転職体験記 ~とあるセキュリティ人材の場合~

こんにちはウマです。今日は自分の転職体験記を書いてみようかと思います。はい、noteで最近テーマ投稿になっているやつですね。

自分は比較的うまく転職活動したなと思っているほうです。なので、いつか何が良かったのかまとめたいなと思っていました。ちょうどいいきっかけなので、書いてみようと思います。
※この文章は筆者や企業の特定を避けるため適当に嘘が入っていますが筆者の主張や感じたことは本物です。

ざっくり転職歴の概要と想定読者

文系の新卒でSIer(システム開発会社)の子会社に入社。パッケージシステムのカスタマイズ導入と、導入したシステムの運用が大半。少しだけPM(というかコンサル?)業務や製品開発に近いチームにも参加。10年弱SEをやったのち、監査法人に転職。そこで5年ほど中小企業や大企業のシステム監査(主に財務諸表監査関連)を担当。その後2回目の転職で、事業会社本社のサイバーセキュリティ業務(企画業務)に就く。という流れです。なので職種としてはベンダーSE→システム監査人→社内SEというパスです。大雑把にみるとSEからコンサルティングファーム、社内SEの(かつての?)黄金パスの変則系かと思います。上記のような経験なので、いわゆるITの人向けのお話ですが、そうではない人にも通じることはあるかなと思います。

そもそも新卒の就職と転職を考えた背景

新卒で入った会社は、正直就活を舐めていたので、システム系の会社の2社しか受かりませんでした。1社目の採用をもらったのも大学4年の5月で、遅かったし、それでもう就活終えようと思っていました。だけど選択肢は欲しくて内定2社までは頑張りました。思えば、この行動は結構正しくて、1社だけだったら、もっと早い段階で気持ちの面で腐っていたような気がします。2社でも「選んで行った」という感覚は、後々何度か挫けそうなときでも支えてくれました。おかげで1社目でそれなりの武器(SEとしての基礎力+応用力、海外経験など)を得ることができました。

1回目の転職のときは、単純に給料が大きな理由でした。新卒からほとんど給料が伸びず、また世の中で終身雇用崩壊の兆しが見えてきたので、1社に縛られるリスクを感じてました。周りの開発スキルが高かったこともあり、開発者として抜きんでるよりは自分の強み・好みを活かす会社に行きたいと思いました。人が作ったものをテストするのは好きだが、より上流に係りたい要望をどうしたら叶えられるか考えてるうちに、監査法人に出会いました。

2回目転職のときは、在籍していた組織自体に限界を感じました。小さな組織だったので、たくさんのことを学べる反面、思ったよりも上司や責任者が頼りないということが見えてしまいました。潰れることはないと思いましたが、ここで貴重な30代を長く過ごすことに疑問を感じ、求人には常にアクセスできるよう転職サイトには登録していたところ、たまたま興味深い求人(事業会社でセキュリティができるところ)があったので、転職を決意しました。ちょうどサイバーセキュリティが騒がれだした頃で、内部統制の中でセキュリティをやっていた私のスキルにも親和性がありました。

転職で起こったこと

1回目の転職(20代後半)

まず最初は、1社目の転職活動時の印象ですが、海外経験は評価されやすいポイントだと感じました。実は数年前にも転職を考えたことがあり点sん北エージェントと会話しましたが、下手なりに英語での業務実績があるとないとでは、印象が違うようでした。当時はWeb会議のトランスクリプトもなかったので、完全に耳が頼りの電話会議と現地での対応でした。そのため英語が得意でない人たちは辛かったと思いますし、その分に英語で会議が進められる人はそれだけで価値があったように思います。今は英語の会議のハードルが下がってきているので、逆により高度なファシリテーション力や交渉力が問われているかもしれません。

次は転職後の話ですが、自分の業務スキルや仕事の姿勢が転職先では高く評価されたことです。私の職種のシステム監査人は、法人内でも新卒組と転職組がいました。まだシステム監査の重要性が高まりだした頃だったので、人材のレベルもバラつきがあり、人も少なかったです。前職SIerでゴリゴリと開発し、品質の高いものづくりやプロジェクト管理が当たり前の世界にいた自分は、新しい職場の目標レベル、スケジュール管理、スピード感は少し物足りないくらいでした。また自分の認識通り、システムや仕組みの誤りを見つけることは得意だった(というか好きだった)ので、監査品質を高めることに貢献できました。クライアントや同僚にレベルが高く、よく働くと認められるたことは嬉しかったです。

