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【ウルトラマントリガー総評】ティガという伝説の作品に果敢に挑んだ作品でした。

非常に難しい挑戦だったなと感じました。
ウルトラマンティガと言われると、どうしても期待度は高くなってしまうのは最初からわかっていたこと。
3,000万年前や、闇の3巨人など面白い設定がふんだんにあるティガから要所、要所でポイントを抽出し、再構築するのすごい難しかったのではないでしょうか。
そんな非常に難易度の高い再構築に果敢に挑んだ作品だったのかなと思います。

玩具展開非常によかったですね!!


ウルトラマントリガーは玩具の売上が非常によかったみたいですね。
BANDAIから発表されているデータでも、2021年のトリガーの玩具売上が非常に好調だったようで、メインのターゲットの児童にも非常に受け入れられたのではないでしょうか。

個人的に印象深かったのが登場怪獣のソフビ展開です。
おそらくトリガーに登場する怪獣は全て商品化されたのではないでしょうか?
このソフビの力の入れようは、1996年のウルトラマンティガの力の入れように非常に似ております。
朝テレビで活躍した怪獣が、すぐに玩具売り場の店頭に並ぶのですから商品のCMを30分かけて玩具を買ってもらうようなものですもんね。
ソフビ怪獣の展開の量が非常に印象深かったです。

また、ソフビ展開だけでなくナースデッセイ号も面白い商品でしたね。
別売りでカメラ機能を持つパーツも売られており、ソフビ人形を用いた映像制作なども子供に経験させてあげられる玩具はとても良かったのではないでしょうか?

イベントにおいても、コロナ禍にもかかわらず例年と変わらないほどの盛り上がりを見せておりメインのターゲットとなる児童にはそれなりに受け入れてもらえた作品になったのかなと考えております。

ティガのリブートでもオマージュでもない?それ本当?

トリガーはティガとは別作品
ティガの要素を取り入れて、ニュージェネレーションの作品としたのがトリガー。
ウルトラマンティガの25周年の作品として、本作の案は非常に納得のいく着地点でした。

しかしトリガー内で中途半端にティガの設定、描写を取り入れておりトリガーの世界観をぐちゃぐちゃにしている印象があります。

中途半端に取り入れられたティガの設定としては、トリガーが火星から物語が始まるところや、ケンゴの植物学者設定です。
トリガーの世界で火星から物語が始まる必然性はどこにあったのでしょうか?
例えば、地球では怪獣災害が頻出しており、新しい安住の地を求めて火星での開発が盛んに行われているなどの独自の設定があれば火星からトリガーの物語が始まるのも納得です。
しかし、そのようなことが全くなく中盤でトリガーが力を使い果たしたまたま落下したのが火星だっただけの話。火星から物語を始めたのは何故でしょうか。

それとケンゴの植物学者の設定はトリガーのエピソード内で活かしきれていなかったですね。唯一と言ってもいい描写がアキトに対して花を渡しながら口説くシーンだったのですが、本当にそれだけ。
それ以降、植物に関わるような話は一切ありませんでした。
ケンゴが大事に火星から持ってきたルルイエもエピソードに本格的に絡むことはなく、原点おティガでダイゴが植物学者だけだったという理由で、植物学者という設定が与えられたのだと思います。

え、その設定必要でした?


また、至る所に見えるウルトラマンティガをオマージュするような描写がありました。
特に最終盤は本当に乱立していた。
終盤のナースデッセイ号での集合写真、最終決戦の海での戦いや、笑顔の子供たちから光を受け取り復活するトリガー。
いや、分かりますよ。はい。ウルトラマンティガ全話見ているので。
え。でもその描写の必然性なくない?
なんかティガに寄せた描写をしたいがために、ストーリーが進んでしまっていた気がしました。

あとタイトルも頑張ってティガに寄せている。
暗黒の支配者→闇の支配者
光を注ぐものたちへ→笑顔を信じるものたちへ Pull The Trigger
もった高く!TAKE ME HIGHER → 笑顔を信じるものたちへ Pull The Trigger

