物心

 自分の中の一番古い記憶ってなんですか?
 思い出せる限り、これが最古のものだなっていう自分の記憶。
 ここから「自分」が始まったなっていう記憶です。
 私はこれ、とある歴史的な出来事なんですよね。と言っても当事者だったわけでは全然ないんですが。
 お昼だったか夕方だったか、父がいたので夜だったかもしれません。1989年11月9日、もしくは翌日のニュースでした。落書きだらけの壁が崩れる印象深い映像が小さなテレビに映っていました。そう、あれです。ベルリンの壁崩壊です。
 壁が落書きだらけというのも幼心に印象的で、父も特に何が起きたか子供に説明しなかったので、長らくこの映像は私の中で名前のついていないものでした。
 学校で東西ドイツ統一について習ったときは衝撃でしたね。「ああ、あれだ! 見た覚えある!」と自分が確かにその時代、その瞬間に生きていたことをまざまざ思い知らされたんですから。体験と歴史がリンクするというのは奇妙な高揚を与えるものです。
 ただこの話、すごく不思議な続きがあって。私は少なくとも小学校6年生まで「ベルリンの壁崩壊が自分の一番古い記憶」と信じて生きてきたんですが、計算すると当時6歳だったことになります。でも私、幼稚園でお遊戯したりお手洗いに行ったりした記憶が残っているんですよね。ニュースの記憶はそれより前だという確信があるにも関わらず、最古の記憶ではなかったのです。
 いかんせん子供の頃のことなのでごっちゃになってしまっただけかもしれません。でもどうも、感覚的に「子供時代の私は未来のニュースを見ていた」と思えて仕方ないのですね。7歳までは神様の子、小さい時分は不可思議な経験をするものですから。
 というわけで、このnoteでは幼少期のお話なんかしていけたらなと思っています。生きてると記憶、薄れていくので。
 備忘録になりますので、面白おかしく書く気力はありません。未来の自分に読ませるために書いております。どうぞよしなに。