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こんな時だからこそ、素人に「アートは必要」

コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出されてから初めて、美術館に足を運んだ。

この4カ月、行きたい展覧会はあっても、「アートやエンターテインメントは、まさしく『不要不急』のもの」。アーティストたちが自分たちの仕事を失い、その「意味」を巡って苦悩を語る姿も見たけれど、その支援なども、あまりピンとこなかった。「仕方ないよ。芸術は命と関係ないし」と思っていた(ような気がする)。

ところが。
友達からの誘いがきっかけで足を運んだら、止まらなくなり、3日連続で三つの美術展へ。ほとんど衝動的に、気になっていた美術展を次々と予約。自分がこんなにもアートを欲していたことに、驚く。

その衝動ってなんだろう?と思っていたのだけれど、3日を振り返って見たのは「アートは『生(生命、生きること)』を見つめているから」。そう感じさせてくれた三つの美術展と、コロナの時代だからこそ、続けて行きたくなった美術展。アート素人ですが、ビジネスパーソン的視点でピックアップ。

チケットは日時指定の予約制、でも当日直前に決めてもOK

ところで、まず最初に。
多くの美術館は今、日時指定の予約制。美術館に行きたくても、「10分、15分刻みの時間予約は難しい」「当日行けなくなると面倒」などと敬遠しがちな気がします。私はそうでした。

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でも、今回行った3館は、(良くも悪くも)どこも空いていて(写真のように、誰もいない国立新美術館の入り口)、それぞれ、行きたい時間の直前でも買えたり、当日窓口で購入もできたり、一度だけなら日時変更ができたりするようでした。

コロナ禍でアーティストは何を考えたか?(原美術館)

最初に行ったのは、サンルームの窓と裏庭、階段など建物全体が大好きな原美術館(品川区)の「メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2018-2020」。

展示されていたのは、久門剛史の作品「Resume」(2020年)や小泉明郎の《抗夢 #1(彫刻のある部屋)》。『美術手帳』によると、久門さんはこう語っているという。

「現在のような状況でも心の火は消せないこと、色彩は失われないということ。芸術の力はにじみ出てくるものだ、ということを表しています」

同じく、『美術手帖」の小泉さんのコメントは、

「スクリーン上での経験が増えているいま、映像作品ではなく実際に身体的に感じることのできる作品をつくりたかった」

全身で聞き、感じる「音」「光」。自然の音と人間が作り出してきた人工的な音、私はどちらに耳を澄ませて暮らしているだろうか。言葉が聞こえて、姿が見えない時、私はどこまでその世界観や思いを共有できるのだろう。何がリアルで、何がバーチャルなのか。自然と人工的なものとの境界、空想と現実の境界。そこに向き合うことを迫ってくる作品だった。

●「メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2018-2020」
原美術館(2020年7月23日[木祝]-9月6日[日])
https://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/741/

古典と並ぶ現代アート、時代を超えて「命」を見つめるユニーク企画展(国立新美術館)

二つ目は、国立新美術館で開催されている「古典×現代2020」。江戸時代以前の古典作品と現代の作家によるアートが同じ空間に並ぶ企画展。とてもユニークな試みなのに、この状況で限られた人数(予約制)しか見られなくなり、企画者は、さぞ悔しいだろうと思う。

新聞で記事を読んでいたが、想像より面白かった。

実は、行く前は、時代を変えて「似たような」作品を並べた作品展ではないかと想像してしまっていた。例えば、古典のパロディをするといったような。

でも、そんな単純なものではなく。それぞれの作品は、江戸時代以前の作家たちが「何を見ていたか」の本質に迫り、そこから改めて「命とはかなさ」「隣り合う生と死」「生きること、無心という表情」といった主題を取り出しているように思えた。

私は美術のプロではないので、帰宅後に『美術手帖』を読んで、「やはりそうだったか」と納得したり、「それを知っていれば、見方が変わったのに」と思ったり。それも含め、現代アートは「向き合う楽しさ」があると思う。難しいことを考えずに、純粋に楽しめたのは、しりあがり寿×北斎のパロディもの。思わずクスッと笑ってしまい、こんな時にも和ませてくれる別の力をくれた。

●「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」
国立新美術館(2020年6月24日[水]ー 8月24日[月])
https://kotengendai.exhibit.jp/index.html

生命の生々しさに触れてざわざわ(アーティゾン美術館)

最後は、ブリジストン美術館あらため、新たに開館した「アーティゾン美術館」として「鴻池朋子 ちゅうがえり」。国立新美術館の「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」にも出展していた鴻池さん。

私はまとまった作品を見るのは初めてで、正直、圧倒された。皮に描かれた作品や毛皮を使った作品などは、生命の生々しさにいやがおうにも触れて、心がざわざわするというか。

実は、もう一つの目的はこちら。前々回、その前に行ったヴェネチア・ビエンナーレに、前回は行けなかったので。国内で同じセットで見せるという試みは画期的だなあ、と思う。

●「鴻池朋子 ちゅうがえり」
「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館帰国展示展」
アーティゾン美術館(2020年6月23日[火] - 10月25日[日])
https://www.artizon.museum

これから行きたい美術展〜気候変動〜をピックアップ

5月から再生可能エネルギーのベンチャー企業に参画する中、コロナの流れで、再生可能エネルギーという「分散型社会」への流れが、加速的に進むのを感じている。さらには、猛暑に豪雨と、今年の夏も気候変動を思わせる異常気象が続き、既存の制度や企業に依存しがちな日本も、さすがに「待ったなし」の政策転換がおきつつあるようだ。

ということで、次に行きたいのは、東京都現代美術館の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」(2020年6月9日[火]- 9月27日[日])。

公式ページでは、こんな解説。

オラファー・エリアソン(1967年生まれ)はアートを介したサステナブルな世界の実現に向けた試みで、国際的に高い評価を得てきました。本展覧会は、エリアソンの再生可能エネルギーへの関心と気候変動への働きかけを軸に構成されます。エリアソンは言います。「地球環境の急激かつ不可逆的な変化に直面している私たちは、今すぐ、生きるためのシステムをデザインし直し、未来を再設計しなくてはなりません。そのためには、あらゆるものに対する私たちの眼差しを根本的に再考する必要があります」

ミーハー的に以下も行く予定。

https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/22389

こういう時だからこそ、アートを見ることで、社会や自分と向き合い、そのことを誰かと話せることって大事だなと痛感しました。ソーシャルディスタンスが言われていますが、「アート鑑賞&生き方を語る」を、定期的に開催していきたいと思います。

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