コシチェイという呪いについて

1.史実におけるコシチェイ

 スラヴ神話における醜い老人、コシチェイには様々な逸話がある。そもそも語られている神話が口伝によって広められたものが多く元になった人物が居るのかすら不明であり詳細に残された文献も少ない。その名前は西洋の言語で骨を意味するものが元となっているとされ彼の肖像も骨ばった顔つきで色白だというものが多い。

 彼は肉体とその生命を分けていて、串刺しになろうと火に焼べられようとその生命が尽きることはない。口伝によるとその生命の所在は針の先にあり、その針は卵に、卵はアヒル(鳥類)の中、アヒル(鳥類)はウサギの中、そしてウサギは鉄箱に収められているとされている。鉄箱はある孤島の木の下に埋められているという。箱を手に入れた人物が彼の命、更には全権を手に入れることができるとも語られておりその鉄箱こそが彼の最大の強みでありアキレス腱でもあると言えよう。



2.テラにおけるコシチェイ公爵

 さて、テラにおけるコシチェイは雪深い熊の帝国ウルサスで公爵という爵位についている。隣国の龍門とも因縁があり龍門からドラコの娘を養女として迎えている。最新の観測において彼は養女の精神に侵入する形でウルサス事変に介入していることが明らかになった。

 史実におけるコシチェイとここで語られている公爵、現段階だといくつか抜けている設定が存在する。その生命を別のなにかに宿らせるという点では共通しているが、針、卵、アヒル、ウサギ、鉄箱という役者が登場することは無かった。もしこの役者が揃うことがあれば物語の大筋が鉱石病の患者達の物語から、テラの人々がコシチェイという潜在意識に存在する悪意と対峙する物語にシフトしていくのだろう。

 物語の中で公爵は「千年」という表現を使い、長きに渡ってテラの世界を見てきたと語っていた。このことから推察するにウルサスにおける公爵は数百年に渡って受け継がれてきた『コシチェイ』の一人であると言えよう。
 第8篇の最終盤においてドラコの娘、タルラと公爵が内なる対話をする場面がある。ウルサスにおいてその肉体を失った公爵の意識は今田彼女の中に存在している。そして、未だ見えてこない鉄箱の所在も今後彼女が彼と対話していく中で明らかになっていく可能性が高いだろう。



3.コシチェイとテラとロドスアイランドについての考察

 ここまでの情報をまとめるとコシチェイは肉体と生命を分かつ事できる術師的人物で、その起源はテラにおいて千年まで遡る。神話においても『醜い老人』という表現にとどまり、性別やその細かい特徴に関しては諸説あるのだろう。テラにおける彼は千年にも渡りテラという世界を、天災に見舞われながらも生きていく先民(エーシェンツ)を「愛」を持って見守っていたと語っている。ロドスアイランドを取り巻く物語が今後どういう道筋をたどるにせよ、再び彼が木々にまとわりつく蔦のようにしつこく関係してくることだろう。

 鉄箱はどこにあるのか、アヒルとウサギは先民にあたるのか、卵は産み落とされるのか、針は折られるのか。彼の命について興味は消えることはないが更に詳しく語れるのはもう少し時間が立ってからだろう。
 
 コシチェイが先民に寄生することで長い時を生きているのであれば寄生先がタルラ一人とは考えづらい。肉体と命を分けてまで延命しようとした人物がただ一人にだけ自分の意識を継承させるというのは強欲な生存本能とはかけ離れてしまう。二人目、三人目のコシチェイによるさらなる動乱は天災や鉱石病と同じようにテラの世界を呪い続けていくのだろう。

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