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短歌人2024年1月号 掲載作品

ねむれない夜にまかせて匙の錆こそぎ落として空は明るむ
借りている傘のある部屋も借りものでそろそろ髪も切ろうと思う
暗がりを正しくおそれる 先に逝くことをおそらく信じていない
地図上の破線が示す未成線で海へ行こうとしていた夏は
ヘアピンの錆の遺った洗面台 かつての海水浴場のにぎわい
朽ちたフェンスの向こうを走る国道の向こうの地域猫が見ている

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