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夢見

おばあちゃんの夢見は当たる。

代々呉服屋を営んでいた我が家は、
3ヶ月に1回のペースで、展示会をしていた。

展示会の前には、京都まで仕入れに行き、
その度に大きな借入を作る。

母は、京都からの帰りの列車に揺られながら

「この仕入れ分が売れなかったらどうしよう。」と、いつも展示会前のプレッシャーで、
胃が痛くなると言っていた。

田舎の小さな呉服屋を家族で経営していたが
実質、母が仕入れ、営業、販売等すべて行なっていたからだ。

展示会中のおばあちゃんはというと、
お客様の台所番とお茶の接待係。

でも、この台所番、
実はすごい特技を持っていた。

それは、お客様とそのご家族の胃袋を掴んでいたということだ。


お客様、お一人お一人の好物を把握し、
お客様のご予約が入ると、その準備を始める。

その上、お帰りの際には、
その方のご主人の好物をお土産に持たせる。


そして、展示会の日は、大きなお鍋で
おでんや煮豆、赤飯を炊き、
おばあちゃんの料理は展示会の名物だった。

そんなおばあちゃんが、
展示会の初日にもう一つ行うことがあった。


それは、夢見でその展示会期間の売り上げを初日に予言するのだ。


『今回の展示会は、◯◯万円!』と、
その日の夢に出てきた金額をお店を開ける前に発表する。


目標金額ではない。
あくまでも、おばあちゃんの夢に出てきた金額をさも自信ありげに言い放つのだ。


それを聞くたびに、母は、
『お母さんはいいわよ!夢に見た金額を言ってればいいんだから。その金額を提示されるたびに、私のプレッシャーも考えてよ。。。』と言う。


そして、展示会が終了し、売り上げを集計すると、初日におばあちゃんが提示した金額通りになるのだ。


恐るべし!おばあちゃんの夢見である。

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