第14回MRI認定試験解説サンプル

18) マルチスライス法によるスピンエコー法(TR 500ms, TE 10ms, サンプリング時間 8ms)の撮像可能枚数の上限はどれか
1. 27 枚
2. 28 枚
3. 30 枚
4. 35 枚
5. 36 枚

答 4
解説 まず、スピンエコー法における信号収集までの過程を考えます。
90度励起パルス、180度反転パルス、その後にエコーが発生・サンプリングするのがスピンエコーです。
この過程の間に他のスライスを励起したりすることはできません。

ということは、1枚のスライスを90度パルスで励起し、エコーのサンプリングを行うまでの時間がわかれば、決まったTRの間で何度繰り返すことができるかを計算できます。

ここで、引っ掛けなのが、TEは90度励起パルスから発生エコーの中心までということです。
そのため、エコーは左右対称であるため実際にサンプリング時間にかかったのは、TEの値にサンプリング時間の半分の時間(この場合では4ms)を足す必要があります。

画像3

ということは、1枚のスライス当たりTEの10msとサンプリング時間の半分である4msを足して14ms/枚となります。
あとは、それがTR500msの中で何度繰り返されるか・・・によるので、下図より

画像5

500÷14=35.714285……..
ということは35枚までは入るということです。
36枚入れるにはTRが約0.3ms足りないですね・・・(オシイ!!)
ということで答えは4です。

19)反転回復(IR)法に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.

1. STIR 法は脂肪に対する特異性が低い.
2. STIR 法は CHESS 法より信号雑音比が向上する.
3. FLAIR 法はスライス非選択性の IR パルスを使用する.
4. White matter attenuated IR 法は脳組織の灰白質の信号を抑制できる.
5. Null point の時間は抑制したい組織の T1値に 0.693 を乗じと求めることができる


答 1, 5


1 この問題の場合、脂肪の選択性のことを指しています。
要は特異的に脂肪を抑制するかどうかといった意味です。
STIRは反転パルスからの回復時間で脂肪に似たT1値を抑制することになってしまうため、特異性は低いことになります。
よって〇

2 STIRは全ての組織に反転パルスをかけます。一方で、Chessは脂肪組織のみに飽和パルス(90度若しくはその付近)を印加します。
このことから、STIRは全体的にChessと比べ信号は低くなってしまうので、SNR(信号雑音比)としても悪くなります。
よって✖
下図はがSTIR、右がCHESSのシーケンスチャートです。
STIRが反転パルスの影響を水も受けてしまって縦磁化が少なくなっていることがわかります。


画像2


3 スライス選択/非選択と問題にあることから、2Dの話であると考えます。
FLAIRはCSFの動きの影響を加味して、設定スライス厚以上の範囲にIRパルスを印加するような工夫がされています。(ここはメーカーによる差がある部分です)
仮に非選択(脳全体)にかけてしまうと、次のスライスの最初の縦磁化の大きさが変わってしまい、目的の組織のNull pointが変わってしまうため、不可。

いずれにしても、スライスと全く同じでないにしても、選択的にIRパルスを印加するので、×とします。

4 White matter attenuated IR法!?聞いたことないぞ?
そう思ってしまっても落ち着きましょう。
あえて違う呼び名や回りくどい表現をしてるので、惑わされてはダメです。(とはいえ文献上存在します)
英語を紐解くと、白質が弱毒化されたIR、白質信号が落とされてるという意味に取れますね。
なので、この時点で灰白質(Gray matter)が抑制されたわけではないことが想像できるので、知らなくても自ずと×となります。
ちなみに、これはDouble IR法とも呼ばれているスキャン法です。

5 Null pointとは全ての組織が縦磁化回復する69.3%の部分で0(null)となると言われております。
教科書ではTI=ln2(T1)として書いていたりします。Ln2=Log2のため、0.693となります。
これは原理を考えてもよいですが、どちらかというと69%の部分は覚えておいて損はないくらい頻出だと思います。
よって〇ですね。

20)Single-shot EPI に対する multi-shot EPI の特徴に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. 撮像時間が短い.
2. 磁化率アーチファクトが増加する.
3. Readout 方向にも multishot 化できる.
4. 動きによるアーチファクトを生じやすい.
5. エヌハーフゴースト(N/2 ghost)を生じやすい.

答 3,4

ここでのmulti shot EPIはk-spaceをPhase方向、Readout方向にmultishot化したそれぞれのシーケンスに関して出題していると考えます。

1 single shotの方が撮影時間は短くできるため×
2 echo spaceやデータ収集時間がmulti shotによる分割したシーケンスの方が小さくなるため、磁化率アーチファクトが減少する。よって×
3 Readout方向にもSegment化可能。※ただし、メーカーが限定される。
4 single shotの方が一般に動きに強いため、動きのアーチファクトは出やすくなる。よって〇
5 EPIの読み取り方法は一緒のため、N/2アーチファクトは変わらない。よって×

21)Apparent diffusion coefficient(ADC)に関する正しい記述はどれか. 2 つ選べ.
1. ADC 値の単位は[s/mm2 ]である.
2. 生体組織の温度は ADC 値に影響する.
3. 運動検出傾斜磁場の印可時間や間隔は同じ b 値であれば ADC 値に影響しない.
4. ADC 値を計算するためには運動検出傾斜磁場を 3 軸方向以上に印可しなければならない.
5. 大きな MPG(b2)の信号強度を S2,小さな MPG(b1)の信号強度を S1 とすると
ln(S1/S2)/(b2-b1)で求める ことができる.

答 2,5

1 これはb値の単位です。ADCの単位は記載されていないことも多いが、書く場合はb値の逆数となることから、mm2/secとなる。
よって×

2 拡散係数は、生体組織の温度に比例します。温度が高いと拡散しやすいということですね。
そのため、その拡散強調画像からADCが作成されるため、実際のADC値にも影響を及ぼしてしまいます。
よって〇

※参考文献 拡散MRI 拡散Ⅱ ストークス-アインシュタインの式
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html
#熱伝導方程式 #ストークス-アインシュタインの式

3 まず、運動検出傾斜磁場というキーワードが慣れ親しみないと思いますが、MPG(Motion Probing Gradient)を日本語直訳しただけです。
こういったわざと日本語にしたり、他の言い回しにした上で理解度を求める傾向は多くの問題で見受けられますので、落ち着いて対処していきましょう。
b値の定義式はγ2G2δ2(Δ-δ/3)と定義されています。
γ=磁気回転比
G=傾斜磁場強度
δ=MPG印加時間
Δ=MPG間隔
よって、δやΔだけ同一であっても、b値は異なってしまいます。そのためADCにも当然影響してしまう。
よって×
※b値の定義式の参考文献 拡散MRI (拡散強調画像の特徴より(6-1-6))
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html

4 MPGの軸が1つであったとしても各b値の画像は出てきます。
b値の画像さえ複数あればADC計算は成り立つ。
よって×

5 これは正解なのですが、教科書などで算出過程をしっかり学んだ方が納得すると思います。
ADCの出し方は装置・条件によって計算過程は違うので、実際に装置を使う場合は把握する必要があります。
例:b値2点の場合1次直線だが、3点以上になると逐次近似直線になるなど・・・

※参考文献 拡散MRI (拡散強調画像の信号強度 (6-3-5)参照)
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623416.html
図解すると下図のようになります。

よって〇

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