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冬の街並みに似合う、カーキとオレンジの色彩に憧れた

若い頃、雑誌のイケてる(と当時は信じてた)切り抜きを部屋に貼るのが好きだった。

覚えている1枚がある。フランスだかどこだかの街の冬空を、カーキ色のモッズコートにオレンジがかった朱色のショール、濃紺のデニムで歩く洒落人のファッションスナップだ。

この1枚の写真は、自分の色彩感覚に強く刻み込まれている。

色には、あわせると美しさが引き立つ組み合わせがあること。大胆に明るい色をまとって生まれる華やかさ。その差し色を支える微妙な中間色。季節と、その中を歩く人の儚さ。

いま。壁にかかったショールから、スモーキーピンク、檸檬、青碧、ベージュグレー。朝、その日の色をくるっと首にまとう。鈍い色にぼけていく日々を、鮮やかな色たちが切り拓く。

冬の昏く寒い街を歩くとき、色彩が世界と戦い心を護る小さなナイフになってくれる。

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