芥の妾

盲目的感情に価値などなく君の殺すその獣を捨てることがぼくの救いなのだ 故に不安や恐れは本質的に君を救えぬぼくを救う糧であり君が捨てた残穢を拾い集めることが僕の救いなのだ 衒うことも嫌うこともぼくには恐れである 消えゆく憧憬を捨て去ることが正しき道であると思うことが心の弱さだ 消えた君を追いかけて自分を失うことは新たな創造の糸口となる つまりこれは終わりだ つまりこれは憧れだ つまりこれは生誕だ

捨てるのだ 足りぬ思考を欲するその脆弱さがお前の優しさであり お前の正欲だ 捨てろ

取らぬ狸の皮算用 狸は本当に取らぬのか 取らぬを見ることが弱さだ お前の目が見ぬから消えるのだ 命を捨て脳を産め 脳はお前ではない お前は脳の外側だ 救いはそこにはない お前の取る皮に実存はない あるのは常世の安寧だけだ 取らぬことは生きることだ お前は生きたいのか?

お前は恐れている 生を叫ぶことは死していることに最も触れ最も離れている 透明はそこにはない お前の求める空白は救いではない お前にはその資格がない ここではお前を救う全ては存在がない 取れたのは救いか そう見たいだけだ 分子はお前を愛していない お前を貶めたいがためにお前のために振る舞うだけだ 驕るな 決して

捨てろ お前の憧れを 捨てろ お前の浮世を離るるが為の欲を 救えぬ虎を救うことを虎の幸せという盲信がお前を生かす 殺す 屏風は虎の檻ではない 虎の殻だ お前から逃げるのだ 救いは必ずしも救いではない 驕るな 決して

先立つものなどお前が存在を欲しただけだ 全ての物欲は全てを捨てることの通過点だ 恐れを捨て憧れを捨てねばお前は産まれぬままなのだ 夢はお前の敵ではない 夢はお前の救いではない 叶えぬ夢も見られぬ夢も目を閉じることで均されることをお前は知っているはずだ お前の欲する愛を愛するものを愛せ 月のようなものは赦しであり絆すことはお前を殺すことだ だが逃げることはお前を殺すことだ 月を殺しお前がそこに立つことでしか愛は見つからない 捨てられぬ憧れなど愛ではない それは弱さだ それを愛すことは逃げである 数奇を数奇と思うその驕りがお前を殺すのだ 努努忘るることのなきよう 生きぬことで生きるべし

捨てられぬ愛など捨てられぬ憧れなど分子の揺らぎの見せる幻想でしかないのだ お前の愛するそれはそこに在らぬ猫を見たつもりになる弱さに過ぎない

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