理由のない憂鬱

実家を出て1ヶ月が経つ。
私は結局猫と暮らさない、という選択肢が取れなくて誕生日が一緒の猫を連れてきた。
やっぱり猫は可愛くて、実家にいた時よりも甘えん坊になったなと感じる。
猫は言葉が話せないし私の言葉が伝わっているのかもわからない。でも確実に寂しいよ〜お腹空いたよ〜今なら抱きしめてもいいよ〜、全部わかる。
全部伝わる。
私の帰りを待っているという事実が生活を愛おしくさせる。
そんな愛おしい存在があるはずなのに落ち込むことも多い。

大して理由もない憂鬱に黄昏るのはダサいからやめて。

アフロが言ってた歌詞の中の言葉を思い出す。そう、理由なんてあまりない。
ただ久しぶりに帰って来た実家はやっぱりうるさくて1人になりたいなと思う。
でもあの人といるとこの人と一緒がいいなと思う。夜に1人でコンビニに行く。
実家にいる毛の長い猫がずっとここにいてと伝えてくる。毛の長い猫は私が家を出る前まではツンとしていて、自立していた。
家を出てたまにしか帰ってこないとずっと私の部屋にいるようになった。涼しくなった部屋で窓を開けて眠いな眠いな、と思っていると毛の長い猫が部屋のドアを手でなぞる。
私は部屋を開けて一緒に眠ろうと誘う。
薄っぺらい布団の中に猫が入って私のお腹の上で眠る。そんな彼女が愛おしくてこれが全て生活の一部だったらいいのになぁと心から思う。

もう私の生活はここにはなくて、猫たちの生活も私の元にはない。
そんなことを考えていると理由のない憂鬱が訪れる。私は1人で生きていくこともできる。でも猫がいるから元の生活に戻りたいと思う時もある。でも今、誕生日が一緒の猫が部屋で待っている。そんな生活がある。私はこの生活を生きていかなければならない。
たったそれだけの理由が夜になると爆発する。
大切に思うものを大切にしたい。 
ただそれだけなのに、私は生きるのが不器用すぎる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?