見出し画像

「100の基本」 松浦弥太郎

「Everybody is a good story writer」

永井さん(美術作家 永井宏・故人)の活動の背骨だった。誰でもアーティストになれる。その言葉に励まされてほんとに多くの人が自分の感性と真正面から向き合うことができた。アートは芸大、美大をでた人だけのものではなくて、どんな人でも自分たちの中からアートは生まれてくるのだ。

「ネオ フォークロア」と表現した。永井さんが作った言葉だ。

僕も、またそれに共感して集まった一人だ。永井さんにそそのかされて、ポエトリーリーディングという当時流行っていた詩の朗読イベントに参加し、全国を渡り歩いた。そして生まれたのが

「Assemble le suffle 〜風を集めて」

という雑誌だ。とりあえず僕が編集長になった。雑誌とポエトリーリーディングのイベントを組み合わせて、普通の人が作り上げる新しい文化があるはずだと思っていた。

そして、その活動の中で出会ったのが松浦弥太郎さんだった。当時、中目黒に古本屋をアップデートしたCOW BOOKSという店を開いて注目を集めていた。

永井さんに「松浦君のところでやったら?」とまたいつもの調子で言われ、とにかくまずは仲間とCOWBOOKSに行ってみることにした。

どこでワークショップ開催をするのかというが大問題な僕たちにとって、毎週同じ時間に場所を提供してくれる弥太郎さんはとてもありがたい存在だった。そしてある日、自分が連載している「装苑」のコーナーで「Assemble le suffle 〜風を集めて」を紹介してくれた。多くの人に読んでもらえる雑誌になると明らかにみんなのやる気が変わった。

初めて弥太郎さんにあった日のこと、今でも鮮明に覚えている。お店の中にいても、お客さんと見分けのつかない(普通の)風が彼の方から吹いてきていた。

Tシャツに短いパンツスタイルで、まるでテニス部のキャプテン的な軽やかな感じで、「好きなように使ってくださいね」とはっきりは覚えていないが、そんな感じでさらっと言ったかと思うと、本の整理か何か、再び自分の仕事に戻って言った。

3年前、たまたま、古本屋で見つけて買ったのがこの

「100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート」、暮らしの手帖の編集長を経てクックパッドなど活動を広げ、今はもう遠い存在になってしまったが、スタート地点は彼も僕らも同じはずだった。

そこから今の弥太郎さんになるまでの、その一歩一歩がここに記された言葉の一つ一つから伝わってきた。

永井さんと弥太郎さん、いくら考えてもどこでどう結びついたのかなかなか想像できないほど僕の中では、違う存在なのだが、僕が理解できない何かを二人は持っているのだろう。

不思議は不思議なまま 置いておくことも時には大切なんだろうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?