JASPO参考書籍の紹介

今回は外来がん治療認定薬剤師(APACC)を目指す人のためにJASPOが推奨する参考書籍についてまとめました。
私は実際に参考図書を使用し、無事に初受験で試験に合格しました。
APACC、BPACCをめざす人は是非1冊は購入してみてください。

記載順はAPACC試験対策として使用する場合のお勧め順で記載してます。
何を使用するか迷っている人は上から順に検討してください。

臨床腫瘍薬学

カバー範囲:★★★★☆
読みやすさ:★★★☆☆
持ち運びやすさ:★☆☆☆☆

APACC、BPACCを目指すなら必携の1冊です。直近4回の過去問を見ていますが、基本的にこの書籍の内容を理解していれば問題ない難易度となっていました。

【特徴】
薬剤師が知っておくべき内容のみに絞ってまとめた書籍です。最大の強みは『薬剤の相互作用や作用機序がイラスト付きでまとまってる』ことです。APACC試験は支持療法を含めて抗がん剤にかかわるすべての薬剤について用法用量・相互作用・禁忌が問われます。そんな膨大な情報を1つ1つ確認してまとめていたら時間がいくらあっても足りません。
この書籍ならそのような手間を省いてくれますし、似た分類ごとにまとめてくれているのでインプットしやすいです。

他のがん内容の書籍のように抗がん薬の特徴や各がん種のガイドライン要点はもちろん、抗がん薬総論・臨床試験の基本・有害事象に対する支持療法等がん治療にかかわる内容が網羅されています。第9回試験では原発不明癌や薬物動態と薬力学に関する問題が出題されたことからも、すべての範囲をカバーしているこの本で試験対策してみてはいかがでしょうか。

デメリットはとにかく分厚く持ち運びしにくい点です。A4サイズで1000ぺージ超なので家で勉強するにはいいですが、業務中にふと気になったことを調べるには使いづらい面があります。
また、この書籍は『薬剤師が知っておくべき知識』をまとめたものですので、診断・施術内容は記載されていません。病院薬剤師先生のような他職種と積極的に関与していく方はこのような範囲もカバーできる『新臨床腫瘍薬学』と見比べて使いやすい方を購入してください。

がん化学療法レジメンハンドブック

カバー範囲:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★★
持ち運びやすさ:★★★★★

私の知るAPACC,BPACC合格者は全員この書籍を持っていました。また、BPACC認定要件であるがん診療病院連携研修先によってはこの本を研修生に貸し出して勉強していただいていた研修先もあるようです。

【特徴】
タイトルの通り、がん化学療法にかかわるレジメンにかかわる内容を中心に記載されています。主な記載事項は『用法用量・適応・奏効率・生じやすい有害事象と重症度・服薬指導のポイント』です。
このように介入・確認すべき要点がまとめられているのでフォローアップや処方内容確認・処方解析を行うのに大変便利です。
また、APACC認定要件である介入症例記載時には用法用量を含めた標準的なチェックポイントをすべて確認できるので記載不備をぐっと減らすことが可能です。

デメリットはこの1冊ではレジメン以外の内容をフォローしづらい点です。各がん種ごとに化学療法の概要が記載されていますが、その推奨度やがん種疫学内容までは把握することができません。
今回紹介する書籍では現場に置いておきたい書籍第1位ですが、試験対策でいうと1冊のみでは対策できませんのでご注意ください。


がん診療レジデントマニュアル

カバー範囲:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★☆
持ち運びやすさ:★★★★★

私が病院研修で大変お世話になった本の1冊です。薬剤師として知っておくべき内容だけではなく、他医療職が知っておくべき内容も含めてまとめてありますので研修時にどのように他職種と連携を取った方がイメージするのに薬立ちました。