いや、まぁトリガーに求めていたのはそういう部分があったのかもしれないけけれども、なんか25周年としてはコレジャナイ感が強くて・・・

トリガーはティガのオマージュではない。
ティガはティガトリガーはトリガー。
割り切って見ていたのに、中途半端にティガをオマージュするようなことをしているから、結局何がしたかったのだろう。と。
安易にティガと同じような描写を入れれば良いと考えたのでしょうか。
公式のインタビューでもトリガーはティガのリブートでもオマージュでもないと明言されていたのに非常に残念でした。


「スマイル、スマイル」ひどすぎる。描くべき事が多すぎた?設定の無駄が多すぎた。

ウルトラマントリガー本編でケンゴを象徴するようなセリフである「スマイル、スマイル」。
しかし、一番重要だったケンゴが”笑顔にこだわる理由”が明確に描写されませんでした。
あんなに全編を通して笑顔を押し売っていたにも関わらず、その背景が描写されないなんてあります???
トリガーがティガとは違う、ティガのオマージュではないということを言っておきながら、トリガーの一番重要なケンゴが笑顔にこだわる理由を描写しなかったのは何故なのでしょうか。
本来であれば、1話目や2話目などケンゴがどういう人物なのかを視聴者に説明するために描かれるべき”笑顔にこだわる”という理由であったにも関わらず、雑にトリガー全体を通して「スマイル、スマイル」というセリフだけで終わってしまいました。
しかもあろうことかその「スマイル、スマイル」が登場人物に次々感染してしまい、最終回では信念のない「スマイル」というセリフが登場人物全員から発せられ続けるという恐怖。

ケンゴ自体は周りを笑顔にするような特性を持っていないのもマイナスポイントです。いくら本人の笑顔が素敵だからと言って、セリフだけで周りを笑顔にするというのを半年も続けるのは無理があった。どれだけ笑顔を押し打った。
人々を笑顔にするために大道芸を身につけるとか、お笑い芸人を目指しているとか某ライダーの笑顔設定の主人公のような設定が付与されていれば良かったのに、そういった設定もなし。


コロナ禍だから、見ている人が笑顔になるような作品にしたいということもあり、「笑顔」というセリフをケンゴに言わせるというのは分かるのですが、「なぜ?」の部分が描かれていなかったり、主人公のスキルとして反映されていなかったり、最も重要な”笑顔”設定に最初から最後まで消化不良が拭えませんでした。
この笑顔にこだわる描写さえしっかりと描いてくれれば、ケンゴのエピソード全体を通した笑顔の押し売りも視聴者の理解を得られた上で半年見続ける事ができたと思うのに非常に残念でした。


そして無駄な設定が多すぎます。
本編エピソードでわざわざ触れる必要ない程度の裏設定レベル。
ユナ、アキトの幼なじみ設定とか、高校生設定とかあれ必要でした?
あと先ほども触れましたが、火星設定やケンゴの植物学者の設定とか必要でしたでしょうか?
中盤で植物怪獣を出すとかやれば良かったのに。作中でケンゴが植物学者だと思えたの序盤で花言葉と一緒にアキトを口説くシーンにしか使われず、全体的に無駄な設定が目立ってしまったかなと感じました。
GUTS-SELECTの地上班は、火星からきた特殊技能を持たない植物学者に高校生2人というなんとも現実離れした設定がひたすらノイズになりました。

続いて、GUTS-SELECTの面々のキャラクターの掘り下げが一切なかったのは非常に残念でした。
作中GUTS-SELECTの内部でのゴタゴタを描いたりした回はあったのですが、キャラクターがの掘り下げがされているかというとそんなこともなく、ただただ筋トレマニアの操縦士が大声で騒いだり、GUTSファルコン操縦時にキャラクターが変わったり、良いところだけかっこよくなる隊長さんなど、キャラクターとして掘り下げればいくらでも面白くなりそうだったのに、そう言ったことが一切されない。
本当に残念で仕方がありませんでした。
GUTS-SELECTのキャラクターの掘り下げがされていない、ケンゴとの関係性の進展も見えないところから、終盤におけるケンゴの正体バレや別れなども全く感情移入できませんでした。

