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「綺麗ですね」と僕らはなぜ言うのか。

仕事でもプライベートでも、「綺麗な人」に出くわすことがたまにある。

僕はたびたび「綺麗な人ですね」とお相手に言ってしまうことがある。

「綺麗な人」にとっては「綺麗な人ですね」と言われるのは「良い天気ですね」という言葉と同じくらいの意味しか持たない。藤沢数希的にいえば、美人にはdisる技術が有効という説があり、むしろ逆効果だ。

それでも、僕はたまに「綺麗ですね」と言ってしまうことがある。

なぜなのだろうか。

一つは、ささやかながら自分の好意を示したいという願望からか。いやいや、こちらが相手にされないなんてわかっている。しかし、好意を示すことで、返報性の原理を無意識的に期待しているのかもしれない。

もう一つは、ただ綺麗なものに綺麗と言っているだけ。それは景色のようなものであり、美味しい食事に美味しいというだけのことと一緒。その対象が、目の前の女性であっただけ。

はじめて出会った「綺麗な人」だと、緊張して上手く話せないことがある。嫌な汗をかくこともある。それでもどうしても、「綺麗ですね」と言いたくなる衝動を抑えきれないことがある。言ったからといって、どうにもならないのに。むしろ、逆効果のリスクの方が高いのに。

そんなことって、ないだろうか?

男性がぎこちなく「綺麗ですね」って女性に言ってくるとき。何気ない一言に思えて、「良い天気ですね」くらいの意味にしか捉えられなくて。しかし、言葉を発する男性にとっては、思いの外この手の思考の堂々巡りの果てに、やっと出てきた言葉なのかもしれないということを、「綺麗な人」には頭の片隅に置いておいていただければなと思う。

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