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アップデートされていく「アカトキ」Kusunoki Tomori Birthday Candle Live『MELTWIST』感想

楠木ともりさん21歳のバースデーキャンドルライブKusunoki Tomori Birthday Candle Live『MELTWIST』を観させていただいた。
この時期毎年バースデーライブを行っている彼女だが、誕生日当日である12月22日に開催は初めてということである。昨今の状況を鑑みオンラインのみでの開催だったが、今年はそれを考慮した画面越しだからこそできる演出やステージには大量のキャンドル風ランプではなく本物のキャンドル(しかも100本近く)置くなど彼女のこだわりを感じた。

ライブには様々なスタイルがある。ペンライト片手にみんなで盛り上がったり、ジャンプしたりヘドバンしたり、はたまた座って聴いたり、
楠木ともりさんのスタイルは「聴かせる」ことに重きを置いている。画面越しでフッと我に帰ってしまうようなことに無いよう、グッズも匂いのするキャンドルやブランケットなど没入感を味わえるような配慮をされている

MELTWISTとは彼女による造語である。同じ時間を共有することで画面越しという境界を溶かすという意味合いで名付けたそう。キャンドルの匂いの共有など、画面越しであることを感じさせないような彼女のこだわりである。

アーカイブを観ながらこれを書いてるのだが、見入ってしまい、情緒がめちゃくちゃにされるの繰り返しなので2つほどピックアップして書く。

セットリスト

1 Official髭男dism/ニットの帽子
2 さユり/葵橋
3 ORIGINAL LOVE/接吻
MC
4 ハルカトミユキ/Stand Up, Baby
5 蝶々P/心做し
MC
6 伊東歌詞太郎/記憶の箱舟
7 楠木ともり/ハミダシモノ
MC
8 眺めの空
9 ロマンロン
10 僕の見る世界、君の見る世界
MC〜自主アンコール
11 バニラ
12 アカトキ(新録ver)

声優楠木ともり、アーティスト楠木ともり

彼女がこの夏主演を務めた2作品。
「デカダンス」はヒロインでもありもう一人の主人公、ナツメ役として
「魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の子孫、転生して子孫たちの学校に通う」はメインヒロイン、ミーシャ・ネクロン役として
この2作品から2曲が選曲された。
デカダンスからは伊東歌詞太郎氏によるEDテーマ「記憶の箱舟
そして魔王学院の不適合者からはEDでもあり楠木ともりさんメジャーデビューシングルでもある「ハミダシモノ
この2作品は視聴していた作品だけあり、夏のあの日を思い出すなどあったが特にグワッと心つかまれたのは「記憶の箱舟」
本人が何度か語っているが、ナツメは楠木ともりさんの地声に近い部分で演じている。だが、ナツメとして歌うのではなく、キャラクターであることをいったんかけはなして、アーティスト楠木ともりとして歌います。と語っていた。

率直な感想を言うと(え、何故?)と思った。ナツメとして歌っても良いのでは?と思った。歌唱後、伊東歌詞太郎さんはナツメのことを考えて歌詞を作ったので歌詞を読み解くのが楽しかったと言っていて余計にそう感じたのだが。無論歌いながら泣きそうになったと語る彼女が歌いながらアニメのことを考えなかったはずは無いだろう。
ではなぜ?何度かアーカイブを観ながらこのように私は思った。
(以下は妄想である)
"デカダンスのED"としての『記憶の箱舟』は伊東歌詞太郎氏だけの聖域であると考えているのではないだろうか?
原曲へのリスペクトゆえに、アーティスト楠木ともり自身のステージであるあの場では、キャラクターを一旦かけはなすことでカバーをすることを声優楠木ともりはアーティスト楠木ともりに許諾をしたのではないだろうか?

原曲の雰囲気を残しつつも、ナツメとしてではなく、楠木ともりとして歌うことで自分の楽曲として昇華されているような印象も受けそのように感じた。
そう捉えて聴くと
「寂しい夜を越えた先に あなたに会えるから」
「今日だって明日だって傷つくこととか悲しくなることばかりでも繰り返す痛みを知った先には優しさがある」

など本当なら会場で皆と時間を共有したかった彼女の切実な叫びにも受け取れる。

一方ハミダシモノは自身の楽曲であることもあってか、大胆なアレンジを加えてきた。1番はアコースティックならではのピアノのみのスローなバラード調のアレンジから2番に入ると一転、音が増え豪華でアップテンポな曲へ変わっていった。

