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日本のジェンダーギャップで触れられない「経済」の大問題 パート1


この国には、誰も触れない女性に関する労働問題がある。たとえそれがこの時代に葬り去られたとしても、完全にそれが消え去るわけではない。女性たちは苦しんできた。だから誰もが一度真剣にこの問題と向き合わなければならない。

今日から数回に分けて、その原因について書いていきたい。かなりかたい文章になるけれど、この国のジェンダーギャップは未来の子どもたちの問題でもあると思っている。



ギャップの内訳

6月21日に世界経済フォーラム(WEF)が発表した男女格差の2023年の報告では、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位だった。日本の位置はモルディブの次で、ヨルダンより一つ上だ。

それを分野別にみると、政治が138位経済は123位。この2つがギャップの大きい分野だ。

それに対して、健康は59位教育は47位。数字だけ見ると、教育は最も男女平等に近づいているように感じられる。

ただ中等教育までは日本は完全に男女平等だけれど、高等教育では105位

その内訳を「令和2年版 男女共同参画白書」でみてみると、大学進学率男子56.6%に対して女子50.7%

大学院進学率は男子14.3%に対し女子5.5%と、高等教育の中でも大学院進学率に男女格差大きいことがわかる。



経済のジェンダーギャップ

ここで、経済の分野で4項目の調査結果の中身について少し考えてみたい。

その4つの指数で最も開きがあるのが管理的職業従事者の男女比だ。そのため、もっと女性の役員を増やそうという声が今大きくなっている。

けれど、それは結果に過ぎない。なぜ女性の役員が少ないのか、そこには原因がある。早急に女性の役員のみを増やす手当をしても問題は先送りされるだけだ。わたしたちが考えなければならないのは日本の労働市場に捨て置かれたままの本当の原因だ。

その経済分野で、管理職の次に男女差が大きいのが推定勤労所得、その次が同一労働における男女の賃金格差、最後が労働参加率の男女比だ。

つまり、労働市場は男性の方が多く、同じ働き方をしていても男女に賃金差があり、所得の男女格差が開いているという社会にわたしたちはいるのだ。



労働参加率のギャップの原因

①雇用差別禁止法

日本の企業は欧米の企業とは異なる。欧米には、そもそも差別禁止という考え方がある。これは米国でキング牧師らで進められた公民権運動で人種差別を禁止する公民権法が1964年に成立し、その流れで働く場にも人権保障の考え方が生まれている。それが1970年にはイギリス、カナダなどに広まる。

そのため、欧米諸国で一般的に差別と認識されているもの、つまり、以下の内容を企業の入り口、採用時の際に禁止している。

人種・出身民族・宗教・信条・障害・年齢・性的指向による差別。


②日本の雇用差別

けれど、日本にはそれを包括的に禁止する立法はまだない。現在あるのは、

労働基準法で禁止されている、国籍、信条、社会的身分による労働条件差別の禁止と、性差別については賃金差別の禁止。

そのため、欧米と日本とでは、履歴書の書き方が明らかに異なる。しかも、

2007年の雇用対策改正で、労働者の募集・採用において年齢制限をつけることが原則禁止になった(労働施策総合推進法9条)。

けれど、現在でも女性の転職は35歳までという、誰もが思う転職の常識がある。そうした年齢の記載は、ネット上で今も多々見受けられる。

こうして女性は、今も30代で労働市場から締め出されて行く。



おわりに

現在、日本のジェンダーギャップを埋めようとして最も聞かれるのが、女性の政治家と女性の管理職を増やすこと。もちろんこの2点が際立って他の国々に劣っていることは確かだ。けれどなぜ女性のリーダーが育たない国なのか、そこを考える必要がある。教育分野をみると、女性の半数は高等教育を受けている。その国で、経済と教育にこれほどまでに開きが出るにはちゃんと原因がある。

今も採用時に女性の年齢差別が無くなっていない。それは法律に無頓着な企業があり、そのことを労働者も知らないという問題があるからだ。なにしろ日本の労働法は恐ろしい回数変化している。それでも、日本では履歴書から年齢が消えてはいない。これは包括的に雇用差別を禁じる法律を持たないためだ。


※パート2はこちらをお読みください。



※最後までお読みいただきありがとうございました。


※スタエフでもお話ししています。

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