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映画「すずめの戸締まり」感想 登場人物がとにかく美しい作品だった。

※それなりにネタバレあります。

久々に記事書くザマス。週一で記事を書ける気力が湧いてくればいいんだけどサボり癖が心にこびりついている俺には不可能なのかもしれない。・・・2年前はなんで週一で書けてたんだろうね不思議。

さてさて。11/11から絶賛公開中のすずめの戸締まり。日本で一番ブイブイ言わせているアニメ監督(俺調べ)新海誠監督の最新作だ。
前作の天気の子はゼロ年代エロゲみたいな感じと新海誠特有の気持ち悪さが奏でるハーモニーがかなり良かった。今作もかなり期待していた。・・・すんません。少し嘘つきやした。公開してから「あっ公開してたんだ」って感じで観に行きやした。

いやもう流石は新海誠だと思った。今作もかなり面白かった。作画が物凄くキレイだったのは言わずもがな。特に良かったのは主人公がいろんな人と関わっていく場面だ。この映画はロードムービーなのだが、行く先々で主人公のすずめがお世話になる人達が本当に良い。皆それぞれの苦労がありつつ。それでもすずめを助けてくれて・・・時にはすずめが助けたり。こういうの好きなんだよね。結構いろんなキャラ出てくるけど2時間の映画でみんな魅力的に表現できるのは流石って感じ。

今時っぽくかなり導入が短い。

誰も彼もがせっかち・・・というよりも娯楽がマジで多すぎるこの令和という時代、導入部分をダラダラとやってると飽きられてしまう。異世界転生モノはすんげえ導入端折るし、今の流行歌はすんげえイントロが短いかそもそも無い。

そんな今風に合わせてすずめの戸締まりも導入が短い。世界観説明もそこそこにもう一人の主人公、草太に出会う。そして開始数分でワッと大事件がおき、「戸締まり」ってどういう意味だ?ってのもど派手な演出でけっこうすぐに明らかになる。ど派手に戸締まりしてからすずめの戸締まりってタイトルが挿入されるのもオシャレ。DOOM(2016)みたいな趣きある。

そしてたまたま出くわしたイケメン、草太は「閉じ師」であり、災いを呼び寄てしまう扉を閉じ鍵をかける為全国を旅しているという。そこに突如謎の喋るネコ、「ダイジン」が現れ、草太の姿をいきなり椅子に変えてしまう。なんてこったい・・・!

草太を人間に戻してもらうため、ダイジンを追いかけるうち、成り行き上でスマホだけ片手に船に乗るところから主人公すずめの冒険が始まる。いや旅費とか大丈夫なんかな・・・?とか考えたがすずめちゃんが船で電子マネーで買い物してる場面をサッと挿入してくれて安堵しました。そりゃ今どきそうだよな。充電スポットだってそこら中にあるし。

あとダイジンが行く先々で写真にとられ各種SNSにアップされるから追跡できるってのも俺的に結構ツボだった。いまふう!!

とにかく美しい人間模様

ひょんなことから地元の宮城を出て船でいきなり愛媛へ。それだけでもすごいが、あれよあれよと神戸へ東京へ。そして更に北へ・・・どんどん行動範囲を広げていく。今作でも大都会東京に翻弄される田舎娘が見れるぞ。かわいいね。椅子草太のアシストで次々と電車を乗り換える場面は見ものやぞ!

そして行く先々でいろんな人のお世話になるのはロードムービーのご愛嬌。王道ってやっぱ面白いよね。もちろんお世話になるだけじゃなくすずめちゃんもしっかり恩返しするし。

すずめは何で旅してるか聞かれたときには基本的にはぐらかすがみんなあまり深いところまでは突っ込まない。暖かく見送ってくれる。その距離感がまた温かい。多分普通の家出少女かなんかだと思われてるんやろな。

でも保護者は違うってのもまた良い。すずめは叔母の世話になってるが、無断で遠出してるためそりゃもうすげえLINEで詰められる。最初は超長文送ってくるくらいだったが、電子マネーの決済場所の履歴を見られて東京にまで行ってるのがバレると仕事を休んで追いかけてくる。

すずめはウザそうにしてるけどホンマにええ人やで。すずめは超常現象に巻き込まれてるから上手く理由が説明できずにいるし、それにやきもきする叔母さんもまた良い。「セカイ」系のお決まりよねこれも。
しかも偶然草太の知り合いのチャラ男、芹澤と一緒にいるところを見られたもんだからさあ大変。人目も気にせず激詰めされるし訳わからん理由でまくし立てられるチャラ男もおもろい。声が神木隆之介なのも良い。

