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『우미카지』1호について

翻訳し、制作し、配布する。どこをとってもエキサイティングな一冊だった。韓国から海を越えて辺野古に来るひとびとに出会うたびに、ハングル版をつくっておればよかったと思っていた。昨夏、韓国に行くタイミングでつくり、韓国の印刷会社で印刷をお願いした。


安東で食べた辛鍋メウンタン🌶️


2023年7月22日発行

・詩 うみべ⑴
・ビラ(イラスト) わたし/たちへ
・木版画 沖縄島
・うみの辺野古日記。 20220928-20230630
・島じま紀行 宮古島 与那国島



基本的には『うみかじ』の1号から4号のなかで最も伝えたいところを選び、翻訳した。過去のものを現在の時点からすこし読みやすくつくりなおすだけでなく、文章をコンパクトにしたり、少し断定的に書きなおしたり、言語的な翻訳の前に最も伝わりやすいようにする過程があった。再録しなおした音源でベストアルバムをつくるイメージ。文章だけでなく、わたしの内面も翻訳される感じがしていた。なお、翻訳はほとんど友達の協力のおかげです。


詩 うみべ⑴ のページ


時間と負担のかかる制作なので、少しでも楽しくつくりたいと思い、デザインは好き放題にした。表紙には4号までで一番オーソドックス(?)な2号の天使を反転して描きなおし、金色が輝くように加工を行い、自分が好きな背景に重ねた。普段はできるだけ手作り感を出したいと思って洗練には慎重になるが、見通しのよさを大事にして一冊をつくるのは経験として面白かった。


清州で開かれたシンポジウムでおしゃべりもしてみた。



印刷されたものを韓国各地の書店やカフェなどに持っていくのも刺激的だった。辺野古配られている手作りのジュゴンのバッジと出会ったり、全州の本屋さんでは急にインタビューがはじまったり、済州カンジョン村ではわざわざ交流会を設けてもらったりした。地方新聞社に話を聞きに行ったりもした。真夏の韓国を両肩に冊子を詰め込んで歩くのは、今考えると途方に暮れるが、何よりも身体の底から楽しんでいた。また、直接会話する機会は持てなくても、お手紙をもらえたり、メルマガでのレビューをいただけたのが嬉しかった。恵まれていた。沖縄から発送しているとなかなか忘れがちだったけど、紙でつくったものを手から手へと届けるエネルギーを改めて感じた。最後に編集後記に残した言葉を引用しておきたい。


「翻訳」のあり方を探しながら、何度も困難にぶち当たってしまう。それはやはり、わたしがどの目線で書いているのか、ということを思うからであった。日本、沖縄、そして朝鮮と、単に言葉の海を越えるだけではすまない、歴史の重みを感じている。だがそれに押し潰されることなく、どのようにひとりひとりのわたしが「わたし/たち」へとなることができるのかを探したい。今回の「翻訳」がその「はじまり」になることを祈っている。

巨済島でみていた海



印象深い参考文献
・李孝徳「『日本人』とは誰のことか」
・宋安鍾「もうひとつの故郷へ」

つづく

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