あと、闇の3巨人に関しても例外ではありません。
ストーリー全体的に闇の3巨人を無理やり絡ませようとして、お話が雑になってしまった話がいくつもありました。
筆者個人的にウルトラマントリガーに期待していたことに、原点のティガでは劇場版の活躍にのみとどまってしまった、カミーラ、ダーラム、ヒュドラと同じような闇の巨人が半年を通して活躍してくれることでした。
その結果、原点のカミーラやダーラムとは違うキャラクターの掘り下げに成功したと感じましたが、闇の3巨人が無理に出張ってくるエピソードがあり、話がごちゃついてしまった話が複数話ありました。
出すなら、出す。出さないなら、出さない。
このメリハリをつけることができていなかったのは非常に残念でした。


主人公はケンゴではなくイグニスだったのでは?

数多くの描写が欠損している中、唯一満足に描かれていたのがイグニスでした
イグニス非常に人気のあるキャラクターがになりましたね。
かくいう筆者も、単なるジャグラー枠でしか捉えていなかったのですが、イグニスが一番背景を描かれており非常に行動原理も納得しやすいキャラクターの1人でした。

主人公には視聴者が共感できるような、苦悩や宿命、目標が必要です。
それこそ「鬼にされた妹を人間に戻す」だったり「海賊王に俺はなる」とかですね。
ケンゴにおいては特に理由が示されないままひたすら「スマイル、スマイル」、「笑顔を大事にしたい」ということだけがセリフに込められており、共感ができなかった。
その点、視聴者にも行動原理がわかるような背景がしっかりと描写され、思い宿命を背負わされていたのがイグニスでした。
イグニスは闇の3巨人の1人のヒュドラムに母星を滅ぼされ、中盤でトリガーダークの能力を得て、ヒュドラムと1 対1 で決着をつけるなど、本当に少年漫画の主人公のような役割を与えられました。
また、イグニスがなぜトレジャーハンターを続けるかの理由も最終回で描写されており「いつか故郷を復活させられるようなお宝を見つける」ためにトレジャーハンターをしているようでした。

このようにイグニスはしっかりと背景が描かれているにもかかわらず、ケンゴに至っては一番重要な笑顔にこだわる理由が全く描写されていない。
半年続く「スマイル」の押し売り本当に辛かったです。

まとめ

ウルトラマンティガをベースとした作品作りは非常に難易度が高かったかなと感じました。
実際にティガの要素を取り上げて、再構築してニュージェネレーションの作品として落とし込んだ本作でしたが、結果は評価が二分されてしまいましたね。

盛り込んだテーマとして、笑顔だったり、イグニス、ダーゴンのキャラクターなど非常に人気が高いものになりましたが、反面展開や脚本の雑さなどが至る所で指摘されており、あわない人にはとことん肌が合わない作品になってしまったのかなと思います。

かくいう筆者もトリガーを見ていて、どうしても納得できない設定が数多くありトリガーの評価は低めです。次回以降のウルトラ作品に期待です。

【2022/1/24  追記】

この記事を書いてからもSNSで色々と評価を見ていたのですが、評価は大きくふたつに分かれていますね。割と両極端です。
やはり筆者のようにストーリーの雑さや無駄設定などを指摘する人もいれば、イグニスやダーゴンなどの魅力的なキャラクター、明るい主人公の設定など本当に受け取り側の着眼点で評価が分かれるみたいですね。

メインの視聴者である児童層へのアピールは上手にいったようですし、何よりもコンテンツにとって広く一般的に受けいられる作品作りは、コンテンツが衰退しないために絶対に必要なものです。
そういった意味では、広く一般的に受けいられて、ウルトラのバトンをしっかりと次に渡してくれたウルトラマントリガーは一定の役割は果たしたのではないでしょうか。
これからもウルトラマンを応援していきたいです。


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