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新生児聴覚スクリーニングの課題(人災編)

新生児聴覚スクリーニングをパスしたといって、その後も安泰と喜んでいてもいいのだろうか。

新生児スクリーニング検査はあくまでも新生児期だけの状態を表すもの。その後、成長とともに中耳炎になるなどで難聴になることもある。また内耳の機能は問題ないからパスだったけど伝音性難聴(耳小骨の骨化 外耳道閉鎖などなど)が隠れてたなんてこともある。

やはり普段から子どもの言語発達や聞こえに敏感であり、なにかおかしいと思ったらSNS使うなりしてアンテナは張っておくのがよさそうだ。耳鼻科に相談というケースもあるだろうが耳鼻科の医師の守備範囲はとても広く難聴について不慣れな医師が多いのも事実。医師の言葉だけをうのみにして難聴を見逃してしまったケースもよくある。一ヶ所だけの情報を頼りにするのではなく色んなところから情報収集に努めておくのがよい。もし難聴とわかったらすぐに動くこともできるだろう。

もし、新生児のときに本当に難聴があることがわかったら、できたら1歳半になるまでに脳に音を入れて脳のシナプス(神経連絡繊維)を増やしてあげよう。そう、実は子どもの脳は生まれたときは未熟で母体から出てやっと急激に発達し1歳半で大人と同じ脳の重量になるという。

脳の発達のため、より早い段階で十分な音声に触れること。またより早い段階で視覚情報(手話など)を用いてコミュニケーションの土台作りをすることが望ましい。

ここで せっかく新生児スクリーニングの案内があっても受検できていない児がいるという事実をお伝えしておく。

産婦人科医会より

・東京都の新生児聴覚スクリーニング実施施設 92%

・東京都の新生児聴覚スクリーニング検査実施率 80%

2019年から東京都はスクリーニングを公費助成としたにもかかわらず、受検しなかった家庭がある。なぜこんな現象がおきるのか。

公費助成があると言っても『任意』の検査ですと伝えれば、果たして全員スクリーニング検査を受けにくるだろうか。「兄弟の時は大丈夫だったし」「公費も全額補助でない。多少の費用がかかるなら受けない」「OAEならお金かからないからそちらだけでいい」そう考える親がいてもおかしくはない。都はABRとOAEを必須の検査にしていないことが盲点であり、将来の納税者をみすみす逃している(行政の立場からみれば、後々 学習を積んで就職してもらい 税金を払ってほしいはず)。同じことが予防接種などにもいえ、任意とされているものは接種率が低いそうだ。

東京都と同様の問題は全国にもみられる

課題①市町村によって受検率にばらつきがある

新生児聴覚スクリーニングの検査実施率は自治体によって大きな差がある

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課題②公的補助が不十分 または ない

厚労省は現時点では新生児聴覚スクリーニングについては一般財源化していることで財政措置は済んでいるとの立場だが

 ・公的補助を行わない自治体があるということ

 ・公的補助を行っても額が低く、親に自己負担が発生していること

少しでも自己負担があると新生児聴覚スクリーニングは全例実施につながらない。残された課題である。

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難聴対策にとって新生児聴覚スクリーニングは最も重要な起点でありそこでつまずかないよう、すべての子どもが障害壁の克服のチャンスが与えられるよう検査は無料化になることが望まれる。

また新生児聴覚スクリーニングは単科で完結するスクリーニングではない。難聴は障害に渡り続くことが多い。社会全体が連携していく取り組みが今後の展望である。

<全例検査実現のために>

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