見出し画像

【シン・ウルトラマン考察】ウルトラオタクより愛を込めて。「禁じられた言葉」を考察してみる。

シン・ウルトラマン公開まで、2週間を切りました。
シン・ウルトラマンの事前情報公開も、ここまででしょう。
新予告で外星人メフィラスの登場が明らかになりました。
今回は、メフィラス星人登場回「禁じられた言葉」を改めて見返し、考察していこうと思います。

シン・ウルトラマンにメフィラスが登場する意味とは?

4月中旬に公開された新予告で、登場することが確定したメフィラス。
このメフィラスが登場する「禁じられた言葉」は、初代ウルトラマンの中でも屈指の名エピソードだと筆者は考えております。

メフィラス星人が登場するのは初代ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」です。全体的なあらすじは下記です。

科学特捜隊の紅一点、フジアキコ隊員の弟のサトル君がメフィラス星人により誘拐される。
メフィラス星人はサトル君に、とある条件と引き換えに「あなたに地球をあげます」と言わせようとする。
「暴力は嫌い」と発言するメフィラス星人は武力行使による地球侵略ではなく、外交交渉という手法で地球を手に入れようとする。果たして地球人の心に挑戦してきたメフィラス星人の侵略計画はどのような結末を迎えるのでしょうか。

上記のようにメフィラス星人が活躍する「禁じられた言葉」は、初代ウルトラマンの中でも非常に面白いエピソードとなっています。
「禁じられた言葉」では、怪獣が現れてそれに科学特捜隊が対処したり、宇宙人が力任せにやってくるような話ではなく、メフィラス星人は会話によって地球侵略を成しとげようとします。
地球人の少年一人に「あなたに地球をあげます」と言わせて、本当に地球をもらった気になろうとするメフィラス星人のガバガバ理論も非常に愛せるポイントなのですが笑

そんなメフィラスがシン・ウルトラマンへの登場を確定させました。
果たして、これにはどのような意図が含まれるのでしょうか。
メフィラス星人は下記で考察しますが、非常にメッセージ性の強い登場人物の一人です。今回のシン・ウルトラマンの話の骨格はこの「禁じられた言葉」にあるのではないでしょか。
シン・ウルトラマンにメフィラスが登場するということは非常に意味のあることになります。

また、メフィラスは劇中でメフィラスと同時に出演が確定したザラブを手下として扱っています。このようにザラブのような外星人を登場させるためにも、都合の良い一体だっただけなのかもしれません。

地球防衛に干渉する”第三者であるはずのウルトラマン”という異質な存在に初めて言及した宇宙人

原点におけるメフィラス星人は初代ウルトラマン全39エピソードの中でも非常に頭の良い宇宙人の一体です。
一応設定的にはIQ10000という、とんでも無い知能指数の持ち主でもあります。

そんなメフィラス星人は劇中で、ハヤタ隊員と下記のような会話を繰り広げます。

メフィラス:「ウルトラマン、何が可笑しいというのだ」

ハヤタ:「メフィラス、飛んだ見当違いだったな。地球を売り渡すような人間はいない。サトル君のような子供でも地球を良くしていこうと思うくらい地球を見捨てたりは絶対しない」

このメフィラスとハヤタ隊員の会話は、メフィラス星人(地球外の生命体)とハヤタ隊員の会話です。
しかしハヤタ隊員は物語の主人公であり、M78星雲の宇宙人である”ウルトラマン”でもあるのです。
この”ウルトラマン”というのは、地球人ではなくメフィラス星人と同じく地球外の生命体です。
上記の会話がメフィラス星人とハヤタ隊員(地球人)の会話であるならば、非常に納得がいきます。しかしハヤタ隊員は地球人でもあると同時に、地球外生命体であるウルトラマンでもあるのです。

例えると、領土問題で巡っているR国とJ国の2つの架空の国があります。
R国がJ国に対して、北の領土をくれと言っていることに対して「北の領土はJ国固有の土地であり、交渉には応じない」とJ国自身が発言するのは非常に自然なことです。だって、自国の領土なのですもの許否するのは当たり前です。
しかし、R国がJ国に対して、北の領地をくれと言ったことに対して突然第三者のU国が乱入して「北の領土はJ国固有の土地であり、交渉には応じない」という発言をJ国の意見を確認せずに発言するのは、非常に不自然なことはわかるでしょうか。
※アルファベットに特定の意図、意味はありません。ランダムで選びました。

この発言をハヤタ隊員(地球人)がしたのか、ウルトラマン(宇宙人)がしたのかは非常に重要な問題になります。
メフィラス星人もそこに疑問を持ったのか、次の発言でハヤタ隊員(ウルトラマン)に問うています。

メフィラス:「ぐぬぬ。。黙れ、ウルトラマン。貴様は宇宙人なのか、人間なのか?」

はい、きました。このセリフ。
今回のシン・ウルトラマンの予告でも長澤まさみ演じる”浅見弘子”が発している「あなたは外星人なの?それとも人間なの?」というセリフの元ネタになります。
筆者は長澤まさみさんからこの言葉が出てきた時、鳥肌がたち、耳を疑いました。(長澤まさみさんにこのセリフを言わせるのか・・・!!!)

