見出し画像

罪悪感を手放す。


自分の中に棲みついた罪悪感とはやっかいなものだ。普段は気づかないけれど、ふとしたことで心がチクリとして動けなくなる。

そして苦しい。

その罪悪感はふとした時に勝手に動き出す。たとえば、

「仕事のできる女性は料理が上手い」
「賢い女性は料理上手」

こんなコピーがある。よくよくみるとチグハグな文章だ。2つを結ぶものがない。けれどこんなコピーが女性になぜかうける。

だから、手早く料理をする女性を、なんて素敵な人なんだろうと憧れてしまう。そうして食べることにさほど興味のない女子は、自分って駄目だなと思ってしまう。

こうしたコピーが女性に受けるには前段階がある。

それが2つの言葉をつなぐ接着剤だ。それがなければこのコピーの意味は不明なままだ。

その接着剤とは、世の常識


このコピーには、料理=女性がするもの、という書かれてはいない常識がある。

疲れて帰ってくるお父さんには美味しい夕飯を用意しなきゃいけない、そんなことが日々口にされる。プロの料理人のほとんどが男性だというのに、家の料理は男にはできないという常識が積み上げられる。

これが刷り込みの前段階。

そう、優秀なコピーライターは、主張したいことと、世の中の常識を掛け合わせる。すると離れていた言葉が急接近し、うまく繋がり、めでたくコッピーはヒットする。

すると、そのコピーが、さらにわたしたちに刷り込まれ、体に沁み込み、料理上手=いい女、という根拠のない自信や罪悪感が体の奥深くに刷り込まれていく。


先日こんな話を聞いて泣けてきた。

30代半ばで親の介護をされている方の話だ。もう4年目だという。わたしも母の介護が4年目なのでそれがどういうことかがよくわかる。しかもその方は親御さんの体のケアまでされている。大変な日常だ。

その方に、義母が2人になった時に限り、わたしの介護もよろしくねと言われるのだそうだ。

そして彼女は苦しい。

ここだ。

この苦しいはサインなのだ。

罪悪感が発動しているサイン。


本当は、そんなことを今は言わないで欲しい、気持ちに負担のかかることを、こんなに苦しい今、平気な顔で言わないで欲しい、そう感じているはずだ。誰だってそうだ。

けれど彼女の中には刷り込まれた常識がある。嫁は姑の介護をしなければならないという常識だ。その常識が彼女の罪悪感となり、義母の言葉を跳ね除けることができない。

だから苦しい。

5万回目にして、8万回耳で聴いたことを、一度に手放すことはそりゃ難しい。それでもやってみる価値はある。自分で罪悪感を手放す訓練をしたらいい。

苦しいと感じるのは真実を知っているから。

だから苦しいときのサインは見逃しちゃだめだ。

苦しいとわかっていることを誰だって簡単には引き受けられない。それでもそんなお願いを気軽に口にされるということは、彼女の人生の価値を低く見積もっているということだ。だから彼女は苦しい。たとえそれが世の中の常識であったとしても、今の彼女に一番必要なのは自由になることだ。それがなければ希望がない。

民法で介護した嫁にも相続権が与えられるようになった。それが介護した嫁を保護すると同時に、逆に、嫁は親の介護をしなければならないというサインにもなっている。けれど、そんなサインは受け取らなくていい。日本には介護保険も整っている。日本の介護保険で家で介護する人に介護費用が支払われないのは女性の訴えがあったからだ。それでは嫁は外へ出られなくなると。だからたとえ親が家で介護が必要でも、嫁はよその家の介護をする。プロとして。そして賃金を得る。この方が健康的なのだ。

だからこそ、親が元気な時に話し合い、介護の方法を皆で考えたらいい。

たとえ毎日微笑んでいたとしても、彼女は沢山のことをこらえて暮らされている。家の中に閉じ込められてケセラセラと笑える人がいるなら連れてこいと言いたくなる。ごめんなさい、言葉がちょっと乱暴ね。それほど動けないというのは人を孤独にするものなのだ。介護する側の人間に何年も置かれると、人は社会的弱者になる。心だって弱る。

世の常識がすべて正しいなんて思わなくていい。

心がチクリとして苦しい時には、何かがおかしいと立ち止まった方がいい。

自分の心を大切にしなきゃだめだ。


そして刷り込まれた罪悪感は手放して欲しい。

罪悪感とは実に危ないもので、それは人に利用されやすい。誰かの中に棲みついた罪悪感を人は実に巧みに利用する。

心がチクリとしたときには、もしもわたしが男性だったらどう思うだろうと考えてみるといい。「いや、そりゃ無理だよ、今これだけ苦しんだから、やめてくれよ」と簡単に口にできるかもしれない。そうしたらプロにお任せする選択を皆で考えることだってできるかもしれない。

2人になった時に自分を追い込むような話を持ちかけられ、それがチクリと心に刺さり苦しいのなら、その話しは表に引っ張り出してしまおう。

2人だけのこっそり話をみんなの話しにしてしまおう。

こっそり言えない人に、自らなろう。

あなたの罪悪感をうまく利用されないように。

閉じた場所には、自ら光を当てよう。

女性たちは知らず知らずのうちに罪悪感を刷り込まれている。

そんなものは捨ててしまおう。


※最後までお読みいただきありがとうございました。

※お読みくださりありがとうございました。


※スタエフでもお話ししています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?