見出し画像

ペン画技法書『ペンで描く』にハマった話

こんにちは、普段ツイッターで絵の練習成果をツイートしている者です。
漫画を生き生きと伝わる画面で描きたいなをコンセプトに練習しています。

さて、最近『ペンで描く』というマール社さんが出している本を買いました。名著。今のところ、11章の途中まで読んでます。

今日はこの本にハマり倒しているという話をしたくてわざわざnoteを開設するに至りました。このパッションを吐き出さずにはいられなかったのです。ちょっとお付き合いください。

■白浜鴎先生にインスパイアされた話

前置きとして、『ペンで描く』を買うきっかけになった本を紹介したいと思います。白浜鴎先生の『とんがり帽子のアトリエ』の複製原画集です。

これです。この、複製原画集は、強い。
複製原画なのでうっすら残る鉛筆の跡や、インクの僅かな凹凸、ベタの上に引かれたホワイトのグラデーションなど、一般的な印刷では表現されていないナマの手描き感が見て取れる本です。何よりも、高い画力で工夫されて作られた画面(構図もすごい!!)をペンで丁寧に生き生きと描きあげてる様に圧倒されました。強い。
とてもしっかりした本文用紙、おそらく漫画原稿用紙と同等の紙で作られている本なので本自体の重量的にも強いです。振り回せば凶器となる。
この本の紹介もじっくりしたい所ですが長くなるのでまた機会がありましたら書きたいと思います。欲しい方は受注生産の本なのでご注文はお早めに。
申し込み締切は2019年7月31日です。

この複製原画に大変な感銘を受けました。こんなにもアナログのGペンで描かれた線は魅力的だったんだ、と再確認した次第です。
私の話になりますが、現在漫画はフルデジタルで作画しています。フルデジタルになってから6年程でしょうか。
以前は私もアナログで描いていたのですが作業効率を上げようとフルデジタルに切り替えました。それ以後、アナログでの作業は稀になり、Gペンは棚に眠らせていました。

しかしですよ、白浜先生の線の生き生きとしたことよ。線を引くことを楽しみまくってるとしか思えない絵。私もGペンで描きたくなりました。
描きたくなったはいいものの、ただただ無作為にらくがきした所で何の学びもなさそうなわけです。多分飽きてしまう。何か参考になることはないかと思い白浜先生のツイートを深追いして、見つけたのがこのツイートです。

おわかりいただけただろうか。
1枚目の画像に『ペンで描く』が写っているのが。
これで先生は勉強してるのか、よし真似しよう!と思って早速ポチりました。近年、真似ることの重要性をビンビンに感じているので何か琴線に触れたらすぐにマネっこです。

■『ペンで描く』届く

さて、前置きが長くなりましたが『ペンで描く』がいよいよ届きました。この時ついでに白浜先生と同じペン軸も買っています。形から入ります。インクは自宅にあったPILOTの製図用インクを使うことにしました。
しかしこの本、表紙の絵が細密描写すぎる。正直この表紙で買うのを躊躇いました。だってこんなに細かくペンで絵を描ける気がしないし、描きたいとも思わない。私には過ぎた本だったかな…と不安に思いながらも本をパラパラめくってみるとステキなスケッチがたくさん。ラフめなものも多く載っていて「この辺!この辺ならなんとか!私でも…!」と半ばラフスケッチに縋る形でページを読み進めました。

冒頭の方ではペン画に必要な道具が紹介されています。この本、1930年に原書が出たので載っている道具も実にレトロなものばかりでとても興味深いです。棒状インクというものを使っていた時代もあるそうで、本書の中でも「現在ではほとんど見かけない」と書かれています。多分書道の墨みたいな使われ方をしていた道具なのかな?と思っているんですが実際どうなんだろう。

■ペンの持ち方から見直してみた

道具の紹介のスケッチもステキだなあと思いつつ次の章に進むと「初歩的なペンの扱い方」という章に。心構えとして、

時間をかけること
初心者はあまり先を急がず、確実に1段階ずつ習得していくこと。ピアノと同様、徹底的な初歩訓練をしなければ必ず障害につき当たって、どんな作品も完成させることはできなくなる。まず、ペンの扱い方を習おう。
(本文から引用)

「それな」と思い、本気で著者のA.L.グプティル先生の書いた手順通りにしてみようと思いました。私は元来面倒くさがりなのでこういったチュートリアル的部分をすっ飛ばして、気になった項目だけ読んで満足してしまいがちだったのですが、今回は真面目な生徒になることにしました。

心構えや座り方の次に「ペンの持ち方」という項目が出てきました。

指はペン先から十分離し、ペン軸は強く握らない。
(本文から引用)

マジか、と思いました。私、今まではペン先のめちゃくちゃ近くをぎゅっと握って描いていました。書かれている通りに線を引いてみると以前よりリキむことなく、比較的ブレずに線が引ける。まあ、言っても線はブレてるんですけど…。比較的、という話。
先生の言うことは聞いてみるもんです。

■実り多き初歩練習

この章では初歩的な、水平線、垂直線、斜めの線や入抜きを練習します。その様子をツイートしたものが下記になります。

そう、へたくそなんです。まあ、数年ぶりのGペンだからね!という言い訳を内心でしながらの初歩練習です。これがなかなか難しい。ペンの持ち方を意識しつつ、線の方向、強弱にも気を配るという練習なので集中力が必要です。
しかし線を引いているうちに「お?これはいいのでは?」と思える線が引けるようになってきました。
このタイミングで「え…ペン…たのしい…すき…」ってなったんです。思い通りに線が引けるってだけで楽しいんです。
よく描けたな、という線を薄ら笑いで見つめていると、なんとなく何かの漫画の中で見た線にも見えてきて「私はこういう線を描きたかったのかー!」と描いてから気付かされることも。
ラインクオリティーをペンで表現する練習、とても大事ですね。
好きな漫画の腕、服のハリの表現、描きたかった布のふくらみの強弱を感じる線。そういうものがもしかしたら私にも描けるのかもしれない、と思わせてくれた初歩練習でした。
(ラインクオリティーに関しても色々言いたいことはあるのですが、あまりにも長くなりそうなので割愛します。)

