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天皇賞・春 回顧

第165回天皇賞は、2番人気のタイトルホルダーの逃走劇となった。着差7馬身、圧勝ともいえる内容だった。ディープボンドは勝負所で進んでいけず、テーオーロイヤルも勝負所で果敢に攻めていったものの、直線ではヨレる形で既に力果てた形となった。

個人的には、最初のコーナーの入りで先頭を確保し、馬場の良い内ラチ沿いを進めていけたところで勝負あった、という感じで、最初の1,000mの入りが60秒5と計測されたときに、ここからしばらくペースを緩め息を入れていけるだろうし、向正面の入りで溜めることも十分できるので、勝ちはほぼ間違いなく、あとはどんな競馬をして締めくくるか、というところだっただろう。

阪神の馬場

8Rの蓬莱峡特別でルースが遅い流れではあったものの逃げ切り、かつ外差しが全く決まらなかったこと、10Rの時に既にダートの馬場が不良から重にワンランク回復していたことから、内はまず止まらないという形になっていたのだろう。

10Rが終わった段階で、Twitterで、以下のようにコメントした。

すなわち、内ラチ沿い以外の馬場については乾いてはおらず、さらに傷んだところを走らされるが、外枠とはいえ、スタートを五分に出ていければ、早い段階で先頭に立ち、馬場のいいところを選んで進めるタイトルホルダーに有利な馬場状況が作り出されていた。

レース展開

スタートから、横山和Jがガンガンに追い出し、出ムチを入れていたようにも見え、他に競り合う馬もなく、最初のコーナーに入るところで既に先頭に立ち、後続を引き離して飛ばしていく形となった。前半1,000mは60秒5、菊花賞と同様緩みのない流れを作っている。その後1,400mから一気にペースダウンし、息を入れつつも、残り1,000mあたりから再び加速、ロングスパートに入った。3コーナーあたりから各馬揃ってスパートし、タイトルホルダーを捕まえようとする流れにはなったものの、この時点で各馬お釣りがない状態となり、結局4コーナー出口ではテーオーロイヤルが付いていくだけで、それも逃げ馬の方が手応えが良かったという形で、タイトルホルダー以外の17頭にとっては直線に入って既に消耗しきっていたという形となった。

タイトルホルダーは、直線で内からカラ馬に来られるというアクシデントもあったが、それでも坂の手前まで11秒4で来ていて、後続を引き離す一方となった。最後はカラ馬がインから追っており、横山和Jも無理には追わず、さらに昨年の菊花賞よりも1秒6上回るペースで3,000mを走ってきて、さすがに馬もバテたのか、ラスト1Fは13秒2でゴールしているが、後続とは7馬身差、圧勝という形となった。

ディープボンドは向正面から和田Jが追い出しにかかるも、ズブいのか、いまいち反応せず、4コーナーではガンガンに追っていたものの、前とは縮まらず、さらに馬場の悪いところを通っていたこともあり、スタミナも消耗しきっていた。とはいえ、最後テーオーロイヤルは差し切り、2着は確保。この辺りは意地を見せた形だろうか。

テーオーロイヤルは菱田Jが果敢に4コーナーで捕らえにかかるが、直線はもうお釣りがなく、ヨレて最後ディープボンドに交わされての3着ではあるものの、先々に向けて収穫のある内容ではあった。4歳でもあり、この先長距離路線を盛り上げてくれる存在となろう。

タイトルホルダーの進化

今日のタイトルホルダーの勝ち方は菊花賞を彷彿とさせるものであったが、菊花賞よりもさらに強いと思わせる内容であり、ラップ推移を見ても今回は驚異的なものだったように感じる。

タイトルホルダーの天皇賞と菊花賞のラップ比較

菊花賞と今回の天皇賞の入りはほぼ同じで、1,400mから息を入れるところも似ているが、菊花賞は1,400mから1,600mまでの間で14秒3と極端な息の入れ方をしているが、今回は12秒8、その次も13秒3で進んでいて、それほどペースは緩んでいない。さらに2,200mからはスパートをかけていき、勝負所から坂まで11秒台でまとめている。3,000m通過は、稍重にもかかわらず天皇賞の方が1秒6も速く、上がりもメンバー最速にまとめるという形、今回の方がはるかに強い競馬内容だった。

菊と今回、見た目には似たようなレースをしていて、武史と和生、さすがは兄弟と思ったが、和生の方が乗り方としてはえげつなかったわけだ。それに応えたタイトルホルダーという馬は底知れない。このような芸当は一流のステイヤーでもなかなかできないものだろうし、心肺能力は化け物で、長距離の怪物爆誕と言っても過言ではない。

このような心肺能力の高さであれば、タフな欧州の馬場でも対応できるだろうし、凱旋門賞は是非トライしていただきたい。サドラーズウェルズの血も入っており、欧州の重厚な血統背景もある。また、次走は宝塚記念としているようだが、同型のパンサラッサ(こちらの方が間違いなくハナを叩きそう)と同期の、かつ弟が乗るエフフォーリアとの対決が待っている。これは非常に楽しみな一戦となろう。

さらに、姉のメロディレーンはこのメンバーで9着に入線していた。直線もジリジリとではあるが伸びていた。もう100kgくらい馬体があると最強ステイヤー牝馬となっていて、大きいところも取れていたんだろうな、と思ってしまう。すごい姉弟である。母メーヴェは受胎率が悪く、今までこの2頭しかこの世に生を受けていないが、その2頭がG1で対決しているわけである。本当に名牝といえるだろう。

馬券は、10Rを終わった段階で、タイトルホルダーの逃げ切りを強く意識して、以下。当たってよかった。


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