とても好感の持てる姿をしていると思うのです。
そんな“さい”ちゃんですが、今年6月の「艦隊これくしょん」公式等による佐世保本遠征イベントの展開と共に、新たなキャライラストが公開されました。
全体的な印象としては、衣装デザインやキャラデザインに大きな変更はない一方で、従前からのイラストと比べると明朗さやあどけなさが強調されて、どこか年頃の女の子らしく可愛らしさが増したような印象を受けます。
従前のイラストでは、背中で腕を組んで立つ仕草を見せて、お淑やかさの中に照れくささも秘めているような顔や仕草で大人びた可愛らしさがあったように思いますが、此度の新イラストはその穏やかな笑みは殆どそのままに、鞄を背負いつつ軽快?なステップを踏んで歩く姿が、何とも楽しそうで微笑ましく、見た目相応の幼気な可愛らしさがあるように感じました。
さて、この新イラストに新たに登場した鞄ですが、丸いキーホルダーが1つぶら下がっています。それに描かれているのは西肥バスの社紋ですね。小さなアイテム1つ1つにも西肥バスらしさを滲ませていて、個人的には好印象です。
“さい”ちゃんの活動記録
“さい”ちゃんの登場
さて、“さい”ちゃんがお目見えしたのは2021年2月のこと。
この時、コロナ禍で様々なイベント等文化活動そのものを行うことが難しくなって息苦しさを感じていた頃であり、また様々なコンテンツが活動休止を余儀なくされ、コンテンツの発展が停滞し味気ない日々が流れていた、暗黒期のようなあの頃です。
『艦隊これくしょん』運営のC2機関より、このような発表が出されました。
「え?何!?いきなりどうしたの?」
これが私の最初の印象。引用されているツイートにもある通り、佐世保を応援したい!という気持ちで何か行動しようという気持ちは当然理解できますし、される側としても喜ばしいことには間違いありません。しかし、その“行動”が、まさかまさかのイメージキャラクター製作だとは!
確かに、佐世保と「艦これ」は大規模イベント開催等で深い関係(下記の記事参照)を構築していたとはいえ、唐突かつ大胆な返礼には嬉しさもありましたが、それ以上に「ここまでやるの!?」という驚きの方が勝っていたのでした。
そして、発表があった翌日の佐世保バスセンター、確かに彼女の姿はあったのです。「艦これ」に登場する艦娘の「時雨」「矢矧」と一緒にいました。
2021年2月下旬、西肥バスの関係者に手を引かれるままバスセンターに降り立った“さい”ちゃん。特に記念行事等がある訳でも無く、関係者の方が記念に撮影するくらいで静かな登場となりましたが、今もなお佐世保に降り立つ提督の皆様には親しまれているようで、一方で彼女もまた変わらない優しい笑顔を今日もバスセンターを訪れる多くのお客様に振りまいています。
と、こんな書き方をすると「佐世保バスセンターでしか会えないの?」と思われてしまいそうですが、そんなことはございません。
2023年7月現在、“さい”ちゃんは以下のスポットで見られる他、西肥バス本社にもいるのか、西肥バスが外部イベントにブースを出典した際等には、そのブースで“さい”ちゃんの姿を見ることができるようです。
【“さい”ちゃんと会えるスポット】
・佐世保バスセンター
・九州銘菓させぼ五番街店(★)
・九州銘菓島瀬店(★)
・くっけん広場
・その他、西肥バスのイベント出展時のブース(無い場合もあり?)