オリジナル曲~アンコール

どの曲も無論良かった。一時期デモ音源だけ公開されていたのみにとどまっているバニラは初聴きで、音源が欲しい気持ちもあるがライブのみの特別な楽曲であって欲しかったりもする。
そして特に話したいのはアカトキだ。『アカトキ』とは彼女のオリジナル楽曲の1つで2019年のサマーライブ、シンキロウノチカガミで初お披露目となった楽曲で「STROKE」というインディーズCDに収録されているのだが、今回のライブで新録verがダウンロード販売されることが発表された。

この曲は彼女が2020年4月からパーソナリティを務めている「楠木ともりのMusic Reverie」のラストに毎回かけられ、さながら当番組のEDテーマのようにもなっている。

私はこの楽曲が大好きで、深夜まどろみの中で聴きたくなる(上記のラジオの終わり深夜2時ごろというのもあった)イントロから始まるインディーズverも、新録verの使用する楽器の数が一気に増え、朝食でも作るときに流したら楽しいような曲調も好きだ。(曰く、もともと静かな曲だったがライブで披露を重ねるごとに「楽しい曲だな!」と気づき、華やかな新録にしたと言っていた)

アップデートしていこうよ。変わりばえしない日々なんてつまらないよ。
夜明けの空のように綺麗じゃなくたって良い。
何かが生まれる瞬間を見ていたい。

サビのこの節を聴くと何1つアップデート出来てない自分は背筋がピンとするのだが、同時になんてことを歌う20歳(もう21歳ですね)なんだ……と感じる。

綺麗じゃなくたって良いからアップデートしていこうよ。である。成長だとか進化ではなく、アップデートという言葉を使うのがとても心憎い。成長できないやつはダメだと言うこともなく、そっと毛布でもかけてくれるようなそんな気持ちになる。
楠木ともりさんのTwitterを見ているとよく分かるのだが、彼女は自分のツイートや発言を曲解されることに対して非常に敏感だ。だから歌詞もめちゃくちゃ考えられているな……と最近感じる。


彼女のオリジナル楽曲の中でアカトキの対極にあると私が勝手に考えている曲が「クローバー」という曲なのだが、この曲はヒリヒリするような直球な歌詞選びからも分かる通りあまり明るい曲とは言えない(本人は前向きにとらえたいという気持で作ったという発言をしてはいるのだが)。しかしクローバーを作り、歌った彼女だからこそアカトキを歌う彼女の声には力があると思う。

そして言うまでも無いのだが、2020年、2019年以上にラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の優木せつ菜として多くの活動をしてきた彼女。「『大好き』を世界中に溢れさせちゃうスクールアイドルになる」という野望を掲げる優木せつ菜と「ファンのみんなのことを肯定したい」と度々語る楠木ともりさん。そんな2人がオーバーラップすることは度々あるが、2020年せつ菜として多くの活動してきたからこその楠木ともりとしての言葉の力というか、より彼女のソロとしての活動にも相乗されているように、感じた。(無茶苦茶な妄言であることを承知で言わせていただくと、私は優木せつ菜にも「アカトキ」を歌って欲しいと思う……)

アップデートしていこうよ。君と笑えているこの瞬間(とき)を。
この声が枯れるまで歌い続けていたい
大切に 永遠に 愛していく

笑えているこの瞬間も更にアップデートしていこうよという楠木ともりさん。21歳の目標は「自分の行動に責任を持つ」とラジオで語っていた彼女だが、これ以上立派になったらどうなってしまうのだろう?

しかし茶目っ気の多い笑い声も忘れずにいてほしい。水分補給用のボトルを物販のマグカップに入れてたり。朝から味噌煮込みうどんって何だよ!?

ライブを重ねることで楽曲そのものがアップデートされた、そんな『アカトキ』がこれを機会により多くの人へ届き、またいつかのライブでたくさんの人たちが「アップデートしていこうよ!」と合唱できる日が来ることを願ってやまない。2nd EPも発表され、ますますアップデートされていく21歳の楠木ともりさん、今後活動も応援しております。


いやー良いものですねぇ……と感慨深く思っていたら、最後に撮影しているカメラにサインを書くというまさかの演出。顔が近すぎる。ドキドキしてしまうね。

2021年5月追記

本ライブのオリジナル楽曲映像を収録したものが2nd EP 「Forced shatdawn」に収録され Live音源もまた発売されております。ぜひに


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