読書|巴里の空の下オムレツのにおいは流れる

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる/石井好子

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』なんて素敵なタイトルなんだろうと手に取り、裏表紙の「戦後まもなく渡ったパリで、下宿先のマダムが作ってくれたバタたっぷりのオムレツ。」という紹介を読んで、もう大好きになった一冊。

まずバタやブィヤベース、エスキャルゴとか普段自分が使うのとちょっと違ったカタカナがところどころ出てくるのが好き。全く違うという訳ではないから意味は伝わるけど微かな違和感に文字がピョンピョンして見える。楽しそう。

数々の料理と一緒に紹介されるエピソードも国や時代を感じるものもあり、どれも興味深いし、なにより石井さんの書く食べ物はどれも美味しそうなのだ。読みながらお腹が空くし、どこもかしこも石井さんのお人柄が滲み出ているような文章で、なんだか楽しく幸せになる。

「サフランなどというと、いったいどこで買えるかしら、と思う方もあるだろうが、大きな薬局や西洋食品を扱う店で売っている。
 日本には粉のサフランはなく、輸入品のサフランのめしべ、おしべが売られている。」(p.88)

私はサフランが何者なのか意識したことがなかったことを、この本を読んで初めて気づいた。スパイスコーナーにあるだろうなぐらいの認識でいた。よく考えたらそうなのだけど、サフラン=スパイス=植物も瞬時には結びつかず、ネットで調べて「花なのか…」と思ったぐらいサフランについて考えたことがなかった。
しかも、衝撃なことにスパイスコーナーのサフランもちゃんと観察した事はなかったのだろう、思った色と全く違ってビックリした!
サフランライスは私もパッと思い浮かぶので、黄色と思っていたスパイスとしてのサフランは赤かった。

魚が切り身で泳いでると思っている子がいる。なんて話があったが、私も人の事は言えない。特に意識してこず、実は何者なのか深くは知らないものがまだまだ沢山あると思う。本を読んでて偶然知れるのはラッキーだ。

しかも今回は石井さんが執筆した時代だからこそ、「あれ?サフランって…」と思えたのかと思う。今ならスーパーのスパイスコーナーに売っていると簡単に書かれるんじゃないだろうか。そうなると私は「うんうん、サフランね」で終わってた可能性がとても高い。

この本は最初から最後まで幸せに溢れている。解説も愛に溢れている。
11本のエッセイは、1本のエッセイの中にも小さくいくつも区切りがあって、
気軽に読みやすい。
この先も何回でも読み返したい。


またね

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