・その他、2023年6月の「艦これ」本遠征イベントコラボ店の看板(店によって立っていない場合もある)
★閑話休題 ここで解説★
「九州銘菓」とは、西肥バスの事業部が運営しているお土産店です。
名前の通り、長崎県を中心に九州各地のお土産を取り揃えており、出張帰りのビジネスマンや旅行客を中心に、日々多くの人が利用されています。近年ではネットショップやLINE公式アカウントも展開しており、ネットショッピングや情報発信を積極的に展開しているのも大きな特徴です。
また西肥バス公式グッズも取り扱っており、今年6月の「艦これ」佐世保本遠征イベントの際に販売された『アクリルカレンダー』も販売中です。
西肥バス公式イメージキャラクターという立場上、西肥バス関係の施設以外で“さい”ちゃんの立て看板を見かける機会は少ないのですが、2023年6月の「艦これ」本遠征イベントのコラボ店舗前に立てられる小さな立て看板にも描かれていたりと、登場から2年が経過した今、西肥と「艦これ」の関係、そして佐世保と「艦これ」の関係を象徴するキャラクターとなっているようです。
さて、立て看板の紹介はここまでにして。次に、この2年間彼女がどのような活動をしてきたかについて振り返ってみましょう。
“さい”ちゃんの最初の大仕事と言えば、『頑張る佐世保』のPR映像撮影用に用意した特別ラッピングバスでしょう。
佐世保市や西肥バスのPR映像向けに、西肥バスの一般路線車1台(Z920号車)にラッピングを施した上で、数日間佐世保市内を走行したというこちらの企画。映像の撮影が終わるとあっさりラッピングが解除されてしまい、幻のラッピングバスとなってしまいましたが、画像や映像自体は今でもインターネット上等で閲覧でき、“さい”ちゃんや艦娘の「時雨」そしてC2機関イメージキャラクターの「しーちゃん」がデザインされたラッピングバスの全容を感じることができます。――正直、生で見たかっただけに数日でラッピングが解除されたのは未だに惜しいところですが。
この最初の大仕事が、佐世保バスセンター等での立て看板と並び、“さい”ちゃんの存在を広くPRすることに寄与したのは違いないと思います。
しかし、この後“さい”ちゃんは長らく沈黙の時に入ります。ハッキリ言えば、今年に入るまで目立った活動実績が無かったのです。その辺りは後章で考えてみたいと思います。
あまりに活動実績が出てこなかったもので、一部の提督らしき人々から「西肥バス公式も、どうでもよくなったのでは?」等と根も葉もない噂や心ない声も飛んできたのを覚えています。言い方は悪いのですが“死亡説”が流布されてもおかしくはない、それ程までに立て看板以外の実績が0に等しい状況が長く続いていたのです。
とはいえ、そんな状況下でも彼女はバスセンター等でいつもお客様を笑顔でお出迎えしていました。それは「実績があまり無いからと言って活動を休止しているわけではない」という、一部の心ない意見に対する、彼女の細やかな抵抗のような気がしてなりません。
“さい”ちゃんの再始動
そんな状況が続く内、いつの間にか年は2023年を迎えていました。
感染対策の徹底等で、所謂「Withコロナ」の概念が広く滲透したことで、感染者は依然発生しつつも対処法を身につけだしていたこの頃。徐々に大規模なイベントに関しても、ありとあらゆる策を講じつつではあれど、開催し盛り上がれるようになりつつありました。
このような世間の動きに便乗するように、「艦これ」運営のC2機関は2023年2月に佐世保で久しぶりのイベント開催を発表しました。その中で、西肥バスもイベント開催を祝して、ある企画を用意していました。
それがこの後面ラッピング車の期間限定運行でした。
佐世保~福岡線の高速車2台の後面に、それぞれ“さい”ちゃんと艦娘の「時雨」をラッピングするという企画。2年前のフルラッピングを知っていると寂しさも感じられたかもしれませんが、この2月のイベントというのがあくまで「プレイベント」という、言わば「時勢を鑑みながらの試験的かつ小規模な開催」とも言えるイベントであったことを考えると、後面だけとはいえラッピング車が運行された事実だけでも凄いと思うのです。