妙な話ですが絵の練習をしていると描いてから自分がやりたかったことはこれだったのか、と気づくタイミングがあります。ペンの練習でもこの体験ができて幸せです。もっと早くからやってればよかったなとも思いますが私にとっては今が学びのタイミングだったんだと思うことにします。

■マスターコピー(模写)

こんな初歩練習を、1日30分程度、毎日は無理でしたがしばらく続けてみました。A4ケント紙3枚程度を意味のない線でいっぱいにしました。こわい。海外ドラマでサイコパスの部屋から発見されるノートみたい。こわい。
この間に線によるトーン(陰影)なども本から習い、頭に入れておきました。段々とひどい線を描く率が下がってきたなと思い、次の練習に移ることにしました。
マスターコピー、いわゆる模写です。
グプティルさんが「描き写してみるといいだろう。」と言ってるスケッチをコピーしてみました。

マスターコピーのいいところは、見ているだけでは分からなかったことが描くことで理解できるようになる点かと思います。描くことそのものよりも、描く過程で先人の絵を微に入り細に入り観察することが重要なのかなと感じます。すごく細かい所まで観察しないと描き写せないんです。
そして、何よりいいのが自力で描いてないのにすごく絵が上手くなったように錯覚できることです!これ大事ですよ!練習してて自分の絵の下手さにへこたれることって往々にしてあると思うんですが、マスターコピーするとなんか自信が付くんです。
もちろんコピーしてるので自信も本物の自信じゃないんでしょうが、次の練習にやる気を持続させるためだったらウソの自信だって使っていきます。

あと、このお手本の絵、80年以上前に描かれてるわけです。80年以上前のアメリカで、40歳手前くらいの年齢だった絵の先生が描いた絵を、今、日本で私が描いてるっていう不思議体験ですよ!
なんか、こう、わくわくしませんかね?時間も場所も繋がってるんだ!っていうプチSF体験な感じが地味に興奮するんですよね。
読んでる人に伝わってない気がする、この興奮。

■80年以上前の本だからこそのエモさ

80数年前に書かれたという点もこの本の魅力だと思います。日常雑貨の静物スケッチなどが多数掲載されているんですが、雑貨たちはもちろん80年前の雑貨なわけです。全てが今となってはアンティーク。

超、いい。

皮表紙の古い本や、ろうそく立て(アロマキャンドルではない)、日常的に使われていたであろうビューローなどなど。今だったらIKEAあたりのシュっとしたシンプルなデザインになっちゃいそうな椅子も、職人が作った一点物みたいな雰囲気が出ててとてもいいんです。
古いもの、いい。好きです。描きたくなる。

そしてそんなスケッチと合わせて文章を読んでいると、当時のアメリカの画学生になったような気分に浸れるのもいいんですよ。もともと学生に向けて書かれた本らしくて、ちょいちょいグプティルさんが私を学生扱いしてくるんです。いい。
第2次世界大戦前の、まだ高層ビルもなく煙突から煙が出る街に、機関車に乗って田舎から出てきたアート学生気分ですよ。
母さん、妹たちは元気ですか?月末には帰ります、私の好物のミートパイを用意しておいてね、みたいな手紙を書くような学生ですよ。
古典の何がいいってこういうタイムスリップ体験ができるところですよね。
いや~~エモい。

■ペン入れが苦手な私が希望を持てた

そんなステキな本に出会えて今、とても楽しいです。
実は私、漫画制作の過程でペン入れが以降が本当に苦手でして…。本当は下書きのまま完成にしてしまいたいんですがそういうわけにもいかず、ごまかしごまかしここまできてしまったのです。苦手意識が強すぎて練習する気持ちにもなれませんでした。
なので白浜先生に触発されて自発的にペンの練習したい!という好奇心が湧いてくれて助かりました。ペンで描くことにこんなに真面目に向き合ってるのは初めてです。先人の教えに愚直に従って、教科書通りの型を知ることの重要性を実感しつつあります。

今も漫画を描く時はデジタルで線画を描いているんですが、かなり大きな意識の変化を感じています。アナログのGペンで練習した、1本の線の意味を考えて引くということがデジタルでもできるようになってきました。
多分ですが、初めからデジタルでこの本を実践するのもアリなんじゃないかと思います。クリスタだとリアルGペンなどが使いやすそうな気がする。デジタルならサイコパスな紙が部屋に増えないのもいい。

■最後に

長くなりましたが『ペンで描く』、実践するととても楽しいよ、というお話でした。何しろまだ読了していないので最後まで読んだらまた感想や練習内容が変わりそうな気がしますが、とりあえず今のこのアツさをどこかに吐き出したくてこのnoteを書きました。楽しかったです。
こんな自己満足な文章を読んでいただきありがとうございました。
ツイッターで「ペンで描く部」みたいなぬるめの活動したいなあと思ってるので何か始めたらここに追記しますね。ハッシュタグ付けてペンで描いたものをツイートする感じになるかな。

それでは、お疲れ様でした!

■追記:ハッシュタグ作りました(2019/07/04)

下記のノートにハッシュタグの使い方等をまとめましたのでよかったら参加してみて下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?