見出し画像

変わってくものと変わらないもの[ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 12話感想]

11話の刺激の強すぎる引き、それを1週間ズルズル引きずりながら上原歩夢と高咲侑のことばかり考え、あーでもない、こーでもないと文章を書いては消しを繰り返していた1週間だった。11話の感想を書こうとして書けなくなるそれはさながら12話でLINEで侑に会おうと書き込むも送信が押せず、文章を削除してしまう歩夢の様。

11話で高咲侑と上原歩夢の夢が同じものでは無くなっていくことをじっくりコトコト煮詰められていった。12話では更に踏み込んだものになっていく。

当たり前だが、11話を踏まえて観る1話が違って見えるように、12話を踏まえて観る11話は全然違うものになる。だからこそ、11話が最新話のうちに感想は吐き出した方が良いとも思っていたが11話、12話はセットで1つとしての話が強く、感想を書いても書いても消してしまい、これは12話を観終わるまで結論が出せないということになった。

11話を観た後何を考えて、実際のところ12話はどうだったのか、書いていこうと思う。

上原歩夢

11話で私がずっと引っかかっていたのは「歩夢は侑にここまで強い感情をぶつけているが、歩夢にもファンがいることには気づいていないのだろうか?」ということだ。
応援してくれるあなた(≒ファン)のおかげ」とは歩夢を語るにあたって外せない言葉だが、侑ちゃん以外のあなたの存在に気づいていないのなら……それに気づく時が歩夢の成長……。と思っていた。
だが、歩夢はとっくに気づいていたのだ。私の浅い想像など軽く超えて、ずっと聡明で思慮深かった。ただそれはチラつかせこそすれど明言されていなかっただけで。

(自分ではいいところなん分からないけど、今日子ちゃんたちがああいってくれるのは嬉しい。同好会に入って数ヶ月、スクールアイドルとファンが一緒になって、どんどん世界が広がってる。侑ちゃんもすごく張り切ってて楽しそうで良かったなって、そう思ってるはずなのに……)

はじめて(のはず)の歩夢のモノローグ、同好会に入って数ヶ月、楽しいこともたくさんあってこんな自分にもファンがいてくれることが嬉しいと感じている。こと。これは後のせつ菜との会話でも本人の口から語られるが、侑ちゃん以外にも大切な存在が増えていってること。

私は11話は「みんなの夢、私の夢」に象徴されているようにみんなの夢=スクールアイドルフェスティバルを開催させる、は実現に向けて進んでる。
しかし、私(歩夢)の夢=侑と一緒に夢をみたいというところが進んでない、ああこれを踏まえて1話を見返すと歩夢は侑と一緒であることが何よりも重要であったのだなぁと思っていたがとんだ誤解だったのだ。

私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい。
だから私だけの侑ちゃんでいて?

12話まで私はこのセリフを進むことが出来てない上原歩夢の置いてかないで欲しいという一方的な呪詛のようなものだと思っていた。しかしそうではなかった。
歩夢は侑に自分だけを見て欲しいという気持ちだけでなく、歩夢の気持ちもファンが出来ることで好きなものが増えていく=侑から離れていってることに気づいていたのだ。
11話で提示されたスクールアイドル好きな人みんなが楽しめるお祭り。それに伴い虹ヶ咲スクールアイドル同好会だけでなく、色んな学内の人々が賑やかに活動をする。
焼き菓子同好会や服飾同好会、しずくの所属する演劇部、彼方ちゃんのファンのいるバスケ部。かすみんのファンなどなど。そしてそれは歩夢にも。

「ステージは夢の大橋。歩夢ちゃんとお茶会……。歩夢ちゃんと行くお台場一周の旅……。」

めちゃくちゃ密着型!!!!へえ、デートかよ。とか言う段階3歩くらい踏み越えてないか?あと自由な校風なだけあって髪型もめちゃくちゃ自由だね……。


閑話休題。
歩夢にもファンがいる。それを喜ばしく感じているのに、大好きな侑へ気持ちが離れてしまっているのではないか…という変化への恐れだったのだ。

つまり歩夢が怖かったのは歩夢自身もまた変わっていってることだったのだ。そして侑にも新しい夢が生まれる。ずっと一緒にいるという約束をしたのに(これはおそらく自戒でもあったのだろう。)それが明確なカタチとして現れたのがあのピアノだった。
11話のせつ菜の何気ない「新しい好きを見つけるって素敵ですよね」
これを歩夢はどんな気持ちで聞いていたのか……。
(この時歩夢より身長が低いせつ菜にアングルをあわせ、歩夢の頭頂部だけが映り表情が隠されているのが絶妙である)


自身の変化と侑の変化に対する未来への不安。ずっと一緒にいられなくなってしまうかもしれない。その原因が自分にもあるのなら。歩夢はがんじがらめになってしまった。そしてぐちゃぐちゃになってしまった感情がピアノを最後のトリガーとして爆発してしまったのだ。

私は11話で問題が解決しなかったことを、このアニメで歩夢と侑の違いをきちんと描く必要性を強く感じているからだと思っていた。それはある種当たっていたと言える。
11話では話の中心を侑として歩夢の不安を描くことで、侑が知らぬうちに歩夢は大きな想いを抱えこんでいたということをクライマックスで爆発させた。
そして12話の中心には歩夢を置き本人の視点から自身の不安を描写することで11話の行動の理由を解き明かしていく。歩夢の心理という情報が増え世界がブァーっと明瞭に見えていく。

いや、恐ろしいほどに上手い…。


思えば11話、焼き菓子同好会での歩夢の嬉しそうな表情など、歩夢の行動の動機が侑以外にも存在していることが確かに描写されていた。もし本当に歩夢にとって動機の全てが高咲侑であったらあんな表情をしていただろうか?

