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わすれじの彼方へ

どうして私にはお前さんからの返事がないの
と お佳代は言った
大丈夫 あたしは そんじょそこらの小娘とは違いますんで
いちいち悲観しませんからきちんと分けをきかせておくれやしませんかね

清吉は言った 
どうした
お佳代ワシとお前の仲じゃないか今更そんな恐い面しちまって それに 
そりゃお前が
お前が都合悪いだけだろ
もともと横恋慕して前の女からワシを引き抜いたんは お前やろに
やっとお互いを成り立たたしていたのに
今回の件を破綻させようしとんのは
恩氏の方やで
なんぞ腹でも減って機嫌悪いだけやろに
ほら ほら 

お佳代はキチンと取り合わない清吉に
一層肚駄々示唆が込み上げた
ああ この男は芯から女を舐め腐ってるんだな 確かに夜事には丹精込めて尽くし上手な
ヒトではあるが 何せ清吉は果てるのが早く
その上こちらが達しているかなと気遣いは深いものの 測り間違いをおこす有様でお佳代としては あっちの方にも愛想がつきてきはじめたのである

そんな お佳代の心変わりにもとんと気づかない清吉は 益々図にのりお佳代に擦り寄り
なぁ お佳代近ごろ遠のいて割かったのぉ
お前が焼き餅焼くのも仕方ない事やがな
ホンマ割かった

お佳代は真底愛想がつき お前さん今日は行く日でございますかいな
アタクシ今日は流れ血の日でございまする
こんな日に通うてしまいましたら
アタクシもう金輪際遣いの者にはなれやしまへん

そう言っお佳代は清吉の小さな逸品を引き抜き 被っていた手ぬぐいにさっと巻き込んで 
月の光がさす雪道を颯と友に消え去りました土佐 

#口はわざわいのもと
#策士策に溺れた

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