82冊目:あおのたつき/安達智

こんばんは、Umenogummiです。

きょうはこちら。


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あおのたつき/安達智 作


吉原のとある稲荷の奥にあるという浮世と冥土の境目に、強く霊験のご利益を求めるものが迷い込む「鎮守の社」があります。

そこに売れっ子遊女の濃紫(こむらさき)が迷い込み、宮司の楽丸と出会います。なぜか幼い姿になっていたため、楽丸は彼女のことを濃紫が童女のころ呼ばれていた「あお」という呼び名で呼ぶようになります。

冥土にも吉原があり、冥土の吉原ではみな思い思いの姿かたちをしています。楽丸からそれぞれ生前の想いにとらわれた形だと説明され、「あなたはどうして童女の姿なのか」とあおは問われます。

さらにあおは異様に金銭に執着し、楽丸は強いわだかまりが恨みへと変わり、悪霊へと変わるのではないかと彼女を案じます。


そこへもうひとり、おのれの醜さや嫉妬心に囚われた遊女が現れ、あおは彼女を煽りつつも本心を引き出し、楽丸がその穢れを払うことで彼女は救われます。

あおは遊女を救うことでたつき(生計)の手立てを見出し、浮世へ戻れぬのならここで雇えというあおに困惑しつつも、楽丸はあおの奉公を認めます。

悩ましき人の複雑な心をあおが話を聞いてやることで解いてやり、楽丸が穢れやとりついた悪霊を払います。やがて二人はともに魂を導く相棒になっていきます。


吉原の背景や、幼いころに廓へ売られたり、廓で生まれそこしか知らない純真な心を持つ遊女たちの心情を丁寧に描いています。
遊女たちの苦しみを、同じ遊女であるあおが理解し、語り掛ける。姿こそは童女ですが、あおはなるほど売れっ子の遊女だなあと思わせる気品や気概を感じます。




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