第2に監査の中で、被監査対象のエグゼクティブたちと話す経験は、多くの学びがありました。2回目の転職活動の面接でも、繰り返し話した記憶があります。もちろん監査人としての肩書があってこそ会話してくれるわけですが、基本的に監査人は煙たい存在と思われがちなので、本気で共に会社を良くしてくれる相手だと思ってもらう必要があります。テクニック的なことで言えば「事実ベースで話す」、「何が問題(会社にとって必要)なのかを手短に明確に表現する」、「表面的な検出ではなく、背景を伝える」などがありますが、これはあくまでまともな会話をするための前提のスキルと考えます。本当に必要なのは、意識や情熱の面で、単なる不備検出作業ではなく、会社を良くする活動に監査人も本気であることを伝える必要があります。これは単に技術面でカバーするよりも、普段からのコミュニケーションで姿勢を見せていくことが重要だと考えます。相手はとても忙しい方たちです。年間の予定に配慮するとか、会計だけではなく相手のビジネスを良く学ぶとか、隙間を見つけて中長期的な目線、将来を交えた話をするとか、そいうった気遣いや視野の広さ・視座の高さが監査人の印象を変えることがあります。技術だけでなくソフトスキルの両輪を回して信頼を積み上げることが、難しい状況に直面した時でも乗り越えることができると考えます。

2社目で起きた最後のポイントですが、後輩の育成に関与できたことが経験になりました。やはり同じIT業界からの数名の転職者を戦力に育て上げることができたのは、嬉しかったし、自信にもなりました。以前から気づいてましたが、個人的に後輩を育てるのは楽しいし、おそらくnoteでこの記事を書こうと思ったのも私よりも若い人に要らぬ苦労はしてほしくないと思っているからです。今でも時々連絡を取れる間柄に慣れているのは、いい先輩ができたからかもと少し(と言わず、かなり)うれしく思います。

2回目の転職(30代中盤)

2回目の転職は余裕がありました。理由は二つで、転職を急いでなかったことと、2社目の経験が好評だということを面接を通して感じたからです。そのため面接の対応なども強気でした。いくつか内定をもらいましたが、条件が今一つ良くなかったので、お断りさせてもらった記憶があります。
3社目に入社後も事業会社のIT部なので、ベンダー経験者だと技術面は問題なく、会社の理解や上席への根回しなども監査法人のときに培っているので、あまり苦労はありませんでした。とはいえ本社の企画系業務なので、さすがに0から1を起こすのは難しいと感じます。これまでは開発・運用にしても監査にしても、プロジェクトとしてスタートしているものが業務の対象です。スタートすらしていないことを興すのは、別の大変さがあります。とはいえ、きっかけはやはり事実ベースの課題認識と、周囲を巻き込む力、物事をやり遂げる実行力がポイントになろうかと思いますので、自分に不足しているものを補い成長しながら会社に貢献していきたいと考えています。

もう少し深堀

少し視点を変えて、働く人たちに共有しておきたいことをまとめてみました。これまでの文章とのつながりがあったりなかったりしますので、文章校正的には若干読みづらいかもしれませんがご容赦くさい。

自分に合った環境は選べる。

今の20代の方はもうこの感覚はわからないかもしれませんが、アラフォーくらいの人たちはまだ終身雇用を忘れきれない人がいます。私もできれば転職回数は少なめに、同じ会社で雇用しづけてほしいと思う気持ちがあります。もはや呪印レベルかと思うくらい、細胞に刷り込まれている気がします。ですが、この20年近く社会人をする中で、多くの盤石と思われた企業が衰退の道を辿りました。事業変革の過程で大規模なリストラ・事業売却・アウトソースもしてきています。その一方で逞しく成長した新しい企業も数多くあります。一社目に勤めた会社が自分のニーズに合っていればいいのですが、長い人生会社に一番求めるものが変化することは何年かに一度は発生します。こういうnoteを見たりする真面目な人ほど、ダラダラ過ごしていないと思いますので、チャレンジと達成を繰り返し心境の変化があると思います。その時にそれを満たしてくれる会社に転職できるというのは、安心感が圧倒的に違います。それは自分自身に対する自信かもしれないし、その業界、職種、果ては日本経済・世界経済に対する期待かもしれません。別に安心感を形成する理由が1つでなくていいと思います。日本(あるいは世界)のある業界・職種なら、自分の腕でも雇用はされるだろうということに気づけたことは大きな心の支えになりました。