スクールアイドルがいてファンがいる

動けなくなっていた歩夢の背を押したのは、優木せつ菜だった。

変化を恐れ動くことが出来なくなっていた歩夢を後押ししたのが全ての始まりであるせつ菜であるのは何度見ても良いものがある。

思い返す。
1話のマンションの前での歩夢と侑の会話。

「会っちゃったら、自分の気持ちが止まらなくなりそうで……怖かったの。それでも動き始めたなら、止めちゃいけない。我慢しちゃいけない。」

そして12話の

「私も、我慢しようとしました。大好きという気持。でも……結局止められないんですよね。」「始まったのなら、貫くのみです!」

せつ菜が歩夢と侑に一歩踏み出す力を与えて、侑がせつ菜の心を救い、せつ菜が歩夢の背を押す。
1話でせつ菜から受け取っていたものを、11話という時間を経て、巡り巡って再び歩夢は受け取ることになる。そして歩夢は侑の元へ走り出す。

「きっかけは少し後から思い出し、全てが繋がって」

とはEDの2番の歌詞だが、動き出した気持ちを止めてはいけないということを歩夢は既に知っていたのだ。


そしてこの巡りはこの3人だけに起こったことではない。歩夢に魅せられた今日子たち歩夢のファンもそうだ。
歩夢の「可愛くて」「純粋で」「いつも頑張ってて」そんな姿に魅せられた今日子たちが侑に声をかけ、歩夢のためのステージを作る手伝いをし、今日子は「愛」の花言葉の黄色いガーベラを、そして侑は歩夢に「変わらぬ思い」の花言葉のローダンセを送る。

4人への平等なハグ。まさに3話で侑がせつ菜へ語った「スクールアイドルがいて、ファンがいる。」う、美しすぎる……!

歩夢が変化した一方で、高咲侑が何故「変わらぬ想い」なのか。
言うまでもないが、それは高咲侑には夢が無かったから
「夢を追う人を応援できたら、自分も何かが始まる。」
歩夢が、同好会の皆が彼女に夢をくれた。高咲侑がその夢を見続ける限りそこに歩夢、同好会の皆、スクールアイドルがいるのだ。
アニメ放送開始時スクスタのあなたちゃんが音楽科へあるのに対し、高咲侑が普通科であったこと、そして侑が12話で見つけた作曲したいという夢、そしてその一歩として音楽科に転科するという目標。
まさか、そこまで……。単なるファンサービスに留まらないその巧みさに私は胸が詰まってしまった。

しかしだからこそ、12話中盤、侑の夢そのものが歩夢の苦悩の一因であったことを知った侑の表情は観ていられなくなるものがある。

マンションのシーン

終盤に起こる1話のシーンと同じ構図のシーンって好きでしょ?好きです。
マンションの階段前での象徴的なシーン、ほぼ1話の展開と同じ構図ではあるのだが、特に私が印象に残ったのは表情。1話は困り眉気味で不安な気持ちの入り混じった精一杯の表情であったが

今回の12話の表情。眉もキリッとし、そこにはたしかな決意を感じられる表情となっている。

そしてこのAwakening PromiseのMV、Dream with youはどこか閉じた世界のようにも描写されていたが、歩夢が外の世界へ歩いていく描写が多く見受けられるようになった。ステージの花がより満開になっているのも象徴的だ。

awakeningは直訳すると目覚め、覚醒だが、花ひらくことを目覚めというならば、この曲はまさにアニメにおける「開花宣言」ということになるだろうか。歩夢のラストのモノローグが開花宣言の歌詞であることもそれを示唆しているのかもしれない。

しかし「歩夢のことを最初から可愛いと思ってたのは、私なんだからね!」という言葉。ここで、まさかの、侑から、本人への幼馴染マウント!?

11話の引きを観た時は(どんな気持ちでNeo sky,Neo mapを聞けば良いんだよ!!!!!)と「お兄ちゃん大好き❤可憐です」のCMが精神安定材になりかねないほどに心を掻きむしられたが、このアニメが紡いできた信頼からきっと素晴らしい着地を見せてくれると確信していた。そしてそれは期待を遥かにブチ抜いてきたものを見せてくれた。
しかし、こんな素晴らしいアニメがあと1話で終わってしまうとは……歩夢は変わっていくことの大切さをこの回で教えられたというのに、私はしばらく時間がかかりそうだ。

余談

彼方ちゃんの寝ている姿をただ見守るだけの会、私もやりたい。微妙にソーシャルディスタンスが保たれているのも面白い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?