それに、後面だけと言えどそれなりに効果はあったらしく、このラッピングをきっかけに“さい”ちゃんを知ったという方も見かけました。大型の高速バス車両の後面いっぱいにラッピングされているわけで、一度見たら印象に残りやすいのでしょうね。
そして、今年6月。先述の通り、佐世保では「艦これ」の本遠征イベントが開催。数年ぶりの「艦これ」の大規模イベント開催ということもあって、佐世保市内は大盛り上がりの様相を呈していました。
西肥バスでも、先述のアクリルカレンダー販売に加えて、フルラッピングバスや特別デザインの1日乗車券販売を実施する等、かなり力を入れていた訳で、そこでも“さい”ちゃんは大活躍してくれたのでした。
実は、上のような事例の他にも、イベント期間限定の特別車内放送において、少しだけですが“さい”ちゃんも話していたらしいです。まさかまさかの声の出演!!どんな声だったのでしょうか、聞いてみたかったですね。
・・・・・・とまあ、様々な形で“さい”ちゃんの姿を見かけるようになり、漸くイメージキャラクターとしての活動が本格的に動き出したように思えます。ここまでくると、再始動・・・・・・というより、むしろ今からが本格始動という感じなのかもしれません。何だか勿体ない話のような気もしますけれど。
公式Facebookでも、ちょこちょこ情報発信してくれているようですし、少しずつではありますが、“さい”ちゃんの活動が目に見えるようになってきたのが個人的に嬉しいと思っています。
確か、2月の「艦これ」イベントの時だったか、凱旋記念館でのステージイベントの際に西肥バスの役員さんも「“さい”ちゃんの活躍の機会を増やしていきたい」旨の話をされていたかと思いますので、今後に期待したいところですね。
“さい”ちゃんの今後を考える
“さい”ちゃんの抱える課題
先述の通り、“さい”ちゃんには2021年の登場から2023年2月の後面ラッピングまでの目立った活動実績は殆どありませんでした。それ故、西肥バスは“さい”ちゃんのことをどう考えているのか?といった疑問の声もあれば、彼女のことがどうでも良くなったのでは?等と心ない声も見られたものです。
では、なぜ彼女は殆ど活動実績を積むことが出来なかったのでしょうか。あくまで私個人の考えなので恣意的な内容もあるかと思いますが、私なりに簡単に考えをまとめてみます。
まず、第一に考えられるのは『新型コロナウイルスの影響』です。
これは言わずもがななので敢えてこの場で書くようなことでもないと思うのですが、新型コロナウイルスの影響は今なお続いているのは周知の通り。大規模なイベントこそ再び開催できるくらいになったとはいえ、依然として医療体制の確保や感染拡大防止策の検討及び周知徹底が続いているくらいです。
“さい”ちゃんが初めて姿を見せた頃なんて、感染が拡大し始めて1年程という頃。医療体制が少しずつ整い始め、感染拡大防止策もある程度の方向性が漸く見えだしたそんな頃でしたから「大規模イベントの開催なんて以ての外」という声以前に、地域間の往来を活発化させようとする動きを疑問視するような風潮も今以上に残っていた時期だったかと思います。そういう世論があったため、話題性を高めて他地域から人を呼び込もうとする動きを控えようとしたのではないかと思います。
特に西肥バスは運輸業。他地域から人を連れてくる業種とはいえ、そのような風潮だけでなく、乗務員をはじめとした従業員間の感染拡大やそれの防止策徹底もあって、福岡線や長崎線といった高速バス路線での減便も行っていた時期。呼び込みたいけど無闇に呼び込めない、人を沢山運びたいけど運べない苦しい状況があり、それが直接関係の無い企画にも影響を及ぼしている可能性が上げられます。
といっても、今年に入り“さい”ちゃんに関する様々な企画が打ち出されてきた辺り、新型コロナウイルスの影響は薄れつつあるのかもしれません。今後もその傾向のままであってほしいのですが、果してどうなるやら。
次に考えられるのが『“さい”ちゃんとは何者か?』という点です。個人的にはこれが一番大きな課題なのではないかと思っています。
「お前は突然何を言うのか」「一番最初の章で、お前は何か解説してただろ」と言われそうなので、ここでクイズを出してみます。
【みんな解けるかな?“さい”ちゃんクイズのお時間です】
Q1:“さい”ちゃんの誕生日はいつなのか?
