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詩誌 CROSS ROAD を拝読して。

詩誌 CROSS ROAD 22号
北川朱実 

 詩が3作品、2エッセイで構成されて
いる。北川作品のファンの一人としては
「乾杯!」、「エタノールの日」、「伊勢平野」
の中から、作品エタノールの日を取り出して
みた。

 第一連「山林で出会った/切り倒された
ばかりのシイの木」で、はた!と立ち止まった。
出会ったと書かれている。
出会うとすればシイの木は人としてここでは
書かれているのだろう。その人は誰なのか?

 大きな木に耳をつけると木の声が聞こえる。
これは私も何度も経験した。木によってその
声が違うのである。木と会話すると書く時は
この事を思い出す。
 書き手にとって切り倒されたシイの木も
人と人のように会話したものと捉えている。

ここでの出会いは、作品を読み進めていく
と、冷酒を飲む父にたどり着く。

 次の連にハッとした。「・・・百科事典の大切
部分に/線を引くように言う/何日も前から
渇いていたのか/胸の高さにあらわれた水平線を/
酔った父が泳ぎ出ていく」

 最初の疑問の答えがここにある。その人とは
父なのだろう。比喩を用いながらエタノールの日
をタイトルにしている。とすれば、百科事典の前の
―「エタノールには/活性酵素という毒を消す働きが
あるんだ」 と言う父の言葉を書いて置かなければな
らない。三度読んだ。三度とも読み手の解釈が少し
異なったが、行き着くところは父なのだろうという
思いは一致した(読み間違いかも知れないが)。

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