【特徴】
各がん種の症状、予後、診断・検査、レジメン内容が図表を用いて簡潔にまとめられています。実臨床で「この患者ではどんなことを気を付けるべきだっけ?」とふと気になった内容をすぐに解決してくれる内容になっています。
また、非常にコンパクトで白衣のポケットに入ります。現場で調べたいときにすぐに調べられるのはとても心強いのではないでしょうか。

あえてデメリットをあげるとすれば、薬物動態や作用機序についてのカバーは他書籍よりも弱い点です。この書籍は医療者の診療の一助となることを目的に作成されたものです。ですので、薬剤師が知っておくべき上記内容については省略されています。
ただ、『現場で知りたいことをすぐ知る』に特化した本であることは間違いありません。BPACCを目指している or 病院研修へ行く予定がある方はベットサイドで本領発揮するこの書籍の活用を是非ご検討ください。

新臨床腫瘍学

カバー範囲:★★★★★
読みやすさ:★★★☆☆
持ち運びやすさ:★☆☆☆☆

『がん専門薬物療法専門医のために』と書いてある通り、がん治療にかかわる内容のほぼすべてを網羅することができる1冊です。
薬剤師向け知識で十分なら臨床腫瘍薬学、それ以上のレベルを望むならこの書籍の購入をお勧めします。(2冊とも買いましたが、私は試験対策としては臨床腫瘍薬学をメインで使用していました。)

【特徴】
ガイドラインの内容も広くカバーしており、ポイントを細かくまとめてくれている1冊です。私が研修していた施設のがん薬物療法専門薬剤師(病院薬剤師先生向けの資格)を取得していた先生もこの本を用いて勉強していたくらいすべてが集約されている本です。施術内容や遺伝子検査も含めて内容の記載がありますのでAPACCだけでなくさらに一段階上の資格を目指したい人向けです。

デメリットは初学者には難しすぎます。『専門医のために』と書かれている通り、診断やら検査やらと普段薬剤師が触れない内容も記載されています。
ですので、今から勉強を始めようと思う人はどこからふれていいのか、何を覚えればいいのかと途方に暮れてしまいます(私が実際にそうでした)

実務で使用するのであれば心強い一冊ですが、JASPOの試験対策だけを考えるとオーバースペックです。『病院研修で施術内容も含めてすべて理解しておかないと不安』という方でなければ、まずは「臨床腫瘍薬学」を購入することをお勧めします。


抗悪性腫瘍薬コンサルトブック

カバー範囲:★☆☆☆☆
読みやすさ:★★★☆☆
持ち運びやすさ:★★★★★

正直に言います。この書籍はあまりお勧めしません。理由は発行が2017年で記載情報が古いことです。そのため、2018年以降の薬剤が記載されておらず、この本だけでは全体を把握することが不可能です。
また、この書籍に記載されていることのほとんどが添付文書+上記ほかの参考図書で補えます。その内容で5500円の投資は少しもったいないと思います。
時間とお金に余裕がある方はお守り代わりに購入を検討してもいいかな程度で考えてください。

【特徴】
この書籍は『2017年までに発売されている抗がん剤の添付文書・インタビューフォームを要約した』ものです。用法用量をはじめ、作用機序や薬物動態等が記載されています。

私はこの書籍で勉強した時は重要用語に緑マーカーを引いて赤シートで隠せるようにしてインプット用にしました。ただ、どうしても使用しにくかったので最終的にはiPadに添付文書を片っ端からインストールして気になるところにマーカーを引いていました。


終わりに

今回はJASPOのHPに記載されている参考書籍についてまとめました。
試験対策としてなら『臨床腫瘍薬学』が最強だと思っています。どれか1冊だけ購入するという方は是非『臨床腫瘍薬学』を購入してレベルアップを狙って下さい。
また、病院研修も視野に入れている方、業務中にすぐに調べものをしたいという方は『がん化学療法レジメンハンドブック』、『がん診療レジデントマニュアル』も併せて使用してください。

本日は以上です。
本記事が試験に臨む先生方、業務中使用したい本に悩んでいた先生方の一助になれば幸いです。

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