少し前の夜の話

どうしてもビタミン炭酸MATCHが飲みたくなり、雨の中傘も刺さずに買いに行った。

服装は黒の撥水性のアノラックとドンキホーテで買ったジャージ。
雨を防ぐために目深にフードを被る。
見た目はほぼ通り魔である。

大昔に見た名探偵コナンのある話で、コナンには珍しく最初に犯人が誰かわかる回があった。
ある男の恨みを買ったプロ野球解説者が雨の中通り魔的にその男から刺され倒れるシーンから始まるのだが、その時の男も黒フードを目深く被っていた。
あの格好はもしかしたら通り魔のデフォルト装備なんだろうか。

３台ほど辿ってみたがMATCHがどうしても見つからず八木山方面へ練り歩く。
無職期間中もこんな風にどこという訳でもなく自宅近辺を練り歩いていた。
時間ばかりはべらぼうに持て余していたので適当な目的地だけ決めて1,2時間程度ダラダラと歩くのが習慣になっていた。


あまりに時間があったのと、あまりに日常に変化が訪れないので、何かが起これという気分で宮城県有数の心霊スポットである「八木山橋」へ歩きで行ってみたこともある。

深夜の橋は常夜灯に照らされ何時にも増して不気味であり、２ｍ程もある橋の欄干は先端が「かえし」のような形状になっている。
この場所は下が川になっている非常に高い位置にあり、所謂飛び降りの名所であったのでそれを受けた改修工事により今のような物々しい対策が施工されたという。
県の努力を横目に橋を通って渡る。ふと横を見ると歩行者道路と自動車道路の間には境目となる白線が引かれるだけでガードレールなどは一切置かれていなかった。
そっちをまず対策せぇ。

結局MATCHは見つからなかった。
これが去年の８～９月ならMATCHを求めて自販機行脚を決め込んでいただろうが、既に新たな職場を見つけた自分にとって時間は有り余るものではなかった。
翌日の朝、会社近くの「with DRINK」と書かれた全品100円の自販機でMATCHを買ってから出勤しようとしたらMATCHがラインナップから消えていた。

仕事は手に入れても、清涼飲料水一つ中々手にはできないらしい。
そのうち、十分すぎるくらいの時間が確保出来たら100円片手にMATCH発見道中三十六次の旅にしけこむことにする。