中国から見たトゥーランドット~ピン・ポン・パン
みなさま如何お過ごしでしょうか?いつもはtwitterでつぶやいておりますが、今回は長文のためこちらを利用してみました。歌劇トゥーランドットは架空の中国王朝を舞台にしたお話ですが、日本人から見た蝶々夫人のように、中国人から見たこのオペラについて調べると3人の大臣ピン・ポン・パンについてちょっと興味深い記事がありましたので、ご紹介したいと思います。
以下、2018年1月25日 新民晩報記事より抜粋
歌劇《トゥーランドット》は未完の傑作であるだけでなく、プッチーニが中国を題材として作曲した唯一のオペラです。このオペラには中国民謡“茉莉花”(ジャスミンの花)調が使用されているため、聴くと懐かしさを感じるでしょう。また、このオペラには外国人が想像する中国的要素が沢山詰まっています。その中で最も中国テイストを出しているのは、神秘的な王女様…ではなく、色とりどりの華やかな衣装でもなく、それは物語に終始登場する三枚目、情感豊かに人生の真理を語る3人の人物、ピン・ポン・パンなのです。
このピン・ポン・パンは唯一無二の特別な役。西洋劇によくある「三枚目」の定義を覆し、プッチーニが彼ら3人に託した思いは主役のカラフに劣らず、ユーモラスな役割に加えストーリー進行にも大きな役割を担い、時にはストーリーテラーとして前後の因果関係を語り、時には神様の視点で人の心を読み解き、ムードメーカーとして大きな役割も果たしています。
ピン(平)・ポン(彭)・パン(龐)の名は苗字のように聞こえますが、実は中国の鑼鼓経の音がその由来〔鑼鼓経(らこきょう)とは、京劇に使用される独自のパーカッション群のこと〕。ユーモラスな演技はヴェネチアのコンメディア・デッラルテ(仮面を使用する演劇)に通じ、本編中でピン・ポン・パンが歌う曲は中国音楽の真似ではなく、意外ですが中国語の音調に注目し、漢字の持つ深い韻をイタリア語の歌で表現したものなのです。
上海音楽学院作曲科の副教授 田芸苗さんはその奥深さをこう語ります:
「このオペラから作曲者が中国文化を理解していたことが読み取れます。ピン・ポン・パン3名で歌われる《わしはホーナンに家がある》、この歌詞に出てくる青い小さな湖と竹林に囲まれた環境は、まさに道家(世俗から離れ、無為自然を尊重する思想。竹林の七賢などが有名)の追求する生活であって、中国古代哲学の本質を捉えていると言えます。」