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三江線の旅(2)

粟屋駅を出て、長谷駅まで歩きだした私とKさん。

うーん。

「なんにもないですね」

同じようなことをずっと言ってしまいますが、ほんとうになんにもないんです。

自販機だってないんです。ただただ道沿いに江の川がドカーンと流れているばかり。

「川にかかる橋も見当たらんなあ。向こう側に行くのが大変そう」
景観は素晴らしいですが、通勤や通学や買い物に際しての不便さを考えると過疎化は進むだろうな……という感じです。

歩いていると、線路が見えてきました。



いよいよ長谷のお出ましです!
「あったー!!!!」



Kさんと写真を撮りつつ喜びあっていると、車で駅にやってきたおじいさんが。

社交大臣Kさんはじつに自然におじいさんと話しはじめます。
お話を聞いてびっくり、このおじいさんはもともと国鉄の運転士さんだったそうで!
三江線との別れを惜しんでここに来られたとのことでした。
鉄道には歴史があり、いろんな人生を乗せて走り続けてきたんですね。

さらに嬉しいもの発見!

牛山さんの管理する駅ノート!


スッカスカの時刻表


さて、そろそろ列車がやってくる。
のですが、Kさんは弱気です。

「乗れないかもしれない。積み残しとか普通にあり得る」

ラストランを追いかけてきた経験の中で、実際に積み残されたことがあったのだそうです。
しかし私としてはあまりそのような状況がイメージ出来ておらず、お気楽にへらへらしていたわけです。

この少年は撮り鉄パパのモデル役として立たされてた人


……おお。
おお、おお……

実際にやってきた列車は満員も満員。パンパン、鮨詰め状態です。

Kさんは青くなっています。
「これはムリだ」
しかし乗るしかないのです。
私が乗ろうとすると多少、奥の方に人が流れて行ってくれたので、なんとか二人で乗り込むことができました。
(どうやらこの日はツアー客の団体さんで込み合っていたようです。
あの人数で一両編成は無理があるだろう、とKさんはちょっと渋い顔) 


あちこちでみんなが手を振ってくれている


ぎゅうぎゅうに詰まりながら口羽まで。口羽から折り返して帰路につきます。
江津まで行ってみたいのはやまやまですが、日帰り旅なのでこのぐらいまでが限度です。
いろんなところに「ありがとう 三江線」の横断幕。




この車窓からの景色もじきに失われるのでしょう。
廃止前に見に来ることができて本当によかった。


帰りは福塩線経由で帰りました。
ここからも単行の気動車です。


Kさんと平和に談笑していたのですが、途中でトイレに立った乗客がトイレ内で煙草を吸ったとか吸ってないとかで車掌さんにめちゃくちゃ怒られていて、車内がなんともいえない空気になりました。

……最後ちょっとモチャッとしちゃいましたが、そんなかんじで三江線の旅は終わりました。

私が2年前ぐらいに買い替えた路線図帳には、もう三江線はありません。
だんだん忘れられていくのでしょう。

でも私はきっと忘れません。
ずーっとずーっと続く江の川、自販機もない道、小さな駅、元運転士のおじいさん。
そしてまた三江線の気配を感じたくて広島、島根あたりまで旅に出てしまう気がします。


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