Q2:“さい”ちゃんはどこ出身なのか?
Q3:“さい”ちゃんの好きなもの・嫌いなものは何か?
Q4:“さい”ちゃんの特技は何か?苦手なことは何か?
Q5:“さい”ちゃんの趣味は何か?
Q6:“さい”ちゃんは、普段どんなお仕事をしているのか?
Q7:“さい”ちゃんが今頑張っていること、これからの目標は何か?
とりあえず、思いつく限り7問作ってみました。どうでしょうか、解けそうでしょうか?質問内容自体は本当に割と単純で、家族構成や居住地みたいな踏み込んだ内容は極力避けたつもりなんですが。少しの時間、考えてみて下さい。(10秒くらい考えてから下にスクロールして下さいね)
・・・・・・どうでしょうか、分かりましたか?
――え?1問も分からない?この場末の記事に辿り着いておいて、1問も分からないんですか!?しかも、そんな話を聞いた覚えが全くないですって!?えぇぇ!?
・・・・・・そうです、そうなんです。現時点ではその「分からない」という反応が正解なのです。実は先述の7問には『答えが存在しない』のです。分からないのは当然、答えが存在しないから。聞き覚えがないのは当然、答えが存在しないからなのです。
ガチ勢を自称して、適当な回答をされた方は残念でした(多分いないけど)
私がここで申し上げたいのは、“さい”ちゃんの知名度云々という話ではなく、それ以前の話として『“さい”ちゃんには歴としたキャラ設定が存在していない』ことが大きな問題なのではないかということです。
キャラ設定が明確に定まっていないことは、キャラクターを実際に企業の広報活動等で活用及び運用する場合において大きな影響を与えます。
例えば、外部のイベント(就職活動のイベントや企業活動PRのイベント等)において「西肥バスにはこんなキャラクターがいるんだ」と、“さい”ちゃんの存在について簡単にでも紹介したとしましょう。その場に“さい”ちゃんに対し興味関心を持った人がいたとして、次のような質問をすることも容易に考えられるのではないでしょうか。
「このキャラクターは可愛いですね。この子はどんな子なんですか?」
『どんな子』という問いかけ方が、外観の特徴を示すか性格等の内面的特徴を示しているのかは質問者側次第とは言え、キャラクターの存在を仄めかすのにイラストや立て看板の用意を全くしないことは考えにくいですから、基本的には内面的特徴を問いかけるような質問だと考えるのが自然でしょう。
ここで、キャラクター設定が定まっているような場合なら、特に担当者が「この子はこんな性格の子で~、あんなことが好きで~、こんなことを頑張っていて~」等と明確な回答を質問者に提示できるでしょう。
しかし、キャラクター設定が定まっていない場合ならどうでしょうか。担当者であろうとなかろうと関係無く、返答の言葉を言い淀んで、曖昧な返答しか出来なくなる光景が容易に想像できるのではないでしょうか。そんな反応を返された側としては、キャラクターに対して感じていた魅力を喪失させる要因にもなりますし、最悪「企画に対する意欲が中途半端である」と企業そのものに対する印象も悪い方向に傾くのではないかと思います。
また、設定の定まっていないキャラクターというのは、運用する側にとっても悩ましいものではないかと思います。『この子がどういう子なのか』が明確でないと、キャラクターを活かした広報活動や商品企画開発は暗礁に乗り上げるはずです。
・『この子はこういう性格なんだよね』なら、この子自らがPRしている風にSNSで情報発信するには、こういう文体でやっていこう。
・『この子の好きなものはこれだから』なら、こんな商品を作ってみよう。
・『この子はこのお仕事を頑張っているって言っていたなぁ』なら、このお仕事について紹介して、就活生に興味関心持ってもらおう。