そんな感じで人の温かみにたくさん触れられる作品が俺はすごく好きだ。深い訳を聞かずにギュッとすずめを抱きしめて見送ってくれる同い年の女の子。すずめが自分に課した「戸締まり」を果たす為やむを得ず25時過ぎまで出歩いていたのを本気で叱ってくれ、夜食を作ってくれるスナックのママ。本気で心配し宮城から東京まで追いかけてきてくれる叔母さん。荒唐無稽な話を信じてくれ車に乗せてくれる芹澤。そして何と言っても最初は罪悪感と成り行きで一緒に旅をしてたがかけがえのない間柄になった草太。そんないろんな人に支えられ、時には恩返しをしてすずめは全国各地で「戸締まり」をしていく。キャッチコピーが「いってきます」なのは本当にセンスあると思う。

人によってはかなり心をえぐられるかも

この作品も前作、前々前世に引き続き自然災害が結構重要な要素をしめる。しかも今作は「地震」が重要なキーパーソンになっている。公式も注意喚起しているが、作品中に緊急地震速報が鳴りまくる(本物とは全然音違うけど)し、何と言っても東日本大震災が物語のキーとして扱われている。人によっては受け入れがたいかもしれない。個人的にはかなり上手にストーリーに絡ませてるなあと思ったが、扱われているものが日本人にとってはかなりセンシティブだ。小さい頃に被災したキャラの回想シーンはかなりうっ・・・と俺もなった。あの演出怖いよ・・・

それと、すずめと叔母がひょんなことから言い合いになるシーンも結構エグい。心労がたたったのか化物に操られたか、叔母が少しすずめにきつく当たる。そこですずめが「それが重いって言ってるの!」と言い返してしまうのだが、叔母がポロッと「あんたを引き取ったから恋愛も12年できなかった」と口走ってしまう。更には「私の10年返してよ」とまで口にしてしまう。すずめも売り言葉に買い言葉で「引き取ってなんて頼んでない!勝手にそっちが家族になろうって言ったじゃん!」と口にしてしまう。

超常現象で負の感情が増幅されてるっぽい描写ではあるが、お互い本音の一部ではあるのだ。義理の親子という関係の正の部分も負の側面も見せてくる。その後仲直りするシーンが結構あっさりしてるのもなんか絆感じてすごくよかった。すずめと叔母が自転車を二人乗りしてるときに叔母が「さっき言っちゃったことは本音ではあるけど、、、それだけじゃないんよ、、、」と一言でお互い察し合って仲直りするのいい。ほんとに良い。

それと人間の「ギャップ」を感じる描写も引き込まれた。東京育ちのキャラが東日本大震災の被害がまだ残る風景を見下ろしながら「ここって結構綺麗だな」と言うが、それを聞いた東北出身の子が「キレイ?これが?」というところが一番強烈かな。
それと田舎を旅してるときは雨の中バス停で休んでるだけで「どうしたん?」って声をかけて助けてくれる人がいたが、東京にいる場面ではすずめが服はボロボロになって切り傷だらけ。更には裸足で電車に乗っているときに周りの人達はひそひそ話をしながらジロジロ見てくるだけで何もしてくれないところとか。

そりゃまあ俺も電車に乗っているときにそんな女の子がいたらガン無視するだろうけどさ。都会にいる如何にも訳ありって感じの人には近づきたくないし。
まあこれは良い悪いではなく、場所、人によって境遇が似通ってても全然違う事が起きるよって当たり前の事だけどさ。

そしてもちろんこの作品も例に漏れず「セカイ」系。大切な人かセカイか、どちらかを選択せねばならない場面がある。前作と大きく違うところは「選択」する場面が中盤くらいというところだ。選択の結果に落とし前を付けるというのが後半の展開になる。それとすずめは何故、普通の人には見えないある超常現象が見えてしまうのか。自分の過去と向きあっていくうちにだんだん答えがみえてくるという流れも良い。かなりわかりやすい流れだし、最後には・・・

今作も超オススメです。

冒頭でも述べたが本当に今作も面白かった。ストーリーの良さは言わずもがな、少し前作に比べれば控えめではあったが新海誠のいい意味での「気持ち悪さ」も勿論ある。
椅子にされた草太がすずめに座られたり踏み台にされたり・・・とかはまあありがちだけど、中盤から登場する草太の友人、芹澤がもう・・・たまらん。チャラチャラしてるが友人思いで重度のお人好し。空回りもするけど気遣いもするイイ男なのだ。そんな魅力たっぷりの男の声が神木隆之介ってこれもう・・・エッチすぎるよ・・・新海誠・・・お前神木隆之介好きすぎないか?

王道でまとまったストーリー。魅力的なキャラ達と主人公の触れ合い。そして「セカイ」。それを新海誠の気持ち悪さで味付けし、東日本大震災という物凄く嫌なリアリティで盛り上げてくれる。
拙い〆になったが「すずめの戸締まり」傑作なので是非映画館へ。物凄い量の上映回数の劇場の数なので見やすいとも思います。なんか来年の初夏までくらいはやってそうだし。



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