-閑話休題-

メフィラスの発言からも分かるとおり、ウルトラマンという”存在”は、地球防衛という名目でみると、非常に異質で気持ち悪い存在なのですよね。ハヤタ隊員(ウルトラマン)は宇宙人なのか、地球人なのか。それによって、地球防衛に対する立ち位置が変わってきます。
ハヤタ隊員が地球人として上記のような「地球を売り渡すような人間はいない。」という発言をしているのであれば、自然なことでしょう。
しかし、もしハヤタ隊員が”ウルトラマン”として発言しているのであれば、非常にチグハグな発言になるのは分かるでしょうか?
ウルトラマンは地球人でもないにも関わらず「地球を売り渡すような人間はいない」と明言するのです。

本来であれば今回のようなお話は侵略する側のメフィラスと、侵略される側の地球人の攻防のお話になるはずです。しかし初代ウルトラマンはメフィラスでもなく、地球生まれでもない、M78星雲の宇宙人である”ウルトラマン”という第三者の存在が、地球防衛に介入しているのです。
この不自然さ、お分かりでしょうか?

この地球防衛の不自然さを初代ウルトラマンのエピソードの中で初めて言及したのがメフィラスになるのです。

そんな不自然さを醸し出してにも関わらず、この会話はメフィラスの問いに対して、下記のセリフで幕を閉じます。

ハヤタ:「両方さ。貴様のような宇宙の掟を破るやつと戦うために生まれてきたのだ」

なんか、はぐらかされたような印象を持たせる上記のセリフ。
劇中では上記の台詞を最後に、メフィラスとウルトラマンの戦闘へと突入して行きます。

今の時代にメフィラスへ「地球をあなたにあげましょう」と言う地球人はいるのか?

初代ウルトラマンにおいて、メフィラス星人とサトル君の会話は以下のように繰り広げられます。

メフィラス:「サトル君。私は自分の星からこの地球を見ているうちに、地球とサトル君がどうしても欲しくなったんだよ。でも、私は暴力は嫌いでね。私の星でも紳士というのは礼儀正しいものだ。力ずくで地球を奪うのは私のルールに反するんだ。そこで、地球人であるサトル君に了解をもらいたいと思うんだ。サトル君は素晴らしい地球人だ。どうだね、この私にたった一言、『地球をあなたにあげましょう』と言ってくれないかね。」

サトル君:「嫌だ! 絶対嫌だ!!」

メフィラス:「そうだろうねぇ。誰だって故郷は捨てたくないもんだ。(省略)。宇宙は無限に広くしかも素晴らしい。地球のように戦争もなく、交通事故もなく、何百年何千年と生きていける天国のような星がいくつもある。どうだねサトル君、地球なんかサラリと捨てて、そういう星の人間になりたくはないかね。」

サトル君:「嫌だ!」

メフィラス:「聞き分けのない子だ。なぜ『地球をあなたにあげます』と言えないんだ?私は君が好きだ。私の星で永遠の命を与えようといっているんだぞ?」

サトル君:「僕だけがどんなに長生きしたって、どんなに豊かな暮らしができたって、ちっとも嬉しくなんかないや! 僕は地球の人間なんだぞ!」

サトル君は、最後の最後までメフィラスからの提案を拒否しました。
まぁ、そりゃ目の前によくわからない黒い人が「地球をあなたにあげましょう」と言わせようとしていて、安易に許可をする人もいないと思いますがw
IQ10000とは・・・

注目するべきところはそこではなく、メフィラス星人は下記の発言をしています。

誰だって故郷は捨てたくないもんだ。

これは故郷を持つ人誰もが思っていることですよね。
実際に戦争や自然災害によって故郷を離れることになったと言うニュースを、最近非常に良く聞きます。

一説によると、当時(1966年)アメリカの領地となっていた沖縄出身の脚本家・金城哲夫氏の思いが脚本に現れていると言う噂もあります(公式ではそのような文献は存在せず、当時を知る人からも金城哲夫氏が脚本に故郷への想いを込めたという発言も存在しない)。