キャラクター設定が定まっていれば、その設定に沿ったキャラクターコンテンツを活用した企業活動が実行しやすくなりますし、客目線で見ればそのような活動というのはその企業の特色等を端的に理解するに適した取り組みの一つでもありますから、キャラクター単体に対して魅力や愛着を持つだけに留まらず、その企業や組織に対して興味関心を持つきっかけになる訳です。
その他企業側にとっては、仮に業務の担当者が交替したとしても、キャラクター像に大幅なブレが発生することなく、引き続き従前のままで業務を行いやすくなるといったメリットもあるでしょう。
逆に設定が存在しなければ、企画にも商品にも方向性が示せず、結果的に中途半端な実績を残して苦々しい思いを感じるだけで終わることになるのです。当然そんな事業は誰も引き継ぎたがるはずもありませんから、人知れず自然消滅、空中分解するのは目に見えて明らかです。
考えすぎだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この高度な情報化社会において、あらゆる世代の興味関心を取り込まんと様々な媒体や企画を活用した情報発信面の強化は、今や企業の生き残り戦略として重要な戦略の1つなのですから、その一環たるキャラクターコンテンツ活用による広報活動だって侮れないものだと思うのです。
・・・・・・ゲフンゲフン、頭の痛い話をしてしまいました。
とにかく上の長話を要約するなら、「明確に設定の定まっていない中途半端なキャラクター」というのは、客目線で見たらそのキャラクターだけでなく企業に対する印象も悪くなりやすい(というより、そもそも魅力や好印象すらも感じることもない)ものであり、企業側にとっては扱いにくいだけの「目の上のたんこぶ」として苦々しい思いを感じるだけの存在で終わるという、互いにデメリットの目立つ存在にしかならないということです。
とはいえ、私のようにあまり設定の定まってない“さい”ちゃんに対して、魅力を感じる人間だっていたりします。尤もそれは『西肥バス』という企業を前から知っていて、“さい”ちゃんのようなキャラクターを登場させた意外性がきっかけで興味を持ったというように、「その企業のことを前から知っていた」という前提条件あってこそ強く発揮されるものであり、その企業を知らない人間に対しては効力は出てきにくいのではないかと思います(見た目がその人にとって好みだったら、話はまた変わってくるでしょうけど)
企業活動の一環としてキャラクターコンテンツを活用するのであれば、明確なキャラクター設定を構築し、そのキャラクターが客にとっても運用する側の企業にとっても『魅力的な存在となること』が肝要なのかもしれません。
それにしても、話を終えた所でまた1つ新たな疑問が生まれる訳です。それは、なぜ未だに彼女の「キャラ設定」が構築されていないのか、ということです。
まあ、西肥バスはあくまで『バス会社』であり、この“さい”ちゃんコンテンツも、あくまで『広報活動の一環』に過ぎないことを考えると、“さい”ちゃんばかりに時間やコストを割けないのは当然なのですが、それにしても誕生して2年以上経過しても、未だに明確なキャラ設定も無いままに運用されている現状というのは、“さい”ちゃん自身や佐世保における「艦これ」コンテンツの今後を考えると、あまりにも勿体ない話だと思うのです。
その辺りの要因としては、製作側のC2機関も運用側の西肥バスも、互いに『“さい”ちゃんが登場・存在した事実』に満足してしまっているということも考えられます。
