迷宮の主 第二話

 門を出るとまだ先に門がもう一つあった。石畳の道の両側には花畑が広がっている。
「どうだ?」
 若者が大男を振り返る。大男は言葉の意味がわからずに眉を少しだけ動かす。
「何がだ?」
「懐かしくないか、シビト」
 シビトと呼ばれた大男は鼻で笑う。
「覚えてないな」
 二人は石畳の上を歩いていく。
「ナサイン」
 ナサインと呼ばれた若者はシビトを見上げる。
「腹が減った。何か食わせろ」
 ナサインは頭の上で手を組む。
「ここの王様は思ったよりケチだったな。こりゃあ、代々ケチの家系かな」
「さあな」
 シビトのそっけない反応にナサインは舌打ちをする。
「何が食いたい?」
「焼いた肉が食いたいな」
 ナサインはシビトの背を叩く。
「デカイ体で想像通りの答えをしやがって」
 シビトはまた鼻で笑う。
「本当にやるのか?」
「拒否ならな。少しは待ってやるさ」
 先を歩いていくナサインを見て、シビトは城を振り返る。太陽の光に照らされた城は白く輝いていた。
「もったいないな」
「早く来いよ」
 ナサインが呼ぶとシビトはまたゆっくりと歩き出すのだった。


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