地球のように戦争もなく、交通事故もなく、何百年何千年と生きていける天国のような星

また、メフィラスはサトル君との会話の中で「地球のように戦争もなく、交通事故もなく、何百年何千年と生きていける天国のような星」と言う発言をしています。
まさに戦争をしないというのは、世界平和が実現した世界であり、1966年の高度経済成長を迎えていた1966年は”交通戦争”とも言われていたほど、交通事故が多発していた年代です。(交通事故による死亡者数が日清戦争の死亡者数を超えていた時期)。交通戦争は1970年の死亡者数をピークに減少するのですが、それでも当時の日本からすると交通事故は解決するべき社会問題であり、それは今でも変わりません。

そんな数多くの問題を抱える地球ではなく、新しい星を提案してくるあたりメフィラス星人は、当時(1966年)の地球を非常によく研究していると推測されます。

しかし、このメフィラス星人の夢のような提案は、サトル君により一蹴されます。
サトル君の発言は非常に子供らしい良い回答ですね。
「嫌だ! 絶対嫌だ!!」


聞き捨てならない、メフィラスの捨て台詞

サトル君には断固拒否され、初代ウルトラマンとも戦闘に発展したメフィラスは途中で「よそう。宇宙人同士が戦ってもしようがない」と発言し、先頭の中止(引き分け)を提案し、初代ウルトラマンは応じます。初代ウルトラマンはひたすらにメフィラスを凝視し動きません。
その様子を見ていた科学特捜隊からは「ウルトラマンは、なぜ戦わなかったんだろう」とも発言されます。

地球から手を引いたメフィラスは捨て台詞で下記のような発言をします。

メフィラス:「私が欲しいのは地球の心だった。だが、私は負けた。子供にさえ負けてしまった。しかし、私は諦めたわけじゃない。いつか私に地球を
売り渡す人間が必ずいるはずだ。必ず来るぞ。」

要はメフィラス星人は、売国奴のお話だった。筆者は上記の最後のセリフからそう受け取りました。
初代ウルトラマンでは架空の存在である”宇宙人”や、守る対象も”地球”と言う規模になります。その規模は想像するには大きすぎてたまに追いつけなくなることもしばしばあります。しかし、筆者は稀に宇宙を日本、地球人を日本人と変換して初代ウルトラマンを見ることがあるのですが、今回のメフィラスの発言を置き換えてみると下記のようになります。

「いつか私に日本を売り渡す日本人が必ずいるはずだ。必ず来るぞ。」

1966年代の日本は他国に日本を売りわたすような日本人は一人もいなかった。サトル君のように「嫌だ!」と返したことでしょう。しかし、2022年の今はどうでしょう?
もしかしたら、メフィラスはより地球人のことを研究して、思わず頷きたくなるような条件を提示してくるかもしれません。
それは名誉なのか、金銭なのか。初代ウルトラマンは、2022年で初回放映から56年が経ちます。2022年の今改めて見返して、上記のセリフから「今の日本はどうなのだろう?」と、考えさせられるセリフだと筆者は思います。だって、メフィラス星人は「必ず来る」と言っているわけですから。

しかし皆様ご安心ください。「禁じられた言葉」は架空の創作物のお話です。
劇中でメフィラスが狙ったのは日本ではなく地球。挑戦してきたのは日本人の心ではなく、地球人の心です。メフィラスが「売国奴についてのお話」なんていうのは筆者の妄想であります。

しかし、今でも筆者は考えます。
果たして、2022年の今メフィラスが再びやってきて我々地球人に対して「地球をあなたにあげます」と問うてきた時に「嫌だ!」と言える人はどれくらいいるのでしょうか。

メフィラスが登場するだけで妄想が広がる凄さ

結論になります。
結論として、メフィラスが登場することが確定するだけで、一気にシン・ウルトラマンに対して考察の余地が広がりました。
それだけ筆者にとって、メフィラスがシン・ウルトラマンに登場するというのは、非常に大きな情報でした。
実際にメフィラスがどのような活躍をして、シン・ウルトラマンのストーリーに影響を与えるかは、劇場で見ましょう。

メフィラスが伝えたかったのが、売国奴のお話なのかどうか、そんなことは知りません。「禁じられた言葉」を視聴したオタクである筆者が拡大解釈をして、妄想した成れの果てです。
実際にシン・ウルトラマンの中で、どのようなストーリー展開がなされるのか。筆者は今から非常に胸に期待を膨らませております。

-ウルトラオタクより愛を込めて。-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?