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パスポート更新。10年の月日に想いを馳せる(日々のトコトコ日記)

中学生か高校生くらいの頃に、「十年愛」といドラマを見ていた。
ダウンタウンの浜ちゃんと田中美佐子と大江千里が出ていて、はっきりと内容は覚えてないけど、1話1年で10年間を描いたドラマだったと思う。
そのときは、10年なんてそんなに長い時間を想像できなかった。
人生の半分よりも長い時間。
10代の自分にとっての10年は、あまりにも長かった。

初めてパスポートを取ったのは大学生の時だった。
5年パスポートだったと思う。
それから、尾道に住んでいたときに一回、東京で一回、岡山で更新したのが10年前で、来月に期限が迫っていたので都庁のパスポートセンターに行って手続きをした。
証明写真機で撮った写真がハレーションが強めだけどいいですかと聞かれて、ダメなら撮り直すけどダメじゃないならそのままでと、手続きしてもらった。
前にきた時は人が多くて時間がかかった気がしていたけど、今日は全然待ち時間もなくてあっという間に手続きは終わった。
天気が良かったから、久しぶりに展望台に登ろうと思ったら、緊急事態宣言で閉鎖されていた。
それもそうかと外に出る。
ビル群の上に真っ青な空が見える。

ちょうど10年前に岡山から東京に戻り、私は都庁の向かいにある高層ビルで2年ほど働いていた。
時々、お昼休みに新宿中央公園に行っていた。
懐かしくなって、とても久しぶりに中央公園に向かった。
公園は、あの頃から整備されて、明るく開けた感じになっていた。
スタバができて、広場でヨガをしている人がいて、ベビーカーを押す人や犬の散歩をする人がたくさんいた。
あの頃よく見た、ちょっと疲れた感じのサラリーマンとか、行き場のなさそうな人たちはどこへ行ったのだろう。
ちょっと奥の熊野神社の近くの、テニスの壁うちができるエリアは、あまり変わりなかった。
公園近くのたまにランチを食べたお店もまだあった。
あの頃の、30代後半にさしかかった頃のこと。
それまでのほとんどの時間を子どもと過ごした私は、あの頃初めてみる景色や経験することがたくさんあった。
あの頃の「感じ」を思い出して、あの頃見た景色が見える気がして、私は大きく息を吸った。

この10年で、私は置いてきたように感じていたほとんどを経験して、何かを取り返すために何かをする必要はないんだよなと思った。
とはいえ、こんなに何をこれからするのかわからないなんてね。
だけど、ずっともう詰め込めないほど色々なことが起きてきて、そしてそれは、私が特別そうなわけではなく、誰の人生も、どんなに優雅に見える人だってちょっと踏み込んで知り合えば抱きしめたくなるほどたくさんの色々を抱えてしまっているのが人生だ。
今、私はたまたま人生の隙間の時間ができて、あまりの生産性のなさに不安になることがありながらも、圧縮しすぎた時間をほぐし、あいた穴があったら埋めて、時に時間を広げて眺めるような作業をしている。

周囲の人に、これからどうやって生きていくのとか、今どうやって生活しているのとか、聞かれないのが不思議だけど、本当にみんなほとんど聞いてこない。
元気で生きているならそれでいい、この人はなんとかしていると思われている感じがする。

ここで働いていた頃は考えもしなかったことが、自分にも社会にも世界にも起きている。
つらいことに目を向けたら果てしなく悲しく、けれど、逆のことに目を向ければその色彩は果てしなく美しい。
ここまでのすべての時間が今につながって、今もまたどこかへ繋がっていくのだろう。

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