前職の強みを活かし、さらなる強みを獲得する。

私の肌感では、だいたい3割から5割はすでに持っているスキルを使えるところに行くと良いと思います。全く使えないと当然新卒同様のレベルですし、10割使えるところは、現職とあまり変わらない職場ということで、自分のスキルの価値が相対的に低く見られる可能性があります。これは次の「給料はスキルよりも場所やロールで決まる」と重複しますが、私のように最強の鉾を持たない普通の人間(それはほとんどの人がそうだと思いますが)にとって、自分の主たるスキルが業務の中心となる職場に行くことで逆に自分の武器の価値を下げてしまいます。よほどそのスキルを極めたいとか、最強の鉾だと思ってるので試したいならまだしも、そういうわけではない限り自分の武器と同じ武器を持つ人間がウヨウヨいるところに飛び込む必要はないです。逆に知らないことが5-7割ある世界で新しいことを基本から学び、その分野でも強みや好きなことを見出してください。そうすれば既存スキル×新規スキルで希少価値の高い人材になれますし、それを3、4度繰り返すことでさらなる希少価値の高い人材になることができます。この点において、IT、法律、会計、人事、監査などの間接部門の知識は非常に汎用性が高く、他のスキルと掛け算しやすい性質があります。積極的に間接部門の業務(あるいはプロジェクトマネジメントなどの支援スキル)に関与することをお勧めします。また言わずもがな英語は自分の市場を数倍にするツールです。まずは自分の業務から英語化することをチャレンジしてみてください。

給料はスキルよりも場所やロールで決まる。

先にも述べた通り、業界や職種で給料にかなり開きがあります。同じスキルも、どこでどう使うかによって、重宝されるか買い叩かれるかが決まってきます。金も時間もない状態で神様のような職人が問題を解決した美談は時々聞きますが、本当はそれには対価があるべきです。そういう神様の助けが常態化している場所に行くと、買い叩かれ癖がついてしまいます。助けを求めるほうも、だんだんマヒしてそれが普通になってきますので、ありがたみもなくなってきますし、依頼が雑になってきます。悪循環です。素晴らしい能力には、相応しい職場があります。美談はかっこいいですが、冷静になって価値に支払いがされているか見るようにしましょう。逆に大したスキルでもないのに、そのスキルを全く知らない組織では高値が付くことがあります。そういったブルーオーシャンは在籍している会社と同じ会社ばかり見ていては見つかりません。一種の宝さがしになりますので、自分と関係のない求人やニュースもたくさん見ましょう。

問題はすべて解決することが正義ではない。

転職に関する深堀なのか微妙ですが、これは今の事業会社に来てからの発見でした。今もまだこれが正しいのかはわかりませんが、そうだと思える時があるのは事実です。SEだった時や、監査人だった時は、不具合や指摘事項があればそれを解決する(させる)ことが仕事でした。しかし、事業会社に来ると違うものが見えてきました。大小さまざまな問題がありますし、そもそも問題として認識しないことも多々あります。これらすべてを取り上げて改善していくほどのリソースはほとんどの会社で無いでしょう。ある程度の問題は目を瞑りながら、不格好でも回っているのならばとりあえずはそっとしておくことも必要です。これが事業会社に来て感じた最初の違和感で、たぶん他のSE上がりの人も同じこと思ってるんじゃないかなぁと思います。
 私はこの問題をある種放置しておく姿勢に、なんというか、夫婦生活や家族との生活と似たようなものを感じています。むしろお互いのやっていることを尊重し合いながら、限られたリソースで本当に必要なことを選んでやる(逆に言えばそこまで大きな問題でなければ触れない)という感じです。あるいは時間がかかっても、本人の気づき・成長・変化を期待して見守るということです。最短距離での合理的なビジネスではないかもしれません。ですが、そういうアプローチがサスティナブルであるような気がする時があるのです。そういう考え方を持てた(正しいかはまだわからないが)のは、BtoBの仕事をしていた時には気づかなかったことでした。
※たぶん戦略的なアプローチとか、リスクベースアプローチじゃないかと思う人はいるかと思いますが、そういう論理的な観点だけではなく、課題の生まれた背景や担当者の心情・成長などまで配慮した非合理的な判断という点と、放置した場合でもなぜか良くなっていたり課題が消滅したりすることがあるのだという点が違いがあると感じています。

長々と駄文にお付き合いいただいた方ありがとうございました。転職時の注意事項とか、ホワイト企業のかぎ分け方とか、本当はもっと書きたいことがいろいろあったのですが、私の文章力でまとめきれないので、この辺で終わりにしたいと思います。一人でも何か感じるものがあれば幸いです。

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