実際、キャラクターグッズを展開する上で「キャラクター設定」は必ずしも必要ではないのかもしれません。言ってしまえば、グッズに添付するための「キャラクターの画像データ」さえ存在していたら、あとはもう特段必要は無いということです。販売された“さい”ちゃん関連の商品を見れば、“さい”ちゃんの画像はあれど、「“さい”ちゃんがどんなキャラクターなのか」といった“さい”ちゃんに関する説明は見当たりません。まるで「見た目が全てです」と言わんばかりに。
そう考えると、見ただけで「西肥バスのキャラクター」だと分かるキャラクターデザインを持った“さい”ちゃんは、ある意味可哀想な存在なのかもしれません。見た目だけが出来上がった状態で世の中へ登場する――つまり『見た目でキャラクターの全てが完結している』と判断されて、そこから更に深掘りして「キャラクター設定」を構築する機会を得られず、『ただそこにいるだけの存在』になっている訳ですから。
先ほど長々と書き上げたとおり、キャラクターコンテンツには「キャラ設定」の存在が肝要であると思います。設定を知って、新たな魅力を感じてもらうことがキャラだけなく運用する企業の魅力向上にも繋がると考えられるからです。
ここまで私は「キャラクターデザイン」という単語を「キャラクターの見た目の設定、またはそれを作ること」という意味合いで何度も用いてきたのですが、改めて考えるに「設定を考える」というのも『キャラクターデザイン』の要素の1つなのかもしれません。
キャラクターは見た目だけでは無くむしろ中身こそ重要であり、中身あってこそのキャラクターデザインなのです。先にキャラクターの見た目が出来上がっていたのであれば、それで完成とするのではなく、そこからが本当のスタートだという心意気で臨まないと、『ただそこにいるだけの存在』で終わってしまうのではないでしょうか。
“さい”ちゃんと「艦これ」
先ほどの項では、オタク特有?の怪文書を生成してしまい申し訳ございません。“さい”ちゃんの目立った活動実績の少なさには、コロナの影響も少なからずある一方で、それ以上に「キャラ設定」が存在しないことが一番大きな要因となっている可能性があるという話でした。
正直、浅はかな素人考えであるのは承知しておりますが、“さい”ちゃんを魅力的に感じている以上、彼女の魅力を考える上で彼女がどんなキャラクターなのか知りたいということもあって、長々と回りくどく書き表したのでした。色々と申し訳ありません。
さて、“さい”ちゃんを語る上で外せないのは「艦これ」の話です。
そもそも、“さい”ちゃんは西肥バスとC2機関とが権利を持っています。その辺りの権利関係については、今年の西肥バスFacebookより、“さい”ちゃんのラッピングが施された車両の画像に、西肥バスとC2機関が権利を保有する旨の権利関係表記が見受けられることから窺えます。キャラを製作したのはC2機関でありますし、キャラのモチーフとして、そして実際に運用する側として西肥バスが権利を保有するこの関係は当然のものです。
しかし、それ故に“さい”ちゃんの活動機会は、現時点では専ら「艦これ」関係の企画に集中しているような気がします。此度の活動実績であるグッズやラッピングバスも、普段から見られる佐世保バスセンター等での立て看板の設置というのも「艦これ」佐世保コラボイベントがあってこその実績であり、それもあってか『西肥バスの公式イメージキャラクター』というより『C2機関の「艦これ」佐世保コラボPRキャラ』の毛色が強くなっている印象を受けます。「艦これ」以外でも外部イベントでの立て看板設置はやっていますが、「PRのために一応さりげなく置いてある」ように見受けられます。「艦これ」範囲外故に、C2機関に配慮して目立たせないようにしているのかもしれません。
さて、ここで話は変わるのですが、西肥バスの隣を走る松浦鉄道には、トミーテック(タカラトミー系列)のキャラクターコンテンツ『鉄道むすめ』にて制作されたキャラクター「西浦ありさ」さんがいらっしゃいます。
彼女の場合は『鉄道むすめ』コンテンツのキャラクターの1人として、同コンテンツでの商品展開等に参画する一方で、松浦鉄道の“広報担当”として立て看板設置はさることながら、車内放送での観光案内も担当した他、オリジナルグッズが作成されたりと忙しく活動しております。
最近では、佐賀県有田町の初代観光大使への任命や長崎県松浦市の「松浦アジフライ大使」といった、『鉄道むすめ』コンテンツや松浦鉄道の枠を超えた幅広くかつ積極的な活動展開を見せており、沿線地域でも少しずつではありますが広く親しまれつつある印象を受けます。
さて、ここで“さい”ちゃんと彼女とを比べてみましょう。
“さい”ちゃんの場合は「艦これ」コンテンツやその関連企画に特化し、主に「艦これ」佐世保コラボイベントの際に活動実績が目立つという点で、『鉄道むすめ』コンテンツやの『松浦鉄道の企業広報』という枠を超えて、様々な面で活躍する「西浦ありさ」さんとは、活動のあり方の面で対照的と言えると思います。とはいえ「艦これ」佐世保コラボは地域活性化の面で佐世保市へ与えた経済的な効果も大きく、“さい”ちゃん含め西肥バスは早い段階から協力的だったのを考えると、『地域活性化への貢献』という点で実は割と2人は近しい性質の存在になるような気もします。遠くて近い2人、といった感じでしょうか。
キャラクターコンテンツにおける活動のあり方について、どちらの考え方が正しくどちらの考え方が誤りかと正そうとは思っておりません。案外、対照的な方針の2人が共存することで、沿線地域ではバランス良く『キャラクターコンテンツ』への理解が深まるのかもしれませんし、キャラクター同士の競合も発生せずに互いに棲み分けられることで、意外な形で協力関係が発生することだってあり得ますから。というか、むしろ2人がタッグを組んだら沿線地域にとっては最強なのでは・・・・・・?
私個人の思いとしては、“さい”ちゃんにも『艦これ』以外の多方面での活躍に期待したい気持ちもあります。あくまで『C2機関の「艦これ」佐世保コラボPRキャラ』としてではなく『西肥バスのイメージキャラクター』として、佐世保市以外の地域でも華々しく活躍して、少しでも地域を盛り上げて欲しいという思いもあるためです。C2機関も本来『西肥バスのイメージキャラクター』として依頼を受けて製作した経緯がありますから、「艦これ」に囚われすぎずに、企業広報やその他沿線地域のPRでの活用も考慮されているのではないかと思います。一方で「艦これ」コンテンツとここまで親密にかつ積極的に関わる企業も多くないことを考慮すると、却って多方面展開せずに『「艦これ」佐世保コラボのイメージキャラクター』として、イベントやその関連企画のPRに専属させて活躍するのも、実は悪くない判断だったりするのかもしれません。どちらが彼女にとって良い判断となり得るか、それは実際にやっていかないと誰も分からないものですから。
ただまあ、いずれにせよ「キャラクターの設定」が固まっている上での話になるでしょう。「この子がどんな子なのか」次第で、活動のあり方が「艦これ」特化か否かと固まっていくのではないかなということです。
・・・・・・結局「キャラクター設定」の話になるじゃないか!!
“さい”ちゃんの今後について
気がつけば“さい”ちゃんも登場して2年ほどが経過し、その間佐世保を訪れる“提督”(「艦これ」のプレイヤーを指す)らを中心に、佐世保を訪れる多くの人に可愛がられ、そして親しまれるようになりました。
SNSを眺めてみると、可愛らしいイラストや漫画を描いていただいただけでなく、ミニサイズの人形を作成された方もいれば、ラテアートで描いてくださった方もいたりと、着実にファンを増やしつつあるのかなと思います。その内コスプレする人まで現れたりして・・・・・・?
地元に住む人間として、そして“さい”ちゃんを推している人間としては、このムーヴメントが嬉しいものなんですよ、はい。
そんな“さい”ちゃんが、今後もより多くの人に親しまれるようになってくれればと思いながら、今回のこの記事を書いていました。素人の独りよがりな発言が目立っていたかもしれませんが、こんな可愛いイメージキャラクター大切にしないと可哀想ですし勿体ない訳ですから、1人でも多くの方に共感いただけたら嬉しいです。
さて、最後に“さい”ちゃんの今後について、簡単にですが考えていきたいと思います。もう暫く私の話に付き合っていただければ幸いです。
“さい”ちゃんの現状の大きな課題として、私は『明確な「キャラクター設定」が存在していないこと』を提示しました。現時点で見た目のデザイン以外に明確なキャラクター設定が存在しない――つまり、彼女がどんな性格の子で、どんなことが好きで、どんなことを頑張っている(もしくは頑張りたい)のか、といった内面の設定がないため、客目線で見るといまいち魅力的に映りにくいところがある一方、運用する側の西肥バスとしてもどう動かしていくべきか悩ましく結果的に持て余し気味だという、互いに見て中途半端で微妙な『ただそこに存在するだけのキャラクター』になっている好ましくない状況にある訳です。
そういう状況下で『キャラクターの今後』をベラベラと長々語るわけにはいきません。いや語れません。キャラクターコンテンツにおける『キャラクターデザイン』は、キャラクターの基礎にあたるものです。見た目の印象もさることながら中身の設定もデザインしないとキャラクターは完成しませんし、そもそも中身の設定があってこそ見た目の設定も映えるものになり、キャラクターの目指す方向性も明確になるものでしょうから、「キャラクター設定」を考えない限りキャラクターコンテンツは始まりません。つまり内面が何も無いのに、そのキャラクターの今後のあり方や方向性を考えるなんて詮無いことなのです。
ですので、まず今“さい”ちゃんに必要なのは『キャラクター設定を作ること』なのだと思っています。彼女がそもそも何者なのかを細かくかつ明瞭に描くことで、“さい”ちゃんのアイデンティティーをより強固に確立させ、“さい”ちゃんが向かう道筋を明確にするのです。『西肥バスのイメージキャラクター』として何がしたいのか、何ができるのか――そういった要素は、間違いなく彼女の魅力の1つとして欠かせないものになります。やりたいこと、成し遂げたいことに向かって直向きに頑張っている人を見かけると応援したくなるような、そんな感じです。
立て看板ではあるけれど、決して『立て看板』としてでは無く『1人の少女』としてそこに立つことができるように。見た目も中身も魅力的だと感じて貰えるような『1人の乙女』として、佐世保の街やその周辺地域を訪れる多くの人々を温かく出迎えられるように。そして『西肥バスのイメージキャラクター』として、西肥バスに少しでも多くの人が興味関心を持ってくれるように――。沢山の魅力に満ちた“さい”ちゃん像を作り上げることが、“さい”ちゃんと彼女に関わる全ての人に明るい未来をもたらしてくれるのではないでしょうか。
おわりに
佐世保は今「萌えキャラ」文化の熱い街になっている気がします。
“さい”ちゃんや先述の「西浦ありさ」さんの他、佐世保競輪場には「九十九島凪海」さんという可愛らしい巫女さんがいらっしゃいますし、現時点で佐世保では然程大きなムーヴメントの兆候は見られませんが、バンダイナムコの人気ゲームシリーズ「アイドルマスター」には、佐世保出身という設定の「月岡恋鐘」さんというアイドルも元気に活躍されていらっしゃいます。月岡さんについては、近年人気の「方言女子」である点が印象深い点ですね。
九州の西の端にあるこの街で、ここまで「萌え」が盛り上がっているのは、若年層を中心に幅広い世代の興味関心を引こうとする佐世保の人の熱意が偶然タイミング良く重なったと見られる一方で、様々な文化やものがすぐに溶け込んで馴染んでしまう佐世保の地域性あってこそなのかもしれません。佐世保って本当に居心地の良い街なんですよ。
“さい”ちゃんにとっては、仲間ともライバルとも言えるような存在が多い訳ですが、そういう今だからこそ、佐世保を盛り上げるキャラクターの1人として、他のキャラクターと協力しながらでも力を付けていって欲しいなと思うばかりです。「佐世保はこんなに良い街だよ」「佐世保は楽しい場所なんだよ」といった佐世保の魅力が、彼女たちの活躍をきっかけに広く人口に膾炙していくことが、地元民たる私にとってこの上ない喜びなのです。
彼女の内なる個性が燦然と輝く時を心待ちにしながら、筆を置きたいと思います。長くなりましたが、この記事はこれでおしまいです。最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。